84 寒い方が苦手
ボスが粒子化して消えたのと同時に、部屋の灯りが消えて再び真っ暗になった。
:お疲れ様あああああ
:ちょっとヒヤッとしたけどよう勝てた!
:相変わらず、なんでソロでボスに勝てるんだ
:部屋また暗くなった?
「...ボスを倒したら、ギミックも消えるってことか」
これ以上敵の追加はないと判断し、過剰駆動を解除する。
「...おえっ」
途端に襲い来る反動。
吐き気、眩暈、倦怠感、筋肉痛...。思わずその場に膝をついてしまう。
:どうした!?
:疲れた?
:本気出した反動的な?
「はあ...はあ...」
マジックバッグからポーションを取り出し、急いで飲み干す。
この状態はスキルの反動によるものなのでポーションで完治はしないが、それでも多少はマシになる。
一応霊薬と万能薬を飲めば完治はするが、そんな気軽に手に入るようなものでもないので、ここはポーションで凌ぐしかない。
「ふう...」
数分してようやく落ち着いてきたので、なんとか立ち上がる。
何度も経験している状態だが、やっぱり慣れないな。というか慣れたくもないしんどさだ。
暗視スキルを発動し、周囲を見渡す。
部屋の奥の方に魔法陣が出現していて、ボスが消えた場所にはドロップ品が残されていた。
「とりあえず...ドロップ品を回収して、次の階層の転移石を入手して、帰りたいな。」
:ドロップ品!何があるかな!!
:その状態で次の階層の敵倒せる?
:通常魔物一匹くらいなら倒せるでしょ
:いやいや、ここまで来ると、通常魔物でもバカにできない強さだぞ。多分。知らんけど
「...まあ、数十分休憩してからかな。さすがに今すぐ行くのはきつい」
ぶっちゃけ今のままだと、碌に体が動かない。もう少し休めば魔物1、2体相手に戦えるくらいには動けるようになるので、それまではここで少し休憩だ。
「さて、ドロップ品は...」
鑑定スキルを創って発動しながら、ドロップ品の近くまで歩いていく。
落ちているのは、魔石と、何か肉のようなもの...
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ケルベロスの肝
地獄の番犬から得られる素材
極めて高い生命力と魔力を内包しており、伝説の霊薬、エリクサーの素材となる。
単体では効力を発揮しない。
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(おお?)
ドロップ品は、まさかのエリクサーの素材だった。
ケルベロスの肝...たしかに、エリクサーの素材の中に『■■■■■の肝』というものがあった。
あれは、このケルベロスの素材だったのか。
(でも...なんかイメージと違うけどな)
エリクサーは寿命をも延ばす薬だ。
だがケルベロスは地獄の番犬だし、毒や腐食を持ってるし、どっちかと言えば寿命が削られそうな気もする...。
(まあ、ダンジョンのアイテムに疑問を持っても仕方ない)
それを言えば、白蛇の鱗や太古の骨もなんでエリクサーの素材なんだって話になってしまう。そういうもの、と思っておくしかないだろう。
:また肉か!?
:肉と言うより内臓?
:レバーっぽく見えるな
「いや、食用ではないみたいだな。調合素材らしい」
コメントが、また肉かと騒いでいたので一応訂正する。
:レバーがなんの調合素材になるんだよ
:そのまま食っちまえ
:そのまま食うな。焼いて食え
「食べないぞ」
それだけ言って、壁際まで行って座り込む。
過剰駆動の反動状態は、創れるスキル数も減って効力も弱まる。なのでスキルを『気配感知』と『高速回復』の二つだけにして、ひとまず装備の手入れをする。盾が結構ダメージを負ったからな
昔は反動状態ではスキルを全く創れなかったので、これでも反動は大分マシになってるほうだ。だからと言って、気安く使いたくはないが。
そして装備に修復のオーブを使って直した後は、少しだけ目を瞑って休むことにした。
:休憩か
:結局なんの調合素材なの?
:深層のアイテム、用途不明なの多いよな
:ちょっとは教えてくれー
:主は深層の様子とか攻略法見せるだけで、アイテムとかはあんま教えない方針だからな
:知りたきゃ深層まで来い。って何度も言ってるもんな
ドローンのかすかな起動音だけ聞こえる。
室内で暗闇というのは、休むには悪くない環境なのかもしれない。一応気配感知は創っているが、ボス部屋に魔物は滅多に来ないからな。割と安心して休むことができる。
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30分後
ほんの少し仮眠のような形で休んでから、立ち上がって体を動かす。
「...よし」
少し筋肉痛のような痛みはあるが、吐き気や眩暈はおさまっている。
創れるスキルも万全ではないが、それでも6個くらいは創れるようになっている。
これなら、少し戦って帰るくらいは問題ない。
:おはよう!
:大丈夫?
:無理だったら帰っていいぞ!
:帰ったらまたボス戦しなきゃなんだよなあ。次の転移石は確保しときたいところ
「なんとか大丈夫だ。転移石確保するための休憩だからな。このままちょっとだけ次の階層に行くよ」
:新階層だーーーーー
:さらば暗闇階層
:この階層、最初はすごいと思ったけど段々飽きてきたしな
:大体どの階層も後半は飽きてくるもんだから...
まあ暗闇階層は、前半がずっと同じ構造だったから特に飽きやすかったんだろう。
攻略する側としては同じ方が楽ではあるけどな。
次の階層は、どんなところだろう。森か、洞窟か、荒野か...
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ダンジョン111階層
「さむっ!」
魔法陣を使って転移してきて、開口一番のセリフがこれだった。
白銀の景色。冷たい風。足首まである白い粉...いや、雪。
:雪景色だあああああ
:真っ白!!!!
:トンネルを抜けると、そこは雪国であった
111階層は、雪が積もっていて冷気が漂う階層になっていた。
白い息が出て、自然と歯がカチカチとなる。
普通にめちゃくちゃ寒い...。
(い、一旦『寒さ軽減』あたりを創っておこう...)
急いで創造スキルで寒さ対策のスキルを創り、場を凌ぐ。
そして落ち着いたところで辺りを見回してみる。
(見晴らしはいい。遠くの方で動いているものが見えるけど、あれがこの階層の魔物か。こんだけ離れていても視認できるなら、不意打ちとかの心配はなさそう)
周囲を確認したあとは、雪の上を少し歩いてみる。
(移動は...しにくい。素早い動きは難しいか。単発で跳んだりとかはできるけど、連続的な動きは制限がかかるな)
雪は足首ほどまで積もっているので、普通に動くと足が取られてしまう。いつも通り素早く動くなら、雪があっても動けるようなスキルを創る必要がありそうだ。
(となると、結構厄介だな。寒さ対策のスキルと、雪上移動のスキル。それに、もしもこの階層も罠が続くんだったら、罠感知のスキルも必要になる。...環境対策だけで3つは枠が必要になるか?)
寒さに関しては着こめばなんとかなるだろうが、それも動きにくさの原因となってしまう。スキル枠がどうしても足りなくなったら着こむのも選択肢だが、できれば動きやすさ重視で行きたい。
...ちょっと対策が大変な階層だな。




