第二撃 掩蔽壕襲撃
1946年12月某日、島根県太田市 山陰街道
青年「省線を使えばもっと早かったんじゃないか?」
若い女「ならトランクのブツはどこにしまうんだい?芋が欲しいヤップどもに通報されるよ」
ドンッ!!
若い女「おっと、イヌを轢いちまった」
青年「赤犬じゃないか、旨いんだぞ」
若い女「えぇ、今のヤパンは犬まで食うのかい?!世も末だねぇ...」
青年「お前の国のせいだろ?」
若い女「親がドイツ人なだけで、あたしはヤパン生まれヤパン育ちだよ!」
青年「日本生まれならその「ヤパン」っていうのをやめたらどうだ?」
若い女「ニ、ニポ、ニポン」
青年「(まぁ、3年もイタリア軍にいたなら、仕方あるまい)」
――――――
若い女「よし、着いたよ...って、何を持ってきてるんだい?!」
青年「MG42がどうかしたか?」
若い女「...どうりで車が遅いわけだ」
若い女「どっかに放りなさい!重いし使いづらい!」
――――――
掩蔽壕内部
兵士「もう少しポーカーがやりたかったのに...たかが車の音で見てこいだと?」
瞬間、首にナイフが刺さる
兵士「カッ...」
若い女「シー...」
兵士「(なんとか...なんとか知らせないと...)」
兵士「(そうだ...拳銃を撃てば...)」
兵士「(く、暗い...)」
バァン!バァン!
冷たいコンクリートの閉鎖空間に破裂音がこだまする
若い女「しまった!」
バン!
ドアが乱雑に開かれる
兵士「銃声だ!」
若い女はナイフを投げる
兵士「う...」
額に刺さり、兵士は仰向けに倒れる
別の兵士「あそこだ!」
MP40を構える兵士
若い女は角に隠れ、弾を避ける
兵士1「おい!マシンガンを持ってこい!」
兵士2「手榴弾を投げる!」
若い女「しくじった...!」
若い女は奥へと走った
若い女「とにかく破片を避けなきゃ!」
すぐそばの部屋に転がり込む
ドガァアン!
手榴弾が起爆する
兵士1「退路を塞げ!出口をすべて封鎖するんだ!」
―――――
兵士3「だ、誰だ!?」
若い女「チッ...」
兵士3が小銃の引き金を引こうとした刹那、銃口を若い女が持ち上げる
弾丸は壁へと吸い込まれ、ひしゃげた鉛の塊と化した
若い女はホルスターからベレッタm1934を抜き、兵士3の腹に撃ちこんだ
兵士3は腹を押さえ、崩れ落ちる
兵士3「がぁ...痛え...」
そのとき、ドアが蹴破られ、
MP40を構えたドイツ兵が立ちはだかる
―――――
数分前
兵士「カカカ...」
頸動脈から血を吹き出しながら、ドイツ兵が倒れる
青年は銃剣を小銃にはめ直し、奥へと進む
ドアを開けた瞬間、強烈な鉄錆の臭いがむせ返る
青年「これは...?」
部屋は死屍累々たる有様と化していた
腕が無い者、首が無い者、額に穴が開いた者――
その時、2発の銃声が響く
怒号、足音、銃声、そして爆発音
青年「まずい、小銃では不利だ」
青年が音の元へと走ると、短機関銃を構えたドイツ兵を見つけた
ドォン!
青年の構えた九九式短小銃から重い銃声とともに7.7mmの実包が飛び出す
兵士のヘルメットを貫通し、頭を吹き飛ばした
青年は小銃を背に廻し、MP40を拾い上げた
青年「おい、大丈夫か?」
若い女「なんとかね」
若い女はベレッタ Modello 1938Aを持ち上げる
若い女「ところで、急に静かになった...」
その時、木製のドアから一筋の光が現れた
いや、光ではない、部屋の灯りを反射させている金属片だ
金属片はゆっくりと外へ消えた
青年「嫌な予感がする、角へ隠れよう」
青年と若い女は短機関銃でドアを狙った
若い女「手榴弾でも投げ込まれたらおしまいじゃないのかい?」
青年「自分の基地をあまり破壊したくはないはずだ」
激しい銃声とともにドアから無数の鉛玉が飛び出した
木製のドアは穴だらけとなり、そのまま崩れ落ちた
カン!カラン
コンクリート製の床に空の弾倉が落ちる
カツ...カツ...カツ...
青年「(は、入ってくる...!)」
重々しく、しかし軽々しくも感じる金属音が散らかった部屋に響く
入ってきた人物は、黒い革製のコート、StG-44のスリングを斜めに掛け、胸元のネクタイには騎士鉄十字章が留められている
腰に日本刀を差し、ナチス親衛隊将校の典型的な恰好だが、左腕のハーケンクロイツの腕章が無い
青年「(女...?将校なのに...?)」
顔を確認した若い女が叫ぶ
若い女「姉ちゃん!!」
左目に眼帯を着けたミディアムヘアの女将校はふらつくように若い女へと向かう
そして若い女を抱きしめた
女「生きてたか!よかったよかった~」
ドイツ兵がドアの外に現れる
女は若い女の左耳を塞ぐように抱き寄せ、右手で初期型のマウザーC96の引き金を引いた
胸に7.63×25ミリの強力な弾を受けた兵士は、吹き飛ばされる
女は続けて引き金を引き、脳幹を撃ち抜く
青年は女の全身を見て、
青年「(あの姉さんがこんな別嬪さんになるとは...)
若い女「なにをボケっとしてるんだい!応援が来る前にさっさとずらかるよ!」
三人は車に乗り込んだ
女「二人はどこを目指しているんだ?」
若い女「東京だよ、ヒトラーの野郎をぶっ殺してやるんだ」
女「独裁者の暗殺はそう簡単にはいかないぞ...」
女「ほら、あんなふうにな...」
女が指を差した方向に、灰色の箱から棒が突き出したようなものが見える
棒の先を正面とすれば、それはゆっくりとこちらに向きを変えていく
青年「Tiger Iだ!!!!」
若い女「うああああああ!!!!!」
ハンドルを切るも、すでに8.8cm砲から放たれた砲弾は、本来車がいた筈の場所に命中し、激しい爆発を起こした
その爆風によって、車のリアが浮き、そのままひっくり返った
しばらく滑走したのち、田んぼへと落ちる
任務を終えたTiger Iは勇ましい唸り声のようなエンジン音を響かせた




