83 リベンジ110階層
6000文字くらいありますが、ぶっちゃけ最後の一行見るだけでも話はわかると思います。
ダンジョン1階層
1階層へと戻ってきた俺は、大きく深呼吸してその場に座り込む。
:お疲れ様
:よく生きて帰ってきた!
:これでギミックは把握できたね
「そうだな。魔物が出てきたの、何分くらいだった?できれば4つめの灯り...魔物が8体出てくるまでで、決着は着けておきたい」
水分補給をしながら、次回のための対策を考える。
やってみた感じ、4つ目の灯りで魔物が8体出てくるタイミング、あそこまででボスは倒しておきたいという思いだ。
さすがに魔物が8体出てくると、ボスまで手はほとんど回らない。過剰駆動状態なら素早く魔物を倒してボスと向き合えるかもしれないが、あまり安定はしなさそうだ。
:どんくらいだっけ
:最初のあかり着くまでは長かった気がする
:2つ目以降は1つ目より早かったよね
:最初の点灯、約11分。それ以降、約6分ずつ
:情報ナイスー
:そんくらいだった気はするね
「11分、そこから6分ずつか...」
6分。通常魔物とボスを両方相手にするには、ちょっと短い時間だ。
やはりボスを相手できるのは、魔物が4体出てくるところまでだろう。
いや、6分だとしたら、4体相手でも少しきついかもしれない。魔物を4体倒してボスと戦うのに、6分は少し物足りない。
となると、できれば3つ目の灯りがつくまでに決着はつけたい。
最初の11分で1つ目、そこから6分で2つ目、さらに6分で3つ目だから...。
「23分くらいか」
開始から約23分で、3つ目の灯りがついて魔物が4体投入される、はずだ。そこをリミットと考えたい。
:23分っていうと、3つめの光が出るまで?
:3つめで、魔物4体出てきたっけ?
:たしかに、ソロだと魔物4体+ボスはきつそう
:チームでも魔物4体とボスはきついぞ
長いような、短いような時間。今回のように相手の出方を見ながら戦うなら、時間は足りなくなるだろう。
だが過剰駆動を使って一気に押し切るなら、充分すぎる時間だと思う。
「全力を出せば、その23分以内に倒せるとは思う。未知の行動をしてこなかったらな」
ボスは、追い詰められると行動パターンが変わったり見た目が変わったりするやつがいる。ケルベロスがそういったボスならまた話は違ってくるが、現状のまま変わらないのであれば、23分での討伐はできるはずだ。
:深層の魔物は変な奴多そうだもんな
:こればっかりはやってみないとわからない
:鑑定持ちですが、画面越しの鑑定ではそういった情報は出てきませんでした
:画面越しの鑑定は精度落ちるからなあ
「まあ、未知のパターンになったらまた帰ってきたらいい。死ななければ何度でも挑戦できるんだから」
:それがいい
:配信映え狙って、無理に突破する必要ないぞ
:主は配信映えとか気にしたことなさそう
:帰還アイテムさまさまだね
コメントの言う通り、帰還の宝玉が出てくるのはありがたい。これのおかげで、挑戦するのが少し気軽になった。
さすがに今日はもう挑まないが、明日か明後日にまた挑んでみようと思う。おそらく次回か、その次には突破できる予想だ。
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後日
ダンジョン110階層
未来視は今日もハズレだった。まあそれは仕方ないので、いつも通り1階層で軽く剣術の練習をしてから110階層に転移し、再びボス部屋の前に到着。
今回は、初っ端から全力で行くつもり...なのだが、ちょっと憂鬱な部分がある。それが...
(暗視スキルは必須だから、過剰駆動と併用しなきゃなんだよな...)
今の俺は、創造スキルで創るスキルを過剰駆動だけに絞れば、ほぼ反動なしで使用することができる。
だが、過剰駆動の他にもスキルを創ってしまうと、普通に以前のような反動が襲ってくる。
そして、この階層は真っ暗なので暗視スキルを外すことはできない。
なので必然的に過剰駆動と併用...つまり、使用後の反動に襲われるのは確定だ。
(仕方ないとはいえ、あの反動きついんだよな。まあ、なんのリスクもなしに突破しようってのも甘い話か)
過剰駆動を使わずに、じっくり日数をかけて攻略というのもできなくはない。
だが今は、できるだけ早く攻略を進めたいタイミングだ。そのために、多少のリスクは仕方ないだろう。リスクって言っても、死ぬわけじゃないしな。
「よし、行くか」
覚悟を決めてボス部屋へと一歩踏み出す。
:きたー!
:再戦!
:今度はどう戦う!?
ゆっくりとこちらに歩み寄ってくるケルベロス。
それを確認して、俺は過剰駆動を発動させる。
ゴウッ!と、あふれ出る力。
体が熱くなるのを感じながら、俺はさらにスキルを創造していく。
(どうせ反動が来るなら...思い切りやってやる)
創るのは暗視スキルだけではない。
耐性系、硬化、高速思考に反射神経強化、幻影。
さらに身体強化、剣技強化、剣技発動短縮。
過剰駆動に加えて使い慣れたスキルも創造し、一気に勝負を仕掛ける。
過剰駆動を発動した俺を見て、ケルベロスは一気に警戒したような姿勢を取る。そして少し屈みこみ、脚に力を入れた。
(いきなり獄走だな)
そして、消えたと錯覚するほどの猛スピードで俺に突進してきた。
しかし、そんな見え見えの攻撃は当然当たらない。
横に躱し俺はケルベロスを斬りつけようとする...が、ケルベロスは横側の頭で俺に噛みつきをしてきた。
(やっぱ相手の反応も早いな)
攻撃を中止し、その噛みつきを避ける。『横に避けて攻撃』されることを想定されているのか、横からの攻撃への反応が早い。やはり狙い目は、後ろだろう。
少し距離を取った俺を見て、ケルベロスは脚を大きく振り上げた。これは...震脚だな。
だが、ケルベロスが地面を踏みつける瞬間に、俺はジャンプして宙に浮いた。
(前回、空を飛ぶ魔鬼は震脚が効いてなかった。つまり、浮いていれば震脚は回避できる)
鳴り響く轟音。だが宙に浮いた俺は、その振動をくらうことなく無傷で地面に着地した。
そしてケルベロスは、震脚で大きく踏み込んだ直後、ほんの少しだけ動きが止まる。
本来なら相手も震脚で動きが止まっているので問題ないのだろうが、震脚が回避できるのならば、その一瞬の硬直の隙は大きい。
止まったケルベロスを見て、俺は走り出した。
正面から突撃する俺...は、幻影だ。本体の俺はケルベロスの後ろへ回り込むように移動している。
正面から迫りくる俺に噛みつくケルベロス。だが手ごたえ...噛みごたえがないのに気づいて、素早く後ろへ旋回しようとする。
さすがに三つの首があるだけあって、回り込む本体の俺も見えていたらしい。だが、正面から迫る幻影も無視できなかったので、対応が遅れたと言ったところか。
後ろを向こうとするケルベロスだが、さすがに間に合わない。それがわかったのか、振り向くのは中止して後ろ脚で蹴りをしかけてくる。
高速思考と反射神経強化でそれを避けた俺は、そのままその脚を掴んだ。
「ふんっ!」
そしてケルベロスを、投げ飛ばす。
:ぶんなげたあああ!
:マジかよ!
:豪快すぎる!
ズズン!と鈍い音がして、ケルベロスが地を転がる。
そして瞬時にケルベロスまで近づいた俺は、極鋭刃をタメて、放つ。
その一撃はケルベロスの硬い体を切り裂き、大きく傷をつけた。
ケルベロスが起き上がる前に、さらにもう一度剣で斬りつける。さすがに極鋭刃をタメる時間はないので、瞬迅斬で素早く斬りつける。
斬った直後、ケルベロスは至近距離から獄魔弾を放ってきた。さすがに避けきれないので盾で防ぐが、その盾からジュウ...と嫌な音がした。
毒、腐食による盾の消耗。あまり何度も食らいたくないと思いながら、瞬迅斬で斬り続ける。
ケルベロスは起き上がって今度は噛みつきをしてくるが、それをかわし、喉を斬りつける。さすがに切断はできないが、喉に少し傷がついたケルベロスは、鬱陶しそうに唸り声を上げた。
そして一つの頭では敵わないと思ったのか、俺を正面に捉えて三つの頭で攻撃を仕掛けてこようとする。
さすがに三つの頭で同時に攻撃されるとしんどいので、俺は旋回してケルベロスの斜め後ろあたりをキープしながら、ひたすら斬りつけていく。
:おお、パターン入ったか?
:ひたすらグルグルしながら斬りつけてて草
:こう見ると余裕じゃね?
小回りなら俺に分がある。ケルベロスは右回り、左回りと方向を変えて俺を捉えようとするが、俺もそれに合わせて動きを変えて、後ろを取り続ける。
この位置なら獄魔弾も当たらないし、後ろ蹴りも、してくるのがわかっていれば避けられる。
脚を大きく振り上げる動作をするケルベロス。震脚も、跳べば避けることができるのでむしろボーナス行動だ。
脚を踏みならすのと同時にジャンプして、そのまま極鋭刃をタメる。そして硬直したケルベロスに向かって、二度目の極鋭刃をくらわせる。
「グガアアアアア!」
再び大きな傷がつき、叫びをあげるケルベロス。
そして少し屈んだかと思うと、あらぬ方向に獄走をして走り出した。
(距離を取ったか)
突進攻撃ではなく、距離を取るための獄走。
俺は少し感心しながらも、逃がすまいとケルベロスの方へと走り出す。
壁際まで行ったケルベロスは、こちらを振り返りながら獄魔弾を複数放ってくる。
とりあえず放っただけと言わんばかりの獄魔弾だが、数が多いのでさすがにいくつかは当たりそうだ。できるだけ速度はゆるめずに避けながら近づいて、避けきれないものは盾で防いでいく。
そして獄魔弾を対処してる中、ケルベロスが再び脚を振り上げるのが見えた。
また震脚か。懲りないな。
ケルベロスが地面を踏む瞬間にジャンプ...したのだが。
「は?」
轟音が、聞こえてこない。
ケルベロスは地面を踏む瞬間に力を緩めて、震脚をキャンセルしていた。
そして屈みこみ、四足に力を込めている。
:ちょっと待てい!
:え、フェイント?
:やばくないか
そして空中で身動きが取れない俺に、獄走での突進が襲いかかってきた。
(空中歩行で回避...いや、間に合わない。ここは受け流すしかない)
獄走のスピードを今から躱すのは無理だ。俺は咄嗟に盾を構えて、シールドバッシュの用意をする。
「ガハッ...!」
だが、空中という不安定な姿勢に加えて、目にも止まらぬ速度での突進。シールドバッシュが成功するわけもなく、俺はそのまま突進を受けて大きく吹き飛んだ。
(盾を構えていたと言っても、ほぼ直撃...。大技くらったのは久しぶりだな...)
硬化スキルを創っていたとは言え、ダメージは大きい。血の味を感じながらも、急いでポーションを取り出して口に含む。
その直後、飛んでくる獄魔弾。俺はポーションを飲みながら、左右に跳んでそれをかわす。
:生きてた!
:意外と平気そう?
:いやいや、絶対大ダメージだって
:レイだから動けてるだけで、普通なら全身骨折してるんじゃね?
フェイントは予想外だったな。『ボスは、こちらが同じ行動をしていれば対処してくる』というのはわかっていたが、こんな方法で対処してくるとは。
動き回りながら、突進を受けた際に手放してしまった剣を拾い、ポーションが効いてくるまで少し待つ。
そして全身の痛みが少し和らいできたところで、再びケルベロスに近づいていく。
だがそこで、脚を振り上げるケルベロス。
脚が着く直前に俺はジャンプするが、またもや振動は起こらなかった。
:またフェイントだあああああ!
:二発目食らって大丈夫か!?
:撤退してもいいぞ!
空中にいる俺に向かって、再び四足に力を込めるケルベロス。さきほどと同じく獄走が襲ってくるが...
「対処するのはこっちも同じだ」
俺はケルベロスが獄走を使うと同時に、『空中歩行』でさらに上へと跳んだ。
ポーションで回復している間に、俺は幻影を消して空中歩行を創っていた。
来るとわかっていれば、いくらでも対処できる。俺のスキルは、そういうものだ。
そのまま空中歩行で軌道を変えた俺は、ケルベロスの上へ乗った。ケルベロスは何が起こったのか理解していないのか、周りを見回している。
そして三つ首のうちの1つに、最大威力の極鋭刃を叩き込む。
「ガアアアア!!」
叫び声をあげるケルベロス。切断までは行かなかったが、首に大きな切れ込みは入った。
大きく暴れまわり、さすがに振り落とされそうになったので背から飛び降りる。
そしてそのタイミングで、カチッと小さな音がした。
(ひとつめか...)
ほんのわずかに明るくなる部屋。入口に、魔犬が一匹現れる。
ケルベロスが暴れている間に、俺は瞬時に部屋の入り口までいき、魔犬を斬りつける。
一度斬りつけ、反撃の魔法を避け、もう一度斬りつける。これで魔犬は粒子化していった。
:倒すのはっや
:道中はもう少し時間かかってたよな?
:本気モードだもんね。道中とは一味も二味も違うよ
過剰駆動中なら、ほんの10秒足らずで通常魔物は倒せるな。
暴れまわるケルベロスへと向きなおり、飛んでくる獄魔弾を避けながら後ろへと回り込んでいく。
だが後ろへ回り込む直前に、ケルベロスは獄走を使って正面へ突進し、距離を取って来た。
:回り込みも対処してきたかーーー
:正面突破しかない?
:逃げ回られると厄介だぞ
後ろを取ろうとすると、距離を取られる...。これを繰り返して時間を消費してると、タイムリミットになってしまうな。
なら正面突破...いや、横側突破にしよう。
見たところ、極鋭刃をくらわせた首はほとんど機能停止しているようだ。あの方向からなら、近づいて攻撃できるはず。
こちらを向いたケルベロスに、俺は正面から突撃する。
「ガアア!」
ケルベロスも受けて立つように、大きな咆哮を上げてきた。
そして真正面まで来たところで、噛みつきが襲い掛かる。
だが、噛みついて来るのは二つの頭だけ。やはり三つめの頭は動いていない。
二つの噛みつきなら、対処できる。その噛みつきを避けて、俺は動いていない首側に行き、剣で斬りつける。
「ガア!?」
俺の狙いがわかったのか、ケルベロスは再び屈みこむ動作をしてきた。
獄走での距離稼ぎ。だが、させない。
「対処するのは、こっちも同じだっての...!」
ケルベロスが駆け出す前に、俺が駆け出す。
そして横から、タックルをぶちかました。
衝撃を受けて、獄走がキャンセルされてふらつくケルベロス。
その隙に、俺は極鋭刃のタメの動作に入った。
ケルベロスはふらつきながら横の頭で噛んでこようとするが、その頭は斬りつけられて動かないものだ。
こちらを向くことができずに、空をガチガチと噛んでいる。
そしてケルベロスが体ごとこちらを向くのと同時に、俺は極鋭刃を放った。
その極鋭刃は、ケルベロスの胸元を正面から斬りつけ。
「ガアアアアア...!!!」
ケルベロスは叫び声をあげて倒れこみ、粒子化していった。




