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妖精と蛇


              1


 雄大な翼が密やかに点りだした星明かりに黒々と広がっていた。

 冷えた大地から飛び上がった巨体がゆっくりと、嘘のように浮かび上がり、吹きすさぶ風が二人の女の髪を乱暴に櫛削る。

 鈴音たちは風の中を飛ぶ始めての経験に夢中で、言葉を忘れていた。

 途方もなく力強い筋肉運動と風に耐えて張りつめる翼とを身体の下に感じ、星々の間近を、手を伸ばしさえすれば掴み取ることができそうなくらい間近を飛んでいく。

 凍てつくような月が、彼女らとともに滑空していた。

 巨大な翼は一定のリズムのもとに羽ばたいて、闇路を刻々と進んでいく。

 やがて風が静まり、冷え冷えとした藍色の夜の静寂が辺りを包み込む。

 そこは静止した夜の無幻境。星をちりばめた無次元、無窮の世界。

 そしてついに鈴音たちは眼下に広がる闇よりも暗い森を認めた。

 ちょうど顔を覗かせた太陽の初めの一と欠片が森の木々に白い帽子を被せ、ゆっくりと白と碧に染抜いていく。

 鈴音たちには闇が音もなく去っていくのを肌で感じることができていた。

 「あれが・・・」

 『カプリチオ盆地』。神々が地上界を創ったおり、そこに住む生き物をも創ろうと研究していた企画室であり製造工場、ゆえに別名『神々の実験室』と、呼ばれる地。

 この森は『支衛の杜』同様線引きされたような完璧な円を形作り、闇を内に秘めた巨木が深く静かな森を現出させていた。

 そして、その森の中心に闇よりもなお暗く、夜よりもなお深い穴が穿たれている。それこそが魔龍アイオーンが住むと言う『ストイックの魔窟』だ。

 目的地を視認し、人間たちはこのまま魔窟に飛び込むものと思っていた。しかし、その意図に反して神獣ホアンホア・ロイドは森の手前の草地に木の葉のようにゆっくり静かに舞い降りた。

 太陽の光に照らされ輝く朝露が、何の変哲もない草原を銀色に染めている。

 バンボラがギクシャクと降り立ち言い尽くせぬ心境を笑いに託して、あえぎながら鈴音を抱き下ろした。

 リカートのほうは、すでに自分の足で飛び降りている。ビロードの羽根に頬を預け、その肌触りを楽しんでいた。

 だが、それは長く続くものではなかった。一瞬、ほんの一瞬風が森の中を吹き抜けてきたのだ。

 その風に鈴音ですらもおかしな臭いが混じっていることに気がついた。森の湿気や樹液、豊富な腐葉土の臭いとは明らかに異なる異質な臭い。

 たとえて言うなら、鉄を口に含んだような臭いだ。

 鈴音には最初、その臭いが何の臭いなのか判断ができなかった

 一度も嗅いだことのない臭いだったから。だが、しばらく鼻をヒクつかせている間に経験によって生じる微かな記憶と知識が頭の中で目を覚まし、彼女自身の遠い記憶が臭いのもとを彼女に教えた。

 血、血の臭い。

 それは紛れもなく幼い頃、血を汚いなどと考えもしなかった時分に自が傷口から出た血を、嘗め取ったときなどに感じていた臭いだった。

 「こりゃ、一人二人のものじゃねえな。数十、いや、数百をゆうに越える人間が・・・」 

死んでいる。

その言葉を、バンボラは危うく飲み込んだ。殺気にも似たリカートの視線で、鈴音の存在を思い出したからである。

 いかに、勇者として自覚しているとはいっても少女、それも人の死に不馴れな少女にすぎないのだ。彼女にとって、数百に上る人間の死は重すぎる。

 まして、普通の死に方でないことは臭いの強さからいっても明らかなのだ。

 「人間ではありませんよ」

 突然、彼らの後ろで銀の鈴が鳴った。

 黒鳥が口をきいたのだ。

 彼らはハッとして息をのみ、美しくも賢い鳥に向き直った。

 「人間ではありません。この奥に横たわるのは、魔窟から侵攻してきた『オルゲス』の兵たちで、他の種族の者ではありません」

 三者三様で驚きの表情を見せる人間たちの、無意識の問いかけを聴き、黒鳥は語を続けた。

 「この地上界の混乱を避けるため、そしてあなた方が動きやすいようにするため、ある一人の勇者が単身で戦いを挑み、これを制しました。その時に倒された者たちが、今なを森に放置されているのです。誰も片付けようとしないので・・・」

 感情のない、美しいだけの声が事情を説明している。想像もできないほどの時の流れを渡り、星の数ほどの悲喜交々のドラマを静観してきた黒鳥にとって、こんなことは瑣末なことに過ぎないとでもいうのだろうか。

 「勇者!! 勇者ってもしかして・・・」

 勇者という言葉にすかさず反応して、鈴音は声を上げた。何よりも先に瀬戸義人の名と顔が脳裏に浮かんだから。

 それに対し、黒鳥の答えはあまりにもそっけなさすぎた。

 「それは、あなた自身の目で確かめることです。私の役目はあなたをここまで運ぶこと、そしてすでに残された時間は少ないということを告げること、それだけなのですから」

 あくまでも静かに淡々と言葉を紡ぐ黒鳥だが、その内容は無視しえるものではない。

 ゆっくりしていられる状況でないことは判っていたが、実際に少ないと言われたのでは、否応なく焦りを覚えてしまう。

 「それって・・・」

 どういうこと? と、訊こうとしたリカートだが、その問いは黒鳥のざくろのような紅い目に射すくめられ、喉元で停止した。

 「それも、あなたがた自身で確かめなさい。・・・ただ、一つだけ言えることは全世界の生き物にとって、あなた方が最後の希望だということです。だからこそ、私もこうして協力を惜しまずにいるのですから」

 それだけ言ってしまうと、黒鳥は制止するリカートの怒声を背に飛び去ってしまった。

 あとには気が遠くなるほどの草原と、気が変になりそうな森、そして三つの人影が佇むばかりである。

 協力を惜しまずにいる。などと言う割りには愛想の無さ過ぎる言葉だけを残して、知識の番人は去ってしまった。

 これで、本当に全ての謎を自分たちだけで解き明かさなくてはならなくなった。

 「・・・・・・。あまり気は進まねぇが、行くしかねぇんなら行くしかねぇわな」

 のんびりとした口調で呟き、バンボラが先に立って歩き始めた。

森に向かって。

 すでに、その頭の中には森の中の地形が鮮明に描かれていて、バンボラに関する限り道に迷うことはありえなかった。むろん、その腕には巫女頭に借りた魔導書が抱えられていて、どんな細かなことでも確認するのに困りはしない。

 魔導書に書かれていることに間違いがないこと、この書が書かれたときと同じ姿を森が留めていること、が前提として絶対に不可欠ではあったのだが。

 「・・・その魔導書、本当に信用できんの? って言うより、いつの時代のものなの? ちゃんと役に立つんでしょうね!!」

 わずかに垣間見えた義人の影によって、期待と不安を増幅させてしまい。小刻みに震えている鈴音の細い肩に右手を置いたまま、ゆっくりとバンボラの後について歩くリカートが、その前提の必要性に気づき確認を求める。

 「・・・・・・。役に立つことは確かだが、信用はしないほうがいいだろうな。なんせ四千年前のものだからな」

 「よ、よんせんねん!!」

 あまりにもかけ離れた数字に、思わずしゃべりが平仮名になってしまうリカート、もはや頭抱えて溜め息つく意外に反応のしようもない事態であった。

 「だめだ、こりゃ」

 聞こえないよう小声でぼそり、と呟いて彼女は、ふとあることを思いつく。

 「・・・この賢者って、何のためにこんな地の果てまで来たのかな。人間が好き好んでくるようなとこじゃないと思うんだけど」

 リカートはいきなり腕を組み、真剣な表情で考え込みはじめる。

 その仕種にバンボラはチラリと視線を走らせたが、何も言わずに歩き続ける。その後に鈴音が続き、そのすぐ後ろをリカートが歩いていた。

 「ねぇ、なんかしんないけどさ。興味沸かない?」

 露骨に不自然なハシャギっぷりを見せ、鈴音に問いかけるリカート。むろん、これは演技である。鈴音の気を逸らすための。

 いま彼女は言い知れぬ不安感にさいなまれているはずだった。黒鳥が言ったこの地での戦いの規模の大きさを思んばかり、その熾烈さに思いを馳せる。

 そして、黒鳥の言った勇者が義人なのではないかという期待と、だとすれば傷つき疲れているのではないかという不安、死への恐怖。自分事ではないが故の心かき乱す妄想に襲われているに違いなかった。

 こんなときには、他に気を取られることがあると楽なもの。

 人間を十数年もやっていれば、つらいことや哀しいことの一つや二つはあるもので、リカートにだってそんな経験がある。だからこそ、思いついた精一杯の演技であったのだ。

 だがやり慣れないことはするものではなかった。そんなリカートの気遣いは、逆に危険の裏返しとなって鈴音に伝わり、彼女の集中力の全てが周囲の森に注がれる結果を生んだ。 

そうなってはじめて、鈴音はバンボラが彼女らの歩きやすいよう繁みの下枝を短めの中剣で払いながら進んでいること、リカートが常に自分の視線の先に立とうとしていることに気がついた。

 それは明らかに鈴音の目に入れないよう、何かを隠そうとする行為である。

 なにを隠そうとしているの? 言いかけて、鈴音は開きかけた唇をつぐんだ。問うて、素直に答えるようなら初めから隠すわけがない。

黒鳥の言い草ではないが、真実は自身の目で確かめねばならないのだ。

 「・・・そうね、興味はあるわね」

 本心を気取られぬように、話を会わせる鈴音。右手を下顎に当て、何か思案するような仕種をし、集中力を上げるかのように目を細める。

 だが、その細められた目の奥では眼球が忙しく動き回っていた。リカートがカバーしきれずにいる空間を目で追い、その先にあるものを見つめようとしていたのである。

 そして、その行為はすぐさま報われた。異状を探す必要などないほど異質な森が、そこにはあったのだ。

 見た感じは、どれも樹齢にして千年近い赤松のような色と葉を持ち、奇抜な形をした赤い実をつける木々でしかない。

 だが、その枝、その赤茶色の幹に絡みついた蔦が風とは関係なく揺れている。ちょうど、獲物を狙う蛇が、そうするように鎌首をもたげ獲物を追っていたのだ。

 しかし、そんなものは異状でもなんでもなかった。その蔦を平静な気持ちで観察し、奇妙な生き物だな、などと考えるだけの余裕を持った鈴音である。が、その余裕は完全な勘違いであることを鈴音は時を置かず知ることになった。

 それまで、森の暗さのためにシルエットしか見えていなかった実を、暗さに慣れた鈴音の目が見たとき、鈴音の頭の奥で何かが切れた。

 「ヒィッ!!」

 喉奥にこびりつくような悲鳴を上げ、目を見開く鈴音。

 それは実などではなかったのだ、それは引き千切られた肉だったのである。腕や足、胸、臀部・・・首。どれもが血の気を失い白くなった肌を己の血で染めていた。

 改めて見直すと、赤茶色の幹だと思っていたのも実は大量の血が幹の上にかさぶたのようになってくっついているのだと判った。

 「見ちゃ駄目よ!」

 鈴音の様子から、全てを察したリカートが叫ぶが、もう遅い。

 森の中を再び風が通り過ぎ、枝に引っかかっていた首の一つがクルリと回るとこちらを向いた。

 その目が鈴音の目を捕え、四つの眼球が無形の線で結ばれる。

 「イ、イヤ-!!」

 自分から見ようとしてみた光景だというのに、鈴音は堪らなくなって叫び、我知らず駆け出していた。目を手で塞ぎ、足の赴くままに・・・・・・。

 「待ちなさい!!」

 「あ!!」

 リカートにもバンボラにも、止めようがなかった。

 二人は、慌てて鈴音の後を追うことになる。この森にあって彼女を一人にするわけにはいかなかった。彼女の力では獣たちにとっては獲物というより、エサにしかならないだろうから。


        2


 鈴音は気が動転していた。

 いや、その表現は正しくないかも知れない。彼女の頭は、現段階でも冷静に機能しているし、精神もまた落ち着いて事にあたろうとしている。

 にもかかわらず、身体が肉体だけが彼女のコントロールを離れ、暴走していたのだ。

 彼女の頭と心は、必死になって身体を制止すべく指示を出す。が、まるで他人の身体ででもあるかのように命令を受け付けてはくれなかった。

 どこまで走るの? 心が問う。が、答えはない。

 平原ならざる森の中を、歩き慣れた散歩道ででもあるかのように平然と走り抜ける鈴音の身体。平時の鈴音なら絶対に不可能はスピードと跳躍力で、一歩毎にリカート、バンボラ二人との距離が開いていく。

 それだけの無理をするからには、当然鈴音の身体には相当なダメージが蓄積されていく事になる。

 特に、心肺機能への影響は急速かつ致命的なものがあった。

 もう駄目、死んじゃう。ギリシャ・ローマ神話の地獄の番犬ケルベロスの顎に自ら望んで入っていくような絶望感に支配され、鈴音の心は死を覚悟し、受け入れかけていた。

 一瞬、視界が利かなくなり、目の前が真っ白になる。

 死んじゃった。

咄嗟に、そう感じた鈴音であったが、それは誤りであった。視界が利かなくなったと思ったのは暗い森の中なら急に日の光が指す場所へ出たためのものだったのである。

 彼女の背後には欝蒼とした森があり、目前には大きな穴があった。底などないかのような暗黒が、擦り鉢状の穴の中でたゆっている。

 「……『ストイックの魔窟』なの?」

 眼前に広がる穴が、ホアンホア・ロイドの背中で見た森の中心に穿たれた穴であることを確信しつつも、呟いてみる。

 無茶苦茶に走ったはずなのに、いつのまにか目的の場所に来ている。そんな不自然すぎる偶然を信じる気になれなかったのだ。

 「そうよ。これが『ストイックの魔窟』と呼ばれる場所。もちろん、地界への入り口でもあるわ」

 東京ドームよりも三廻りほど広い穴を呆然と見つめる鈴音、その耳もとで誰かが囁いた。 

「え! 誰!!」

 突然の事に驚き、飛び退る鈴音。声の主を確認しようと振り返り、この世界に来てから最大の驚きに身を震わせることになる。

 そこには、より正確に表現すれば鈴音の耳があった辺りの空中には身長十五・六センチで、背中に蝶のような形とトンボのような色の羽根をつけた女の子がいた。

 それは、かの有名な「指輪物語」以来、ファンタジーの世界には欠かせないものとなった『妖精』に間違いなかった。

 ただし、外見だけで、その性格や役割までも同じということはないのだろうが。

 「はじめまして、鈴音さん」

 風に吹かれる風鈴のような澄んだ声とともに、その妖精は鈴音の目の前、ほとんど鼻先にまで近づいてきた。

 「な、なんであたしの名前を?」

 物語の中にしか存在しなかった妖精が、幼い頃には花畑を見る度、その中を舞い飛ぶ姿を探し求めていた憧れの産物が目の前にいる。

 そんな現実に、戸惑いながらも幼かった頃の夢に浸っていた鈴音であったが、妖精が自分の名を口にしたことで現実に引き戻された。

 「知ってますよ。なにしろ、あたしは勇者様に、そう義人様、こちらの世界ではオーリンで通ってる、あの御方の指示で、あなたを待っていたのですから」

 純真無垢をそのまま形にしたような微笑みを浮かべ、妖精が答える。

 その答えを耳にし、頭の中で音を何度も反芻し、その意味を完全に理解したとき、まさにその瞬間の鈴音の表情の変化こそ見ものであった。

 はじめマネキンででもあるかのように表情が消え、数秒後には文字通り破顔したのである。

 「待っていた? あたしを? 義人君の指示で?」

 この世界へと転移させられて以来、孤独であった鈴音。もちろんリカートやバンボラのように冒険の旅を供にしてくれる仲間はいるが、真の意味での同胞というわけではない。

 この世界で唯一の同胞、しかも好きになった男が自分を待っていてくれた。

 それがたとえ妖精という存在を介してのものだったとしても、過酷な現実に向き合わねばならなくなった若い娘を、これほど勇気づけてくれるものが他にあるだろうか。

 喜色を浮かべ、胸で手を組み喜びに浸る鈴音。

その様子を妖精は笑みを浮かべたまま見つめている。

 「勇者様は気にしておられましたわ。あなたさまのようなかよわい女性を自分の戦いに巻き込んでしまったことを。そして、すまないと思いつつも旅を続けさせなくてはならない御自身の不甲斐なさに、怒りを覚えていらっしゃるようでした」

 鈴音の喜びをさらに盛り上げるように、妖精が語を添える。

 「そ、そんなこと・・・」

 気にしなくたっていいのに、妖精の言葉が面映ゆく感じられて俯いてしまう鈴音。だが、その胸中では恋心とは切っても切り放せない、もう一つの心情である我儘が頭をもたげてきていた。

 「だったら、そんなに気にしてくれてるんだったら、なんで逢いに来てくんないの? 何で自分で待っててくんないの!!」

 思い余った鈴音は、瞳を潤ませながら妖精に詰め寄ってしまっている。

 その必死な問いかけに、妖精は待っていましたと言わんばかりに深くうなずき、真剣な表情を作ると、義人を取り巻く事情というやつを語り始めた。

 「オーリン、いえ、義人様はオルゲスとの戦いで傷付き疲れた隙をつかれ、地界現住の民ラクロア族の手によって捕われの身となっております。彼らは、義人様を人質にあなた様を脅迫、自分たちに都合よく世界を組み替えようと謀っているのです」

 「・・・・・・?」

 いかにも、ありそうな話ではある。ありそうな話ではあるのだが、何かが腑に落ちないことを、鈴音の潜在意識が感じ取っていた。

 それがなんなのかは判らないながらも、なぜか違和感があったのである。

 「・・・・・・」

 しばし、鈴音は瞳を閉じ、己の潜在意識が発する警告に耳を傾ける。

 が、ここは言うなれば敵地のど真中、いつまでも一つ所で話し合っていられる状況ではなかった。

 「・・・! いけない、ラクロア族の追手が!!」

 妖精が緊迫した声を上げ、その声で我に返った鈴音は、辺りを乳白色の膜が覆いつつある事に気がついた。


 鈴音を追いかけ、走り続けていた男が足を止める。

 目の前に白い壁があった。

 「なんだ?」

 突然、行く手を遮るかのように現れた白い壁を呆然と見渡し、バンボラが素っ頓狂な声を上げた。

 狩人になって十五年、森と付き合って二十七年、誰よりも森を知り尽くした男でも見たことのない異常な光景がそこに現出してあったのである。

 「なんだ? じゃないでしょっ! 急ぎなさいよ、あの娘にもしものことがあったら世界は・・・・・・」

 終わる。

 リカートの神官戦士としての感性が、声高に危険を告げていた。

 二人は、怯むことなく白い壁の中に身を踊らせ、目隠し状態のまま再び駆け出す。

 ほとんど全力疾走に近い速さで。


 「な、なんなのよう、これ!!」

 徐々に自身の廻りにまで迫ってくる霧のようなものを見て、鈴音は恐怖を覚えたようだ。引き釣った声で叫んでいる。

 大方の人間同様、彼女としても視界を奪われるというのは恐怖に値した。

 本物の戦士や魔導師とかならば、気配やオーラだとかで大体の様子は判るのかも知れないが、鈴音にそんな芸当はできない。できるはずがなかった。

 そんな鈴音の恐怖などはお構いなしで、霧は迫り、ついに鈴音の姿と視界の全てを包み込んでしまう。

 もともと目はいいほうだっただけに、一度視界を奪われると鈴音の勇気は脆くも崩れていった。

 自分が、この世界では産まれたての赤ん坊並みに非力であることを改めて思い知らされた思いで、鈴音は自分が情けなくなってしまっていた。

 「逃げて、逃げて」

 妖精が鈴音の前方に出て、妖精の言うラクロア族の追手が、近づいてきているのだろう、宙で静止しながら叫んでいるが、その姿は霧の向こうにあって見る事ができない。

 少女がピクッと驚いて身体を硬直させ、立ちすくむ。

 見えてはいないが、灌木の繁みが揺れるザワザワした音はハッキリと聞こえていた。

 続いて枝を分ける音がしたと思った瞬間、繁みから黒い物体が飛び出してきたのである。

 「キャッ!」

 鈴音は思わず悲鳴を上げていた。

 黒い物体もまた、妖精同様に霧に紛れていて姿を見ることができない、見えないからこそ不安感をあおられ、恐怖が増すことになる。

 「イ、イヤー」

 少女は先刻と同じ悲鳴を上げると、リカートからもらった幅広の中剣を引き抜いていた。攻撃よりも防御に適し、持ったときバランスをとりやすいのが特徴の剣である。

 「ヤァッ!」

 鋭さの欠ける声を上げ、鈴音は斬りかかっていった。


 「ヤァッ!」

 森を出た瞬間、声とともに何者かが斬りかかってくるのをリカートは気配で察していた。緊張が全身を走る。

 反射的に飛び退さると、紙一重のところを何かが掠めていった。

 リカートはレイピアを構え、相手の動きを探ろうとした。

 「待て、剣を使うな!」

 バンボラが早口で言った。

 「鈴音だ。斬りつけてきたのは鈴音だぞ」

 言われて、さっきの声が鈴音のものであったことにリカートも気づいた。それに、相手の剣捌きは素人のもので、街の道場に通う子供よりも稚拙だった。

 「森に住む虫たちの中には、幻覚を見せるような毒を持ってるのもいるからな。それに刺されたのかも知れないな」

 「この場合、魔術だと考えるのが妥当なんじゃないの。この霧の異常さから考えてもね」

 言いながら、リカートは困ったことになったと思っていた。

 この霧の中で、素人だとは言え鈴音は容赦なく剣を振るい、こちらは反撃ができない、となると不利は必至だ。

 「なんとか、術の元を絶たなきゃ駄目ね。たぶん、術師も近くにいるはずよ」

 辺りに気を配りながら、リカートが言う。

 「・・・判った。鈴音の面倒は俺が見る、あんたは術師のほうを頼む」

 言われるよりも早く、リカートは女神の名を唱えつつ精神を昂揚、集中させていく。

 「・・・とは言え、こいつぁちぃっとばかしきついかな?」

 祈りの態勢に入ったリカートを視界の隅に捕えつつ、バンボラが呟いた。その額を冷たい汗が濡らしている。


 鈴音は、剣を振り回している。

 一時でも剣を止めれば、あいつらがまた襲ってくるだろう。

 奇怪な生き物だ。人の姿をしながら、翼があった。本来、人間の腕である部分が翼になっているのだ。

 「ハーピー、人面鳥、か。まさか、本物にお目にかかれるとは思わなかったわ」

 神話好きの鈴音は、その姿を見た瞬間に苦笑していた。その生き物は間違いなくギリシア神話で、英雄アゲノールの息子ピネウスを苦しめていた怪鳥ハルピュイアたちだったのである。

 妖精に続き、またもや夢想の世界の住人に逢えたことで、思わず笑みの出た鈴音ではあるが、それが自分に向かって襲いかかってくるのでは気分のいいはずがなかった。

 ハルピュイアたちは神話の通りに飛び回り、飛び回りながら汚物を投げつけてくる。耐えがたい悪臭が辺りを漂い、鈴音は失神しかけた。

 その視界の隅を、ハルピュイアよりも五廻り以上小さなものが掠め飛び、いつのまにか地面に降り立っているハルピュイアを指さすと声を限りに叫んだ。

 「早く、殺しなさい」

 その声で、鈴音は今が攻撃すべき時であること、攻撃すべきものが目の前にいることを悟った。

 大きく振りかぶった剣が、頭上で一度静止してから風のような唸りをあげて振り下ろされる。

 「消えて!!」


        3


 「ギャアー!!」

 鈴音が振り下ろした剣の切先で、それは断末魔の声を上げた。血飛沫が上がり鈴音の白皙の肌にも返り血が飛んでいる。

 同時に爆発でもしたかのような圧力が広がり、剣が折れた。辺りを包んでいた霧も虚空に散り、光が差し込んでくる。

 「・・・フウ」

 ようやくにして視界を取り戻した鈴音が、しびれた手を治そうと振り、折れた剣と鞘を投げ捨てたあと安堵のため息を吐き出した。

 そして額に浮いた汗を懐に入れてあった布で拭きとろうとする。その途中で鈴音は驚愕の表情のまま立ち尽くすリカートを見つけ、微笑んだ。

 そこには、自分の力で敵を倒すことができた自信と、満足感を見て取れる。

 「あ、あんた。なにを?」

 リカートは、それ以上言葉が出なかった。この状況で何を言えばいいのか判らなかったのである。

 鈴音の足下には剣を握り締めたまま、うつ伏せに倒れたバンボラがいた。

 「どうして? どうしてこんなことになるの?」

 取り替えしのつかない悲しみに身を捩らせて、リカートが嗚咽する。

 確認もしないうちから、バンボラが死んだものと決めてかかっているのだ。

 「勝手に殺さないでほしいな」

 野太い男の声がして、うつ伏せになっていたバンボラが起き上がる。

 風圧をもろに浴びたらしく、着ている皮の服が所々破れ、血がにじんでいた。

 「それにしても、なんなんだこれは?」

 あきれたように言って、バンボラが摘み上げたのは二つに切り裂かれ、内部圧力に負けて弾けた妖精の、羽根だった。

 付け根に残った肉片が生々しいが、それ以外に遺体と呼べそうなものはない。全て吹き飛んでしまったのだろう。

 「オルゲスの手のものよ。たぶん、あたしとあなたたちの間に溝を作っておいて、地界のラクロア族と争わせようとしていたのよ。あたしに死なれちゃ困る、けど勝たれてもいけない。そういうことなのよ、きっと」

 憧れの的でもあったものを、自らの手で殺してしまったことも手伝ったか、妙に吹っ切れた様子で鈴音は説明していた。

 死なれても困るが、勝たれてもいけない。その謎々の答えは、至極単純である。要するに時間稼ぎがしたいのに違いない。

 「・・・・・・なんで、それが判ったの?」

 バンボラが死んだとばかり思っていたリカートが、混乱した気持ちを整理し直して疑問を投げかけてくる。

 「はじめにおかしいと感じたのは闇雲に走った結果、ここにたどり着いたっていう作為を感じる偶然だったの。そのあと義人君のこととか聞かされて忘れかけてたんだけど、そのあとあたしに世界を都合よく組み替えさせるためにラクロア族が義人君を捕えているって聞いたときにも違和感を感じて、考えたの。だって変でしょう、あたしが世界の再編成を決めたのは今日のことなのよ」

 正確には今日ではないが、時間で言えば僅かに十七時間ほど前の話ではある。

 鈴音が旅を初めて十日ほどたっていることから考えて、義人がオルゲスの軍勢と戦ったのは五日以上前のはずだ。どう考えても計算が合わない。

 「何か仕組まれてる、そう思ったの。もし仕組んだものがいるとすれば、それは妖精以外にはいない。でも証拠はなかったから迷ったわ、だけど妖精が殺せって言葉を使ったとき、迷う必要はないと感じて剣を振り下ろしたのよ」

 運がいいと言ってしまえばそれまでだが、女の子の直感力これでなかなかに侮れないものがある。

 「なるほど、大した洞察力だ。このあとの魔龍アイオーンとの会見でもぜひ、発揮していただきたいものだな」

 嫌みとも感嘆とも取れる曖昧な言葉を掛けながら、バンボラは鈴音に近づき、その身体についた返り血を水を浸した布で拭ってやった。女たちとは比較にならないほど、彼の水袋には水が残っていたのである。

 「さてと、んじゃ行こうか。『ストイックの魔窟』最深部へ。ヘビが出るか蛇が出るか、楽しみだなぁ」

 「・・・・・・龍でしょ」

 バンボラのくっだらないボケに、それでも律儀に突っ込み返したリカートは魔窟の底への道を探っている。

 だが、探るまでもなく道はそこにあった。球場の観客席のような石段が階段状に底のほうまで続いていたのである。

 それをただ下りていきさえすればいいのだ。

 もっとも、石段は風化が激しく苔が密生しているためかなり滑りやすくなっている。底が見えないようなこんな所で滑りでもしたら、底に着く頃には程よくミンチになっているだろうことは疑いない。

 「ハンバーグは好きだけど・・・」

 自分がなったのではシャレにならない。リカートとバンボラは剣を杖やピッケルがわりに、鈴音はバンボラの力強い腕に支えられて、各々底を目指した。


 湿地にでも入り込んだかのような湿っ気と、カビ臭さが鼻孔を刺激する。バンボラの冗談ではないが、いかにも蛇たちの好みそうな環境だ。

 石段は無限に続くかのような長さを見せ、三人が底に着いたのは夕暮れ近くなってからだった。

 昼前に下り始めたというのに、である。

 元はもっと深い穴があったものを超自然的な力が埋めてしまったのであろう、底は上から落ちてきた無数の石片やら木片やらで、鈴音に言わせると夏の海岸状態だった。

 到る所に物が散乱していて、足の踏み場もなかったのだ。

 「まだ、歩く必要がありそうだな」

 周囲をグルリと見渡してバンボラが呟く、その目が西側の岩壁に向けられていることを知って、リカートと鈴音も向きを変えた。

 壁には、ガレキに半分かた埋もれた洞窟が口を開けている。その奥も、この穴同様かなり深そうだ。

 鈴音はすぐにも洞窟に駆け込みたそうな様子になったが、こういった旅に慣れているバンボラの忠告で、遅めの昼食と早めの夕食をここで摂ることにした。

 雰囲気的、環境的にも食事に適した場所とは言えなかったが、少なくともここならば獣に襲われる心配がなく安心して食事ができる。

 それに、魔龍アイオーンがどんな行動に出るか判らない以上、体力を消耗させて回復しないうちから会いに行くのは危険すぎた。

 どんなことが待ち受けているにしても、すぐさま行動できるよう万全に近い態勢を維持しておくべきなのだ。

 一時間ほどの休憩の後、三人は再び歩き出した。

今度は横穴を。

 リカートが神官戦士らしいところを見せ、抜き放った剣の鞘先に魔法の明かりを点らせ、鈴音に手渡す。

 いつ敵が現れても対処できるように剣を抜き、どちらにしても戦いに参加させる気のない鈴音に明かりを持たせる。

 なかなかに懸命な措置と言えるだろう。

 魔法の灯は、滑らかな洞窟の岩肌に青白く反射していた。岩肌は濡れているみたいで、宝石の鏤められた装飾品のようにきらきらと輝いた。

 相変わらず足もとは滑りやすく、一瞬たりとも気を抜くことはできなかった。

 やがて、洞窟は巨大な空洞のような場所に行き当たる。下りてきた穴のスケールからすればささやかな広さだったが、それでもサッカーをするぐらいの広さはあった。

 空洞の中央は澄んだ水が溜まっていて、ちょっとした池のようになっていた。水の深さはそれほどでもなく、深いところでも鈴音の膝を濡らすことはないだろう。

 その池の底には、想像を絶する量の白骨と錆びた武具が沈んでいる。

 岩の壁は淡い青白色の光を放っていた。

岩肌に光苔が密生し、光っているのだ。

 まるで自然にできた王宮の広間のように、巨大で荘厳であった。そして、空洞の一番奥、あたかも玉座に腰を下ろしているかのようにこの森の主がいた。

 「これが、魔龍アイオーン!」

 リカートが驚きの声を上げる。

 鈴音はその巨大さに圧倒され言葉が出ず、バンボラに至っては口を閉じるのも忘れて見つめている。

 アイオーンの全身にも光苔がはえ、青白い光で包まれていた。

 形は魔龍と言うだけあってドラゴンというよりも、やはり龍と呼ぶほうが近い感じがする。

 蛇のような長い身体、どこまでが胴体でどこからが尻尾なのかの区別さえつかない。巨大な翼、コウモリのそれではなくカラスの、と四つの足がとぐろの間に垣間見えている。

 アイオーンは見えているだけでも三重のとぐろを巻きながら、岩の上に静かに横たわっている。

 「『神を食らうもの』、魔龍アイオーン」

 再びリカートが呟く、その声には過分に忌み嫌う響きが感じられた。

 どうひいき目に見ても本人を前にして口にする言葉と口調ではない。

 「それは誤解じゃ。確かに噛みつきはしたが、食ったことなぞはないぞ」

 頭上から乾いた紙を擦り合わせるようなカサカサした声が聞こえ、三人の人間たちは一様に身を強張らせ、次いでゆっくりと声の主を仰ぎ見た。

 目の前に巨大な蛇の頭がある。思わず目が合い、鈴音は慌てて目を逸らした。

 「だいいち、わしが噛みついたときラファエラはフィアンナという名の人間であったし、わしはといえば一匹の蛇でしかなかったのじゃから、その呼称はあてはまらんよ」

 なにか弁解めいた口調ではあったが、この龍が噂ほどに残忍ではなく、話して判らん相手でもないことだけは、この言葉ではっきりした、ように思われた。

 「人間だった? ラファエラ様が!!」

 女神に命を預けた立場のリカートが信じられない思いで声を高くして、叫ぶ。

 「ほんの千年前まではな。わしは噛みつく前のことをあまり覚えてはおらんのだが、わしがあの娘に噛みついたとき、わしはカラスの野郎に捕まっていて息も絶え絶えじゃった。で、噛みつくと同時に力尽きて死んだのじゃが、同時に娘のほうもショックで心の臓が止まってしまった。死ぬと生き物の魂は二つに分かれ、善の心は天界、悪の心は地界へと還るのだが、死んだのが同時であったために娘の魂にわしの善の心、わしの魂に娘の悪の心が融合してしまってな。結果、娘は実体を持たない精神体、すなわち女神に。わしは肉体を有する魔物へ身を変えたというわけじゃよ」

 蛇のくせに妙に遠い目をして、アイオーンは語った。

 それは確かに興味ある話であったが、残念なことに今は彼の思い出話を聞いたり、女神ラファエラの発生の謎を研究するような暇などありはしない。

 いち早くそのことを思い出したのは少女たちの後見人たるの任を、自らに課しているバンボラだった。

 「昔話はそれぐらいにして、地界へ行く道を教えてほしいんだがな。それとも、あんたを倒さなきゃ行けないのか?」

 彼は神の存在を認めてはいても、信じてなどいないので女神がどうのこうのという話しにはまったく興味が沸かなかった。

 鈴音とリカートが失念していたことを思い出し、全身を緊張が走り抜けた。

 「・・・・・・、逆じゃな。わしを倒してしまっては地界に行くことはできぬぞ。エスティリアから借りた本にも書いてあるじゃろうが」

 そう言って、笑みを浮かべたのだろう、目を細める魔龍。本人はともかく、見ている人間には恐いとしか思えない笑みである。

 「『地界の入り口はカプリチオ盆地の中央、ストイックの魔窟と呼ばれる穴の奥にある。なれど、その入り口とは天に開けられた一つの穴であり、翼を持たぬ人の身にて、これを下りること叶わざるなり』」

 魔龍の言葉に促され、『ストイックの魔窟』に関する最後の記述に目を向けたバンボラが、それを口に出して読んだ。ほかの二人にも聞こえるよう、そして内容と魔龍の言いたかったことが同じであるかを確認するために。

 だが、魔龍の言いたかったことと、本の内容は一致しているらしく、魔龍の目はさらに細くなった。

 「そう、四千年前にはわしがいなかったから下りることができんかった。が、わしがここにいることで、それが可能になったのじゃよ。地界を覗かせてやろう・・・近くに来なさい」

言われて、三人は魔龍の側へと寄っていった。

ウロコの一つ一つを判別できるほどに。

池の水が足を濡らすが、予想した通り膝にも届かぬ深さしかない。

 少女たちはスパッツよりも少し長いくらいのズボンだったし、バンボラは湿地でも平気な膝まである完全防水の革靴を履いていたので服を濡らす心配はなかった。

 問題なのはマントだが、これはたくしあげさえすればそれでいい。

 「あっ!」

 もう二、三歩で魔龍に触れる。そんなところまで近づいたところで鈴音は声を上げた。魔龍が巻いているとぐろの間から下を覗き見たのだ。そこには、高い山が血のようなマグマを川のように流し、鳴動する別世界があった。

 そして、その別世界へと垂れ下がった魔龍の尻尾が見えている。

 「わしの尾は地界の地上にまで届いておる」

 自慢げに呟く魔龍アイオーン。

言うまでもなく、それはあることを暗に示す意味を含んでいた。

 つまり・・・。

 「つまり、あんたの身体を伝って行けって事なわけなのね」

 リカートは露骨に深い溜め息を吐くと、おもむろに魔龍の背だか腹だかにしがみつき、スルスルと下りはじめる。

 むろん、バンボラもそれに続き、やむなく鈴音も後を追った。

 普通の女の子である鈴音にとっては製品化されていない、生の蛇皮は決して気色のいいものではなかったのだが・・・。

 「しっかりと掴まっていくんじゃぞ。落っこちても助けてなんぞやれんからな」

 アイオーンの老婆心からの忠告を頭上に聞き、三人は魔龍の背中を足跡を刻み込むかのように一歩一歩降りていった。


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