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創造スキルは万能です~ソロでダンジョン深層まで攻略していた俺、配信に映ってバズってしまう~  作者: ターシ


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82/89

82 ダンジョン110階層戦


───────────────────────

 獄魔弾:強力な魔力の弾を発射する。種族などによって追加の特性が発生する

 震脚:踏みつけによって周囲に衝撃を与える

 獄走:短時間だけ爆発的に加速する

───────────────────────


 ケルベロスの持つ3つのスキルの詳細を確認してから、俺はケルベロスに意識を向ける。

 まずは相手の出方を伺うために、こちらから派手に動くことはしない。


「グルル...」


 ケルベロスは3つの頭からうなり声を上げながら、ゆっくりと近づいてくる。

 いや、動き自体はゆっくりに見えるが、実際はそうでもない。


 ケルベロスは巨体なため、その歩幅も大きい。

 動作がゆっくりだとしても、意外とすぐに距離は縮まっている。


「...」


 ジュウ...とした音が聞こえてきた。

 相手の足元を見てみると、ポタ、ポタ、と、口から唾液が垂れ落ちている。

 その唾液が地面に落ちるたびに、地面が焼けたような音を立てていた。


(...毒や腐食、か。噛みつき攻撃はあまり受けたくないな)


 耐性スキルを創っているので、俺自身はある程度大丈夫だと思う。

 だが装備にはそれらの耐性がないので、攻撃を受けてしまうと通常よりも早く破損が進んでしまうだろう。


「ガアアア!」


 動かない俺に痺れを切らしたのか、ケルベロスは歩きから走りに変えて、俺に突撃してきた。


 直線的な突進。俺はそれを横に跳んでかわした。

 三つの頭のうち、横についている頭が、避けた俺に噛みついて来ようとする。

 だが当然その動きは予想できていたので、噛みつきが届かない距離へと俺は避けている。


 多頭の魔物は、80~90階層で何度か相手している。なので多少は相手の動きを予測できる。


(正面からだと、手数の差は相手に分がある。だから横か、上か、できれば後ろを取って攻撃したいな。もしくは瞬迅斬で一瞬で切ってから離脱をする、ヒット&アウェイでいくか...。)


 動きまわってケルベロスの突進、噛みつきを躱しながら、俺はそう考える。


 どうやらケルベロスは小回りが利かないらしく、動きはほとんど直線的だ。

 だが3つの頭が左右を広くカバーしているので、『横によけて斬りつける』という単純な攻撃ではダメそう。


 と思っていたら、ケルベロスの動きが止まった。そして口元に魔力が集まる。


(飛ばしてくる...!)


 口元から放たれる、魔力の弾。それを避けたところで、後ろからジュウ...という音がした。

 チラっとそちらを見てみると、魔力の弾...おそらくケルベロスのスキルである『獄魔弾』が当たった場所が溶けていた。


(追加の特性があるって書いてあったな。これは、毒や腐食が追加されてるってことか...。)


 少々厄介だ。これもまた、受けて止めるならば装備の破損を覚悟する必要がありそうか。


「ガアアアア!」


 ケルベロスに目を向けると、前脚を一本、高く振りかざしていた。

 そしてその脚で、勢いよく地面を踏みつける。


 途端に巻き起こる衝撃。地面が揺れ、地震が起こったように視界が揺れる。


(震脚か...!)


 揺れてバランスが崩れるだけではない。

 地面からの衝撃が体の内に入ってくるようだ。内臓が揺れて、頭がクラクラする。


 そして揺れる視界の中、ケルベロスが身をかがめて四足に力を込めているのが見えた。


(あれは...まずいかも!)


 直感でやばいと思った俺は、とにかく上へ飛んだ。

 その瞬間、ケルベロスの体が一気に加速し、さっきまで俺のいた場所を通過していった。


 さきほどまでとはケタ違いの速さだ。あれが獄走か。

 あの質量で、あの速さでぶつかられたら、通常状態だと防ぐのは難しいだろう。多分吹き飛ばされる。

 正面から防ぐなら過剰駆動か、パワー系のスキルが複数必要そうか。


 着地した俺は、ケルベロスへと向き直る。

 ケルベロスもまた、唸りを上げながら俺の方を見ていた。


 これで相手のスキルはすべて見ることができた。今のところは、ヤマタノオロチやブルーオーガの戦略を組み合わせれば、なんとかなりそうな気はする。


 再び向かってくるケルベロス。今度はスキルを使わずに、そのまま走ってきている。


 対して俺は、横に向かって走り出した。

 そしてそのまま、ケルベロスの周りをグルグルと回り続ける。


 ケルベロスは、小回りが利かない。なのでこうやって回り続ければ、相手の旋回が間に合わなくなり、裏を取ることができる。


 その狙い通り、俺は少し回り続けるだけで相手の裏を取ることができ、そのまま剣で斬りつけた。

 硬い...が、通る。

 毛も肉も硬いが、弾かれるほどではない。


 数度斬りつけたところでケルベロスの後ろ蹴りが飛んできたので、それを盾で防ぐ。


(重い!)


 思った以上にその蹴りは重く、数メートル吹き飛ばされた。

 そして吹き飛んだ俺目掛けて、獄魔弾が飛んできる。


(これは避ける!)


 痺れる腕を無視してそれを避けた俺は、再びケルベロスの後ろへ回り、攻撃を仕掛ける。


:なんとかなってそう?

:すげえ早い突進とかあったけど、よく避けたな

:あの地ならしも、見てるだけじゃわかりにくいけど、実際はすごい揺れてそう

:でも、絶望感みたいなのはないな。普通に強敵って感じ


 震脚に対しては「姿勢維持」のスキルを創って対応し、大きな隙を見せない。

 時々魔法の遠距離攻撃もしつつ、着実にダメージを稼いでいく。


(階層主だけあって、たしかに強い。でも、無理な相手ではないな。)

 

 これなら、ある程度削ったところで過剰駆動を使って押し切れるんじゃないか。

 そう考えていたところで。


 異変が起きた。


「...ん?」


 カチっ、と。小さな音と共に、壁に小さな灯りが一つ灯った。


:あれ?

:なんだ、うっすらと

:明るくなった?


 壁についた小さな灯り。

 ほんのわずかな明るさだが、この暗闇の階層においてその明るさは嫌というほど目立つものだった。


 そして明かりがついてすぐに、気配が増えた。

 入り口に、いつの間にか魔犬が一体立っている。


「グルルル...」


 そして魔犬はうなり声を上げて、部屋の中へと入ってきた。


(...まさか)


:乱入!?

:ワンちゃんが入ってきた!

:ボスの間に通常魔物が入ってくるの珍しいな


 ボスの間付近には、魔物はあまり近寄ってこない。絶対というわけではないが、ボスとの戦闘中に他の魔物が入ってくることは稀だ。

 だがこれは...


(たまたま、じゃないな...)


 突然ついた小さな灯り。そしてその直後やってきた魔物。


 これは、20階層のボス狼のようなギミックだと考えていいだろう。

 20階層のボスは、ボス本体であるデカい狼の他に、子分である通常の狼が複数出てくる。


 この階層も、ボスであるケロべロスの他に、通常の魔物も加わってくる、ということだと思う。


(問題は数だ。まさか一体だけじゃないだろう。)


 一体なら大した脅威ではないが、まさか110階層まで来てそんなわけないだろう。

 20階層のボス狼も、時間とともに少しずつ子分の狼は追加されていく。この階層もそうだと考えたほうがいい。


「多分、20階層みたいなギミックだろうな。通常魔物を相手しつつ、ボスを倒すって感じかな。」


:げ、ボス狼みたいな感じか

:ソロの鬼門と言われる20階層

:一気にめんどくさくなってきたな

:となると、その一体だけじゃなさそう


 ケルベロスの攻撃をかわしながら、まずは通常の魔犬を倒していく。一体だけなので、処理はすぐに済んだ。

 そしてそのままケルベロスに傷をつけていったところで...


 再びカチッっという音がした。


 壁には、二つ目の明かりがついている。

 そしてその直後、増える反応。今度は二つ。


 一つは、入り口に魔犬。

 そしてもう一つは、頭上に魔鬼。


(...よく見たら、天井に穴があるな。)


 魔鬼が出てくるための穴が、この広間の天井にも開いてあった。

 そこから出てきた魔鬼が、羽を広げて空中を飛んでいる。


 二つ目の灯り、増えた魔物。

 これは...次はさらに増えるかもしれない。


「一体ずつの追加じゃなくて、どんどん数が増えていく方式か?」


:実質、タイムリミットありってこと?

:次は3体か、それとも4体か

:どうする?一旦帰る?

:本気出して一気に押し切れ!


 魔鬼から放たれる魔法を避けながら、少し考える。


 体感だが、ケルベロスの体力はまだ半分以上残っている。

 今から過剰駆動を使ったとして、突破できるかどうか...。


(多分、ボスを倒すだけならいけると思う。)


 だが、それにしたって倒すのは一瞬ではない。当たり前だが、過剰駆動を使っても倒すのに多少の時間はかかるし、それなりに傷も負うだろう。

 そして倒しきった時に、魔物はどれくらい増えてる?その増えた魔物を倒すだけの余裕があるだろうか。


 ボスを倒した時点で次の階層への魔方陣が出たとしても、増えた魔物を倒さなければ、魔方陣は安全に使えない。魔方陣の起動も一瞬じゃないし。


(...不確定要素が多いな。)


 押し切れないことはないが、ちょっとリスクが大きすぎる。

 わざわざ無理して今回の突破を狙う必要もないだろう。


「予定変更。今回は情報収集してから撤退する」


 帰還の宝玉をいつでも使えるように準備しながら、俺はそう口にする。


「魔物がどの時間でどのくらい増えていくか、どれだけ増えたら対処できなくなるか、今回はそういうのを確かめるよ」


:初見突破は狙わないか

:情報集めて攻略、がダンジョンの基本だもんな

:無理だけしないように!ちゃんと帰ってきてね!


 ケルベロスの攻撃に注意しながら、まずは出現した通常魔物を倒していく。

 震脚で少し動きを止められたところに、空を飛んでいる魔鬼が槍を持って降下してくる。


(そうか、こいつは空を飛んでるから、震脚の地ならしが効かないのか)


 その槍を盾で弾き、がら空きになった胴体を剣で斬りつける。

 魔犬の方を見てみると、こちらは震脚の影響を受けているらしく、フラフラとしている。

 今のうちに魔犬も倒しておこう...と思っていたところで、ケルベロスが突進の構えを取る。


「危なっ」


 咄嗟に横に跳んだところを、ケルベロスが獄走で駆け抜ける。

 その突進はフラフラしていた魔犬にあたり、魔犬は大きく吹き飛んで壁に激突し、粒子化していった。


:あ

:ワンちゃんがワンちゃんにやられた!

:フレンドリーファイアするんかい


 ...まあ今のは、震脚でふらついていて魔犬が避けれなかっただけで、別にケルベロスも狙ったわけじゃないだろう。多分。


 そんな感じで攻撃を防いでいると、またカチっという音とともに、壁に灯りがついた。

 次は、魔犬2体、魔鬼2体の、計4体。


:2体ずつか...

:そろそろきつそう

:チームならなんとかなるけど、ソロだと手が回らなさそうね


 ボスの攻撃を避けながら、通常魔物を4体相手というのは、確かに少々大変だ。

 とはいえ、できないことはない。幻影スキルを創って俺の幻影で相手を惑わして、瞬迅斬や極鋭刃、遠距離魔法で一体ずつ仕留めていく。


 そして4体を仕留めてほんの少ししてから、またカチっという音がする。4つめの灯り。これで、暗視を使わずともうっすらとなら部屋は見えるくらいに明るくなってきた。


 今度は、魔犬と魔鬼4体ずつ。計8体。


:うわあ

:ここまでくるとチームでもきつそう

:というか、そもそも110階層は何人で挑めるんだ

:人数によってはさっきの4体の時点で無理そう

:一人だともう無理じゃね?


 コメントの言う通り、ここまで来ると通常の魔物を相手にするだけで手いっぱいだ。とてもボスに攻撃をできるような状況じゃない。

 というか、この8体の魔物を倒しきれるかも怪しい。


 それでも一応耐えれるところまで耐えようと思い、高速思考や反射神経強化を使い、相手の攻撃を防ぎ、避け、数を少し減らしていく。


 だが...


 この8体を倒しきる前に次の...いや、最後の灯りが灯った。


 カチっという音共に、部屋全体が明るくなる。もう暗視なしでも、部屋全体が見回せる明るさだ。


 そして聞こえてくる足音。感じる気配。


 天井の穴からは魔鬼の大群が出てきて、入り口からは魔犬の足音が大量に聞こえてくる。


「終わりだな...」


 どう考えても、対処できる量ではない。ここがタイムリミットだろう。


 ケルベロスが大きく吠えて、突撃してくる。

 魔鬼は一斉に羽ばたき、魔犬の大群が部屋に入ってくる。


 それと同時に、俺は帰還の宝玉を使用してダンジョン1階層へと転移した。


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