第四撃 博物館潜入
1946年 兵庫県 養父郡
ブォォォーーッ!
ナチスドイツ製の装甲輸送列車が重い汽笛を大地に響かせながら、駅へ停車した
自動小銃を構えながら青年が恐る恐る外の様子を伺う
青年「...誰もいない」
辺りに薄い霧が立ち込めている
若い女「嫌な予感がするねぇ、早く行こう」
一行は足早に駅舎をあとにする
少し歩みを進めると、霧の向こうに巨大な建造物が鎮座しているのが見える
青年「こいつはたまげた!同潤会アパートといい勝負じゃないか?」
若い女「イギリスとアメリカとイタリアの賠償金か...」
青年が重苦しい木製の扉を押し開けると、
目も眩むほど煌びやかなホールが広がる
青年「観覧料は取らないのか、総統閣下は怪しげなほど寛大ですなぁ」
女「気を抜くな、完全な留守ではないはず」
青年「フェンスが張っていて、外からは入れないように見えたぞ」
若い女「よし、3人で分かれてハンガーを探そう」
女「いや、情報の伝達が遅れる。固まって動いた方がいい」
青年「地図を見つけた。展示室を一周してホールに戻る構造になっているみたいだ」
一行はホールの左奥へと向かう
若い女「欧米は右回りだったが、ここは左回りなんだねぇ」
女「日本人向けに作られているからだろう」
若い女「へー!さすがは独裁者だね」
蓄音機「――総統閣下はとても慈悲深い人物であり、人の死を楽しむような極悪人ではない!民衆を自分たちの傀儡として扱い、女子供にまで人の殺し方を教える豚共は、民主主義の名目において、駆逐されたのだ!!」
青年「聞けば聞くほど憎たらしい...」
青年は蓄音機を持ち上げ、床に叩きつけた
ガッシャン!!!
若い女「おい!何をやっているんだい!兵士が来ちまうよ!」
青年「す、すまない、つい」
女「すぐにこの場を離れるぞ」
―――――
無数のガラスケースが並ぶ空間
砲弾、装甲板、文献...様々な品が横たわっている
青年「これがあの列車砲の砲弾か...」
若い女「武蔵の装甲板だって?これは大和のだ!お父さんと見に行ったからわかるんだよ」
女「...壁に怪しい所は無い。ハンガーにはどこから行くんだ?」
―――――
若い女「また蓄音機だ。あんた、壊すんじゃないよ」
蓄音機「――史上最強の第7グルッペの分隊長――」
若い女「『第7グルッペ』?これ姉ちゃんが所属していたところじゃないかい?」
女「...あぁ」
蓄音機「――中尉は、人並外れた戦闘能力で、イワン共を文字通り蹴散らした。彼の愛国心はすさまじく――」
その時、激しい怒号と、幾多の足音が重なって聞こえる
青年「ホールからだ!」
女「くそ、罠だったか、隠れろ!」
室内に金属片が投げ込まれる
若い女「|Rauchgranate!」
金属片から白い煙が上がる
女「姿勢を低くしろ!」
数秒の沈黙の後、ドイツ兵が顔を出す
バァァァァン!!!!
青年の自動小銃が火を噴き、ドイツ兵が倒れる
バリバリバリ!バリバリバリ!
続くドイツ兵が、StG-44だけを壁から出し乱射する
若い女が匍匐前進で近づく
若い女「こっちだよ!」
ガガガガガガガガガガガ
白煙の先のドイツ兵を一網打尽にし、素早く撤収する
女「後ろを警戒しろ!挟まれるな!」
バァァン!バァァン!バァァン!
女がより一層濃さを増したカーテンの向こう側へ制圧射撃を行う
刹那、そのカーテンを貫くかのように光り輝く火炎が現れる
女「火炎放射!」
若い女の衣服に火が燃え移る
若い女「キャアアアア!!!熱い熱い熱い!!」
若い女は床に倒れこみ、ゴロゴロと転がる
女「距離を取るぞ!」
女の手を握り、彼女を立ち上がらせようとする
背後から炎が迫る
青年「伏せろ!」
バァァァン!!!
青年が火炎放射兵のタンクを撃ち抜く
火炎放射兵「ギャアアアアアア!!!アアアアアアアアア!!!!」
激しく暴れながら火炎放射兵が崩れ落ちる
後方からもさらにドイツ兵が駆け付ける
女「弾切れだ!援護を!」
青年「おう!」
銃剣を付けたkar98kを持ったドイツ兵を狙う
カチッ
青年「え?」
再度引き金を引くも、反応がない
青年が慌ててチャージングハンドルを引こうとしたとき、
ドイツ兵「どけ!」
ドイツ兵が銃床で青年の腹を殴る
青年「うぐっ!」
青年はその場でうずくまる
女「チッ」
女がホルスターから拳銃を取り出そうとするが、
女「(距離が近すぎる!間に合わない!)」
ドイツ兵「うおおお!」
ドイツ兵が銃剣を刺そうとするが、女は間一髪で避ける
その瞬間、ドイツ兵がもう一本のナイフを取り出し、女を押し倒す
ドイツ兵は女の喉にナイフを突き立てようと体重をかける
女「くっ...」
ドイツ兵がナイフの持ち手を叩く。女の喉元にナイフが近づく
女「ぐぐぐ...」
女はブーツをの内側へ手を滑り込ませ、一本の棒を取り出す
カシャカシャ
片手で蝶が舞うかのように棒を振り回し、刃が露わとなる
ドイツ兵「地獄に落ちろ!!!」
女がナイフを兵士の頸に刺す
ドイツ兵「ガッ...」
兵士のナイフの軌道がずれ、大理石の床を引っ掻く
若い女「ホールに誰もいない!二階に行くよ!」
3人はホールの階段を上がる
若い女「あそこだ!『Hangar』って書いてあるよ!」
一行は搬入用スロープを駆け下りる
青年「あの戦闘機だ!あれに乗ろう!」
青年が駐機している飛行機を指さす
女「Ju 187 シュトゥーカか、3人乗りだから丁度いいな」
青年と女が後部座席に座り、若い女が操縦桿を握る
若い女「ん?これは...」
若い女が何かをコートの内ポケットにしまう
若い女「えーと、左翼の確認を」
青年「いいから早く飛べ!」
最新型の爆撃機Ju 187シュトゥーカはエンジンからうなり声を上げ、滑走路へと向かう
無線〚機体番号739へ告ぐ 現在飛行は許可されていない 直ちに応答せよ コメン〛
若い女「堅苦しいなあんた、もっとリラックスしたらどうだい? パッソ...おっと失礼ここはドイツだった、コメン」
シュトゥーカが滑走路から離れ始める
無線〚機体番号739へ告ぐ 最終警告だ 10分以内に滑走路へ着陸せよ コメン〛
若い女が無線機のスイッチを切る




