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創造スキルは万能です~ソロでダンジョン深層まで攻略していた俺、配信に映ってバズってしまう~  作者: ターシ


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76 視たくなかったかもしれない未来

少し長いかもです


「地上に魔物が...」


 鈴木さんの言葉を繰り返し、頭の中で咀嚼する。


「そうです。ご存じだとは思いますが、魔物はダンジョンから出てくることはありません。しかし私が視えた未来では、そのルールが破られていたのです。」

「厳密には、『出てこない』ではなく『出てこれない』と言われています。」


 佐藤さんが補足するように付け加える。


「魔物を地上に出そうとする動きは、これまで何度もありました。魔物を魔法陣の上にのせて起動させたり、ですね。しかし、どんな方法を使っても魔物を外に出すことはできませんでした。このことから、魔物はダンジョンから出てこれない、という結論になっています。」

「ですが、絶対とは言えません。こんな未来が見えてしまったので、何かしらの方法があるのでしょう。お聞きしたいことというのは、深層に潜っているあなたなら、その方法に心当たりや手がかりをご存じでないか、ということです。」


 魔物が地上に出てくる手がかりや心当たり...。


 頭に浮かんでくるのは、補佐システムとの会話。たしか、『異世界からの干渉を防衛できなければ、地球上に魔物があふれることも予想される』というようなことを言っていた。


「...心当たりが全くないわけではありません。」


 俺のその言葉に、二人が驚いたような表情を浮かべた。


「本当ですか?」

「一体どんな方法で?」

「...100階層を超えると、とある情報が手に入るんです。その中に、魔物が地上に出てくるかもしれない情報、というのがありました。」


 さて、ここからどこまで話すかが問題だ。

 すべてを話してしまうと、今後ダンジョン省からの干渉が増えてくる可能性がある。

 ダンジョン省はこれまでほとんど干渉してこなかったが、さすがに地上に魔物が出てくるかもしれないとなると、不干渉のままではいられないだろう。


 何日も何週間も何か月もかけて、話し合いで呼び出されたりするかもしれない。

 そしてすべてを話してしまうと、最悪の場合『異世界からの干渉を防ぐためにダンジョンで生活してくれ』なんてこともあり得るかも...。


 さすがにそれはごめんだ。なので、上手いことぼかして伝えてみよう。


「でも、それを対処できるのは100階層を超えている者だけなんです。」

「...一体どういう条件なんですか?」

「言葉にするのは難しいんですが、例えるなら『魔物を外に連れ出す変異体』みたいなものでしょうか。それが101階層以降に出てきます。」

「変異体...!なるほど、変異体ならルールを破ってきても不思議ではないですね。」

「例えなので、厳密には少し違うんですけどね。でも認識としてはそう違いません。」


 一番伝わりやすいのは、この表現だろう。いきなり異世界とか管理者とかサイドとか言っても、信じてもらえないかもしれないし。


「ご存じの通り、変異体はいつ出てくるかわかりません。その対処のために、俺がずっと101階層に張り付くのは現実的じゃないでしょう。その未来は、いつのものかわからないんですよね?」

「ええ、残念ながら具体的な時期まではわかりません。しかし視えた光景では、あなたの装備は今と違うものでした。なので、直近ではないと思います。」


 なるほど、それは大事な情報だ。装備の更新と言うのは、そう頻繁にするものではない。10階層以上装備を変えないなんてこともあるくらいだ。

 シンプルに考えるなら、その未来は少なくとも俺が110階層以降に行ったあと、ってことだろうか。


「どんな装備だったか覚えていますか?」

「剣と盾は銀色、防具は赤と黒の薄い鎧のようなものでしたね。」

「わかりました。その装備を見つけたら、近々その変異体があらわれるかもしれない、ということですね。」

「そうなります。視えた光景ではあなたが地上で戦っていたので、変異体に負けたわけではなく単純にタイミングが合わなかった、と考えるべきでしょうね。」


 そうだろうな。つまり、異世界からの干渉が来た時、俺はダンジョンの中にいなかったってことだろう。


「戦っていた魔物は?」

「視えたのは、60階層主のカマキリです。しかし、その周りにもいくつか影が視えました。おそらく他にも何匹かいたのだと思います。」


 カマキリか...。魔物が地上に出てくる、といっても、それがどんな魔物かまでは言ってなかったな。


 1階層のゴブリンやスライムならば余裕なのだが、60階層主が地上に出てくるとなると...まず間違いなくパニックになるだろう。一般人は当然太刀打ちできないし、探索者であっても60階層主と戦えるやつは少ない。


 それに、他にも魔物はいるっぽい。もしその未来が現実に起こってしまえば、死傷者は多数出るだろうし、建物だって壊されてしまうだろうな。


「視えた範囲で変異体と思しき魔物は...、魔物はいなかった...ですね。」


 鈴木さんが妙なところで言葉を詰まらせた。


「どうしました?」

「いえ、それらしき魔物はいなかったのですが、気になる存在はいまして...」

「...どんなやつですか?」


 魔物ではないが気になる存在?


「あなたの知り合いに、長い黒髪で肌が恐ろしく白い女性、というのはいますか?」

「え?」


 唐突な鈴木さんの質問に、思わず疑問の声を上げてしまった。


「視えた未来では、その女性があなたの隣にいたのです。なんというか、異様な存在でした。人間であるはずなのですが、人間離れしているような...。そんな知り合いはいますか?」

「いえ、いませんね。」


 長い黒髪、というだけならば、三羽だろうか。探索者だし、魔物との戦いで隣にいてもおかしくない。

 だが、恐ろしく白い肌、となると違うな。知り合いにそんなやつはいない。


「そうですか...。そうなると、これから先知り合う相手ということでしょう。」

「装備と同じく、その女性と知り合ってから起きる未来ってことですね。」

「不確定要素は多いですが、おそらくは。」


 ...一体誰なんだろうな。考えてもわからないことではあるが、気になってしまう。


「お話を聞かせていただきありがとうございました。その情報というのは、100階層を超えた人間は全員知ることのできる情報なのでしょうか?」

「それはなんとも言えませんね。他に突破者が出てみないことには...」

「その情報は、一体どのようにして知ったのですか?石碑のようなものがあったのか、紙か何かを入手したのか。」

「すみませんが、詳しい方法は今は言えません。」

「そうですか...。まあ方法を知ったところで、我々に確かめるすべはありませんからね。」


 佐藤さんは、思ったよりもあっさり引き下がってくれた。もう少し「教えてくれ!」と粘られるかと思ったが...。

 佐藤さんが言った通り、確かめるすべがないのが原因だろうな。仮に石碑がある、と言ったとしても、『見せろ!配信に映せ!』と強要もできないだろうし。


「一つ言えるのは、100階層の突破者をできるだけ早く増やした方がいい、ということですね。さっきも言いましたが、俺一人でいつ現れるかわからない変異体に対処するのはちょっと無理があります。どうしても人手が必要です。」

「そうでしょうね。まさか『変異体があらわれるまでダンジョンで生活しろ』とは言えませんし...。それで疲弊して変異体にやられてしまうと、それこそ変異体を止める人がいなくなってしまいますからね。」


 よし、なんとか納得してくれたか。完璧に誤魔化せた、とは言えないかもしれないが、これで俺が拘束されたりすることはなさそうだ。


「できるだけ他のチームが100階層を超えられるようにサポートをしてあげてください。地球を守ると思って。」

「わかりました。スケールがでかくなってきましたが、さすがに魔物が地上に出てくるのは見逃せませんね。できる限りのことはします。」


 こうして、佐藤さんと鈴木さんとの会話は終了した。

 ...嫌な未来が視えたものだな。いつか侵略者が来るのは間違いないってことだ。


 なんだか探索をする気分でもなくなってしまったので、二人と別れた後はそのまま家に帰ることにした。


 家に帰って布団に寝転がり、考えてみる。


 情報はいくつか手に入った。


 直近ではないが、おそらくダンジョンは乗っ取られる。そして魔物が地上に出てくる。


 出てくる敵は60階層のカマキリは視えたが、他にもいる。

 

 俺の装備は今と違うもの。そして隣には長い黒髪の、恐ろしく肌が白い女性。


 この女性が謎だ。鈴木さんがわざわざ言ってくるということは、相当目立った存在なのだろう。

 一体誰なのか...。考えられるものとしては、まだ知らぬ探索者だろうか。だがそんな探索者いれば噂になっていそうなものだけどな。


「...そうだ。」


 そこまで考えたところで、一つ思いついた。


 俺も『未来視』を創造して使ってみればいいんじゃないか?


 今でこそ創造スキルはオリジナルのスキルなんかも創れるが、元々は既存のスキルやその派生しか創れなかった。

 逆に言えば、既存のスキルであるならば創造スキルで再現できるということだ。


(未来視を創造...できるな。)


 話を聞くだけより、実際に自分で使ったほうが情報は多く得られる。

 といってもこのスキル。いつの、どんな未来が視えるかはランダムらしい。それに、使えるのは一日二回まで。そのほかにも制限はいくつかある。


 ...なるほど、使い勝手はたしかに悪いな。それでも、未来の情報を得られるのは大きい。

 俺は創造した未来視を、自分自身に向けて使った。


(未来視発動...!)


 すると目の前に、半透明な映像が浮かび上がってきた。頭の中に映像が流れるのかと思ったが、こうして目の前に表示されるのか。

 ...多分、他の人には見えないんだろうな。自分だけに見える、半透明な未来映像だ。


(...なんだこの未来。)


 視えた未来は、俺がラーメンを食べている未来だった。


 にんにくを入れて、汁まで飲み干している。あ、ここ気になってたラーメン屋だ。なるほど、汁まで飲み干すほど美味いのか。これはいくべきだな。


(って違う。こんな未来はどうでもいいんだよ。)


 日常生活としては有益な情報だが、今求めているものとは全く違う。

 結局、ラーメンを食べて店を出たところで映像は終了してしまった。


(ハズレか...。当然だけど、日常生活の未来も含まれるのか)


 重要なイベントだけ映される、ということでもないらしい。


 視たい未来を引き当てるのは、相当な運が必要かもな。


(2回目、発動...!)


 あまり期待せずに、もう一度未来視を使用してみる。今度は大学の映像でも来るかな...と思ったところで...。


(...これは...!?)


 周囲に崩れた建物。

 血を流して膝をついている俺。


 そんな映像が映し出された。


(ここは...地上か?)


 建物が崩れていてわかりにくいが、ダンジョン内ではないように思える。もしかして、今度は当たりを引いたか?


 そう思ったところで、映像が動く。


 膝をついている俺の正面に、()()()()()

 俺はおそらく、こいつにやられて血を流している。


(魔物...じゃない?)


 それは、異形な存在だった。


 おおよそ生物とは思えないめちゃくちゃな輪郭をしていて、脚も腕も複数ある。いや、そもそも脚と腕と呼んでいいのかもわからない、歪な形のものが複数本伸びていた。


 当然だが、こんな魔物は見たことない。先の階層にいる魔物...?だとしても、気味が悪すぎる。魔物だとは思えない。


 その異形のバケモノを注視していたところで。


 バケモノが、顔を上げた。


 そこが顔かどうかは定かではない。だが直感的に、顔だと思った。


 そして


 ()()()()()()()()()


 ゾクッ!と、背筋に冷たいものが走る。


 なんだ、これは?

 こいつは正面で膝をついている俺を見ていない。その奥...今の俺を見ている。


 いや、もしかしてこの視点の位置に誰かいるのか?

 さっき言っていた白い女性、この視点はその女性のものかもしれない。


 バケモノはこちらを見ながら、口らしき部位を動かした。

 言葉なんて通じるはずがない。そもそも、未来視は音声が流れない。何かを喋っていても聞き取れない。

 だがそれでも、はっきりと聞こえた。



『見てるな?』



 そこで映像は終了した。


 気づけば俺は、全身から汗を流していた。


 短い映像だった。ほんの数十秒程度だったはずだ。

 だがその数十秒で、俺はこれ以上ないほどに精神が疲弊していた。


「なんだ...今のは...」


 あの生物はなんだ?というか、あれは生物なのか?


 戦える形をしているようにも見えなかった。だがあいつは間違いなく強い。


 魔物ではないだろう。あんな魔物がいてたまるか。

 となれば考えられるのは、異世界の生物。


「サイド...?」


 もしくは。


 あれは異世界の管理者、なのかもしれない。


 未来視は、絶対に訪れる未来ではない。あくまで未来の可能性の1つだ。


 だが、それでも。

 あんなのと戦う未来が、あるかもしれないのか...。


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