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創造スキルは万能です~ソロでダンジョン深層まで攻略していた俺、配信に映ってバズってしまう~  作者: ターシ


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68 久々に本名で呼ばれた気がする


 エリクサーをたくさん集める、と意気込んだのはいいものの。


 時期は大晦日。世間の多くは休みに入るタイミングだ。

 大晦日といえど、ダンジョンはいつも通り開放されている。潜ろうと思えば潜れるわけだが...。


(まあ、年末年始くらいは実家に帰らないとな。)


 さすがにこの時期は実家に帰った方がいいだろう。

 うちの親はあまり口うるさく言ってこないタイプだが、それでも年に一度くらいは顔を見せに戻ってきなさいと言われている。


 異世界からの干渉の件もあるが、ずっとダンジョンに張り付くわけにもいかない。

 補佐システムによればしばらくは大丈夫らしいし、そもそも管理者でもない俺が考える案件でもない。この時期くらいは少し休んでもいいだろう。


 とは言え実家に帰ってからも、考えているのはダンジョンのことだ。


(目標だったエリクサーの作成はできた。量産を考えるなら、90階層、95階層、100階層を周回するのが一番だが...)


 実家の自分の部屋でくつろぎながら、これからのことを考える。


 エリクサーの素材は、その三つの階層から取れる。なので単純に考えれば、その三階層を繰り返し攻略していれば、俺の目的は達成できることになる。


(そう上手くは行かないだろうな。)


 だが、おそらくそれだけで終わることはないと思う。


 以前も考えたことだが、100階層のアシュファンは戦うたびに強くなるらしい。となると、いずれ周回で倒すことも難しくなってくるだろう。


 90階層のヤマタノオロチも、相変わらず強敵だ。レベル100になってからはまだ戦っていないとはいえ、それでも容易に倒せる相手ではない。

 87階層の隠し部屋に特攻武器があるらしいので、それを手に入れれば攻略は楽になるだろう。だがその部屋への入り方がわからないので、現状では適正以外の装備で戦う必要がある。つまり、依然として苦労するということだ。


 95階層の湖の中は、現状では最も楽だろう。隠密をしていれば、戦うことなく手に入れられる。

 とは言っても、前回はたまたま上手く行っただけという可能性もある。次回は見つかって戦闘になるかもしれないし、まだ安心・安全とは言えない。


 こう考えると三つとも安定して入手できるわけではないので、他の素材も手に入れられるようにはしておきたい。そのためには攻略を進める必要がある。


(入手に詰まってから先に進む、というのも手段ではあるんだけどな。)


 その攻略を進めるタイミングを、いつにするか。

 アシュファンが倒せなくなってから、とかでもいいんだが、逆にすぐに攻略に取り掛かっても問題はない。ぶっちゃけ、気分次第みたいなところはある。


 新階層は危険ではあるが、新鮮な探索で気分転換にもなる。

 同じ階層を周回しているとどうしても気のゆるみなどが出てしまうし、それを防ぐためにも時々攻略も挟むべきかな。


 ...結局のところ、予定はあまり変わらずだ。

 残りの96~99階層を探索して、そこからはエリクサーの素材の周回をしながら、時々階層更新もする。

 色々考えはしたが、やはりこの結論になったな。


「ハルくーん、ご飯よー」

「ああ、今行くー」


 考えがまとまったところで、ちょうど居間から親の呼ぶ声が聞こえてきたのでそちらに向かう。

 ...そういえば、本名のあだ名で呼ばれたのは久しぶりな気がするな。最近ずっとレイとか先輩とかって呼ばれてたし。


「ハルくん、大学はどう?」

「順調だよ。この調子だとちゃんと卒業できる。」

「それならよかった。バイトは、まだダンジョンに行ってるの?」


 居間で母と食事をしながら、そんな会話をする。

 母はダンジョンについてはあまり詳しくなく、『危ないけど資源が採れる場所』という、鉱山のようなイメージを持っているらしい。


「うん。卒業してからの仕事も、ダンジョン関係にしようかなって思ってる。」

「あら、そうなの。全く知らない職種につくよりは、勝手も知ってるしいいでしょうけど。危ないところなんでしょ?心配だわ。」

「大丈夫だよ。できるだけ安全は確保してるし。」


 厳密には、確保している『つもり』ではある。


 母はダンジョンの実情をほとんど知らないが、それも当然だ。

 ダンジョンから採れる新しい資源などは話題だが、そのダンジョン内の実情などは、一般人にはあまり知られていない。

 例えるなら、「化石燃料は重要な資源だ」というのは知っていても、その入手現場までは知らないようなものだ。


 最近では配信の影響もあってダンジョン内のことも知られてきてはいるが、それでも親世代までには浸透していないみたいだな。


 ダンジョン専用や探索者専用のサイトで調べればたくさん出てくるが、普通にネットで検索するだけだと表面的なものしか出てこない。配信だって、それ専用のサイトだ。

 まあ魔物や戦闘場面、果てには戦って死ぬ場面なんかを簡単に表に出すわけにはいかないので、当然ではある。


 そんな他愛ない話をしながら食事を終え、自室に戻り数日はゆっくり休もうと寝転がる。

 

(そうだ。こういう時に他の探索者のこととか調べてみるかな。)


 何をしようかなと考えていたところで、そんなことを思いついた。


 普段は自分の探索で手一杯なので他の探索者を見ることはあまりないが、今はやることもなく時間に余裕がある。少し調べてみよう。

 

 まずは最近関わりのある彩風三花から。

 少し前のアーカイブだが、気になるのはやはりこの【新スキルお披露目!】というやつだ。


【彩風三花 花歌さんぽの新スキルお披露目!】


『このたび!スキルを新しくしましたー!』

『どんどんぱふぱふー』

『祝うようなことなのかしら?』


 そんな三人のやり取りと共に、歌が新スキル『魔法の腕』を披露している。80階層の変異体からドロップしたスキルオーブだな。


 魔法の腕はどんなものかと思って映像を見ていると、歌の肩の辺りから、魔力でできた青白い煙のようなものが出てきた。そしてそれが腕の形となり、武器を握って振り回す。


:ぽぽちゃんおかえり!

:第三の腕!?

:腕がなくなったって聞いてたけど、デマだったか。増えてたわ


『色々あったけど、体は治ったしスキルも新しく習得したし!まだまだ現役だよ!』

『色々の内容は詳しく言えないけどね。』

『しばらくはスキルの慣らしとレベル上げよ?攻略はしないしさせないからね。』


 三羽の言葉通り、この配信のほとんどは歌のスキル慣らしや検証をしていた。


 やはり三つ目の腕というのは感覚が難しいのか、ただ武器を振るうだけでも少しぎこちなさがある。

 ここからさらに武器技を使ったり連携できたりするようになるには、時間がかかりそうだ。


 だが使いこなせれば強力なスキルなのは間違いない。慣れればさらにもう一つ腕を出せるし、それで剣を四本持ちとかすれば、武器技を四つ一気に繰り出す、なんてこともできるかもしれない。

 もしくは盾を持って防御に使うのもいいだろう。単純に手数が増えるのは強さに直結だ。


(なんにせよ、彩風三花はしばらく80階層でストップかな)


 レベルが足りないのもあるし、スキルの慣らしもある。彩風三花はまだ追い付いてこないと見ていいだろう。


(次は...烈煌四雅か)


 関連動画の一覧を見ていると、烈煌四雅のものがいくつかあった。まず目についたのは、


【烈煌四雅 無名時代の『あの探索者』が、斗真の配信に映っていた!】


 というもの。


(以前言ってた、ゴーレムの変異体のときのやつか。)


 見てみると、今となっては懐かしい、41階層の変異体が出現した時の映像だった。

 映像の遥か先で、ゴーレムが吹き飛んでいるのが微かに見える。俺がやったやつだな。


 動画のコメント欄には


:例の探索者か

:今思えば、これくらいできて当然だな

:むしろ可愛い方だ。もっととんでもないことしてるし


 といったものがあった。


 本当に切り抜いて動画上げたのか、と苦笑いしながら、他の動画も見てみる。

 烈煌四雅は最近70階層前半辺りでレベル上げをしているらしく、鬼の魔物との戦闘が多いようだ。


『リーダー!また追加の魔物が来た!』

『やっべ!長引きすぎたか!しゃーねえ、斗真!』

『ほい来た!任せろ!』


 魔物と戦って、戦闘が長引いて周りからさらに魔物が集まってくる。よくあるパターンだ。俺も何度このパターンで撤退したかわからない。


 だが烈煌四雅はここで撤退するのではなく、殲滅の選択をとった。


 霧島が大剣を構え、スキルを発動させる。...かなりの魔力が込められているな。

 そしてその大剣を持ったまま一回転し、強力な回転斬りを繰り出した。


『旋風斬!!』


 霧島の大声とともに、集まって来た鬼に大剣が直撃し、大きく吹き飛ぶ。半分以上はそれで粒子化をしているし、粒子化していないやつも大ダメージを負っている。

 その弱ったやつらを他のメンバーが倒していき、魔物の群れは見事に殲滅された。


『あーーーー、きっつい!』


 霧島が大剣を突き立てて支えにしながら、荒い息を吐く。強力な一撃の分、消耗が激しいらしい。


 だがあの一撃はすごいな。威力だけなら、80階層のブルーオーガにも通じるだろう。動作が大きい分、当てるには工夫が必要だろうが...。


(俺も火力特化とか考えてみるか。)


 俺は基本的に防御も回避も攻撃も、均等に割り振ってしまう。ソロだと痛手を負った時の挽回が難しいので仕方ないが、時には火力で押し切る場面も必要になってくる。

 そういった場面になった時に咄嗟に火力を出せるよう、それ用のスキル構成を考えたほうがいいかもしれない。


 参考にさせてもらおうと思いながら、映像越しに霧島を鑑定してスキルをメモしておく。

 烈煌四雅は、火力だけなら80階層でも通じるものがある。もしかしたら彩風三花より先に、深層へ食い込んでくるかもしれないな。


 次に見るのは、天譚九曜。


 天譚九曜も同じく70階層台だが、こちらは75階層の中ボスであるからくり武者と戦っている映像があった。


 大きな盾を持った男が、からくり武者に近づいていく。攻撃範囲に入ったところでからくり武者が居合切りを繰り出す...が、その動きは俺がいつも戦うときよりゆっくりだった。


(ん?随分遅い居合切りだな)


 この居合切りは、瞬迅斬の元となっている攻撃なのでむちゃくちゃ早いはずだ。それがこんなに遅いとは、と思っていると、ふとコメント欄に目がいった。


:ナイスサポート天城!

:この攻撃たしかめっちゃ早いんだよね?

:全然見えたわ。念力で妨害したか


 画面超しに鑑定してみると、どうやらリーダーのスキルが『念力』らしい。それでからくり武者の抜刀を邪魔したのか。


(そうか、防ぐにはそういう方法もあるよな。)


 出された技を防御する、回避するだけでなく、『技を出すのを妨害する』という方法。俺も無意識のうちにやっているときはあるが、ちゃんと選択肢として持っておいた方がいいな。

 技の完成形を受け切るより、技を出させない方が安全なのは間違いない。


(しかし...クセのあるスキルばっかりだな。)


 画面に映る天譚九曜のメンバーを見ると、ほとんどが変わったスキルの持ち主だ。使いどころが難しいものや、一人だとなかなか効力が発揮しないもの。

 だがチームとして活動することにより、それらが上手く噛み合って強力になっているのだろう。


 この人なんて『隠密』と『急所突き』だし...


(って影山か。そういや隠密とか斥候担当って言ってたっけ。)


 画面にちらっと映ったのは、影山だった。中ボス戦には参加していないようで、のんびり水を飲んでいる。

 通常魔物なら急所突きで倒す、もしくは大ダメージを与えられるだろうが、さすがに中ボスやボスともなると厳しいのかな。


 まあ影山はともかく、他の人たちだ。変わったスキルが多いが、中には興味深いスキルもある。これらは参考にして、俺も創造スキルで使ってみてもいいかもしれない。メモしておこう。


 天譚九曜は時間をかけて、からくり武者を倒しきっていた。疲労はありそうだが、肉体的ダメージはほとんどない。人数が多いというのもあるだろうが、サポートも見事だったな。素直に称賛だ。


 次は...久しぶりに見る気がする、東雲だ。

 東雲の映像は、最近は70階層のボス戦ばかりのようだ。


『かー!こいつらどんだけ増えよんねん!』


 70階層ボスのリッチ。そいつはゾンビなどのアンデッド系を召喚してくる。さらには幻覚魔法で偽物の魔物を見せてくるので、時間が経てばどれが本物の魔物か、どれが本物のリッチかわからなくなってしまう。


 だが東雲は、幻覚で偽物が出てきても迷わず本物の魔物を攻撃している。

 東雲のスキル、『認識強化』だろうな。目に入った者を素早く正確に認識する。それで幻覚かどうかを判断しているのだろう。


 だが取り巻きを倒して、リッチを攻撃して、また取り巻きを倒して...とやっている間に、敵の数は少しずつ増えていく。それで対処しきれなくなったところで撤退。というのが東雲の負けパターンらしい。


『あかんわー。あともう一手足らん感じやな。』


(東雲は...もう少しかな。)


 本人の言う通り、惜しいところまでは来ている。あと一手足りないといった感じだ。

 おそらくもう何度か繰り返せば、突破はできるだろう。取り巻きをいかに処理できるか、それが大事だからな。


(さすがにまだ、100階層に到達しそうな人たちはいないか。)


 その後海外の切り抜き映像も見てみたが、80階層を突破している様子はなかった。


 80階層、90階層を突破して、90階層台も攻略して、100階層までたどり着く...。

 やはり、1年ではすまなさそうだ。できれば1年半くらいで100階層まで来てほしいものだが...。


 だが無理をしても、歌のような大怪我をしてしまうことになる。そうなると結局攻略が止まってしまうので、急かすことはできない。

 俺に出来ることは、各階層の情報を見せたりしてサポートすることだな。その情報をもとに、できるだけ早く追い付いてもらおう。


 一人で攻略するのは大変だからな。一緒に情報を共有しながら探索したいものだ。


(お、これはきららの動画か。)


 その後はトップの動画だけでなく、浅層~中層などの動画を見て、少しだけ他の探索者のことを知っていった。



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