75 視えた未来
「あっ」
ダンジョン80階層
久しぶりに戦うブルーオーガ。他のチームの参考のためにこいつの行動パターンを色々見せていたのだが、最後の最後で避けた攻撃がドローンに当たってしまった。
:おっと?
:なんか視界揺れる
:ドローンに当たっちゃったか
ドローンの機体にヒビが入り、ふらふらと揺れながら飛行している。
この状態では、これ以上しっかりとした映像を撮るのは難しいだろう。
「しょうがないな。」
そうつぶやき、間合いを詰めて一気に倒しにかかる。
相手の剣をこちらの剣で弾き返し、拳を盾で防ぎ、腹に蹴りを食らわせる。
以前は力勝負は互角だったが、今はもう俺の方が力は上だ。
相手の攻撃を正面から弾いていき、蹴り、斬撃、盾での殴打を繰り返す。
そして隙ができたところで拘束魔法を使い、動きが止まったところで『極鋭刃』を使い首を斬り飛ばす。
それで決着はついた。首がなくなり力なく倒れていくブルーオーガを見て、俺は剣をしまいドローンへと向かう。
「まあこんな感じだ。最後は上手く映ってなかったかもしれないけど、これを参考にすれば突破の目途は立つんじゃないかな。」
:最後のは参考にならん
:なんで正面から押し切れるんだよ
:他のパーティは2人、3人がかりでようやく攻撃凌いでるのに...
「慣れだよ。俺も最初はボロボロにやられてたけど、何度か戦ってるうちに慣れてきたから。それに攻撃方法とかは大体全部見せたし、それで大分楽になるだろ。」
:それは参考になった
:そんな攻撃方法あったの!?ってやつもあったな
:初見だとやられてたかもしれない動きもあったな
「そういう動きをしてくる場合がある、ってわかってるだけで、対策も立てやすいだろ。というわけで、突破報告待ってるよ。」
今回の80階層戦は、ドローンが壊れた以外は問題なく終えることができた。
以前やっていた解説配信だが、ここ最近は自分のことばかりでなかなか解説まで手が回らなかった。
だが今回いいきっかけができたし、ここからまた解説配信をしていくかな。
でもその前に新しいドローンだ。ドローンがなきゃ配信ができないので、佐藤さんにお願いして新しいものをもらわないと。
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次の日
「こちらが新しいドローンです。」
昨日連絡したばかりだというのに、佐藤さんはもう新しいドローンを持ってきてくれた。仕事が早い。
仕事が早いのは助かるのだが、少し気になることがあった。
それは佐藤さんの隣にいる人物。
普段佐藤さんは、俺と会う時は一人で来る。それが今回は別の人と一緒に来ていた。
一緒に仕事をしていた帰りとかだろうか?
俺の視線に気づいたのか、その人が頭を下げて挨拶をしてきた。
「面と向かって話すのは初めてですね。鈴木と申します。」
「初めまして。レイという名で探索者をやっています。...面と向かっては初めて?」
その言い方に少し引っかかりを覚えた。面と向かわなければどこかで会ったことがある、というような言い方だ。
「鈴木は、あなたの身の回りを固める仕事を何度かしていたのですよ。」
疑問が顔に出ていたのか、佐藤さんがそう付け加えてくれた。
ダンジョン省は、俺に接触してくる人を未然に防いでくれている...らしい。未然に防いでくれているので俺がその場面に出くわすことはないから、具体的な内容とかは知らないんだけどな。
当然その仕事は複数人でやっているのだろう。鈴木さんは、そのうちの一人ということだ。
「そうなんですか。ありがとうございます。」
「いえ、仕事ですのでお気になさらず。それで今回ご一緒させてもらったのは、ちょっとお聞きしたいことがありまして...」
鈴木さんは、言いづらそうに視線を下げながらそう切り出した。
「聞きたいこと?」
「はい。ダンジョン省はあなたに必要以上に干渉しない、というスタンスを取っているので、本当は質問などもあまりよくないのですが...」
「それでもどうしても聞きたいらしいです。少しお時間よろしいですか?」
たしかにダンジョン省、というか佐藤さんが、これまでに深く接触してくることはなかった。深く話したのは、最初の時くらいだ。
そのスタンスを無視してでも、聞きたいことがあるのか。一体どんなことだろう?
「他ならぬダンジョン省ですからね。構いませんよ。これがその辺の記者とかだったら断ってましたけど。」
「ありがとうございます。ちょっと他には聞かれたくない話ですので、車まで来てもらってもよろしいでしょうか?」
ということで、佐藤さんたちの車の中にお邪魔する。
「申し訳ありませんが、これを使っていただけますか?」
そう言って佐藤さんが杖を渡してくる。
「これは?」
「防御魔法の一種が付与されています。端的に言えば、防音ですね。」
「...わかりました。」
そんなに内密の話なのだろうか?
一応鑑定で杖を見てみるが、言った通り防御魔法が付与されている。特に問題はなさそうなのでそのまま魔法を使い、杖を佐藤さんに返す。
「ありがとうございます。さて、ここからの話しですが...重ねて申し訳ないのですが、他言無用でお願いしたいのです。こちらから話を申し出た上なのですが...」
「内容によるとしか言えませんが...とりあえず、むやみやたらに吹聴はしませんよ。」
「お願いします。ではまず、鈴木のことを話しておきます。鈴木も実はダンジョンに潜ったことがあり、スキルを持っているのです。そのスキルが少々特殊でしてね。」
佐藤さんが、鈴木さんの紹介をし始める。
話の流れ的に、鈴木さんのスキルについてだろうか?
「鈴木のスキルは『未来視』でして。文字通り、未来を見ることができるのです。」
その言葉に、一瞬呼吸が止まってしまう。
未来視...そうか、未来視か。
それを聞くだけで、重要性がわかる。たしかに、言いふらしていい内容ではないだろう。
「とは言っても限定的というか、使い勝手は悪いんです。」
鈴木さんが話し出す。
「好きに見れるわけではないし、一日に見れる回数も決まっています。未来の映像も長時間続くわけではなく断片的ですし、しかもその未来がいつなのか具体的にはわからない、そもそも見た未来が絶対に来るというわけでもないんです。」
それだけ聞くと、未来視というよりは予測みたいなものなのか?『こういうことが起きるかもしれない』くらいなのかもしれない。
「実は今回の件も、あなたが80階層主と戦ってドローンを壊す、という未来が事前に見えていたのです。それがいつかはわからなかったのですが、前回の配信で『80階層主と戦う』と言っていたので、おそらく今回その事態が起きるのではないか。そう思ってドローンの準備をしていたのです。」
仕事が早いと思っていたが、そもそも予測できていたのか。
「ここまでの話で察しているかもしれませんが、私は未来視であなたを何度か見ています。あなたを守るためでもあるし、あなたはダンジョン界では超重要人物ですから。その点はご容赦ください。」
「大丈夫ですよ。でももし妙な場面が見えても、その辺は見なかったことにしてくださいね。」
一人でスキルの検証をしている場面が映ったりしたら、何をしているんだ?となってしまうだろう。説明が大変だし、そこは黙認しておいてほしい。
「当然です。ダンジョンに関すること、事件性のあること以外は話しませんよ。しかし言ってしまえば、今回はお話しなければならないような内容が見えてしまったんです。」
ここで本題か。
ドローンが壊れた程度ではわざわざ言ってこなかったので、それよりは大事なことなのだろう。
...宝箱を大量に手に入れたのが視えたか?あれはたしかに不自然だからな。宝箱が大量に手に入るなら、資源の確保として聞いておきたいだろう。
もしくは、エリクサーが視えた?だがエリクサーは見た目からでは判別できないはずだ。未来視がもし音声まで聞こえるならあり得るかもしれないが。
それか...管理者空間か?これが一番あり得そうだ。謎の空間で、謎の球体と話しているのが見えました。謎のケンタウロスみたいな生物と戦っているのが見えました。
そう言われてしまうと、誤魔化す方法は咄嗟に思いつかない。正直に話すか、心当たりがないとシラを切るしかないかもしれない。
「...どんな内容ですか?」
一瞬で様々な予想をしながら、慎重に鈴木さんに聞き返す。
だが鈴木さんの言葉は、そのどれもと違ったものだった。
「...ダンジョンではなく、この地上に魔物が出てきて、あなたがそれと戦っているという内容です。」




