64 情報開示
『前提。世界とは一つだけではなく、複数存在しています。』
「...異世界ってやつか。さっきのやつらは、異世界からやってきたってことだな?」
ダンジョンは異世界からやってきたものである、という説も多くあるので、異世界があること自体はそれほど驚きではない。
問題は、何故その異世界のやつらがやって来たかだ。
『解。はい。異世界です。そして異世界にもダンジョンというものは存在しており、それぞれに管理者がいます。』
「その世界ごとに管理者がいるってことか。」
『解。その通りです。そしてダンジョンの挑戦者は、条件を満たすと管理者の使徒のような存在...サイドと言われている立場になることができます。』
「使徒?運営側に立つってことか?」
『解。半分運営側、といったところです。サイドになったとしても、引き続き挑戦者の立場としてダンジョンを攻略していくことになります。』
なるほど。そして今その話をするってことは...
「さっきのやつらは、そのサイドって立場のやつらなんだな?」
『解。その通りです。』
「なんでわざわざこっちの世界のダンジョンに干渉しようとしてきたんだ?」
相手の立場などはわかったが、肝心なのは何故こっちのダンジョンにやってきたか、だ。
そもそも異世界のダンジョンまで来れること自体驚きだけどな。
『解。ダンジョンの規模は、管理者の力に直結します。一つのダンジョンだけでなく、複数の大規模ダンジョンを所有しているとなれば、管理者の力は大きいものとなります。そのため、こちらのダンジョンを乗っ取れないか様子見に来たのでしょう。』
「ダンジョンの乗っ取りなんてできるのか?」
『解。できます。大きな争いになりますし戦力も大きく削ることになりますが、それに見合ったリターンを得られます。』
力を得るために、ダンジョンを乗っ取るか...。随分強欲だし乱暴な手段を取るんだな。
「そういえば、今回のやつらは前任の管理者の時にも干渉してきたやつら、って言ってたよな?前任の管理者も、こんな風に異世界のやつらと戦っていたのか?」
『解。はい、防衛として戦っていました。』
「...他のダンジョンを乗っ取ったりもしていたのか?」
『解。いいえ、していません。前任の管理者は乗っ取りには興味がなさそうでした。また、この地球のダンジョンの改変に集中していたため、興味があったとしてもやる時間はなかったと思われます。』
そうか。じゃあ他所の世界から恨みを買っている、というようなことはないってことかな。
「そもそも力を持ってどうするんだ。ダンジョンの運営ってだけでとんでもない力を持っているだろうに。」
『解。人間に限らず、生物の欲とは止まらないものです。また、管理者は基本的に精神構造が異常なものが多いです。その中には【力】に執着を持っているものもいます。』
「酷い言いようだな。まともじゃないやつらばっかりなのか。」
まあそれを言うなら、寿命を延ばして生き続けたいと思っている俺も異常なのだろう。生物の理を無視しようとしているわけだからな。
「今回は、異世界の管理者側の生物が攻めてきた、ってことだな。...今後もあるのか?」
『解。あなたが力を示したことで、ここのダンジョンは危険だ。と思わせることができました。なのでしばらくはないと思います。...が、断定はできません。』
「来たらまた戦わなくちゃいけないんだろ?だったら来てほしくないな。」
俺は別に戦闘狂でもなんでもないので、そんな異世界のよくわからないやつらとは戦いたくない。せめて何か報酬があればいいんだけどな...。
「報酬とかないのか?それなら戦う気も起きるんだが。」
『解。逆に質問しますが、何を要望しますか?』
「そうだな...。エリクサー、もしくはその素材か、素材の在処とか。」
『解。アイテム、もしくはダンジョン内の情報ということですね。』
「くれるのか?」
もしもらえるなら、やる気も出てくるぞ。エリクサーの現物も欲しいが、量産するなら素材の在処も知りたい。
「素材なら、白蛇の鱗とドラゴンの血以外の情報で頼む。」
『解。わかりました。あなたの到達地点である101階層までで手に入るエリクサーの素材ですが、あと一つあります。場所は95階層。そこにある巨大な湖の中にあります。』
なんとあっさり教えてもらうことができた。若干拍子抜けだ。いや嬉しいんだけどな。
「湖の中?湖の魔物のドロップアイテムじゃなくてか?」
『解。はい、湖の中です。湖の魔物からはまた違ったドロップアイテムが出ます。』
場所は95階層の湖か。俺も怪しいと思っていた場所だ。
でも、その中っていう発想はなかったな。湖にいる魔物を倒せば出てくるかもしれないと思っていた。
「...ってことは、87階層にあった隠し部屋はエリクサーの素材じゃないのか?あそこには何があるんだ?」
ふと思い出したのは、87階層の隠し部屋。
あそこも怪しいと思っていたが、エリクサーの素材の残り一つが95階層にあるなら、隠し部屋にあるのは違うアイテムってことになる。
『解。あそこにはカイヤーに有効な武器が置かれています。【巨大爬虫類特攻】が付いている武器です。』
「あ、教えてくれるのか。」
これは教えてもらえないかと思ったが、普通に教えてくれた。イマイチ、何がダメで何がいいのかわからない。
カイヤーっていうのは、ヤマタノオロチのことだったな。そいつに有効な武器...。
もしかしてヤマタノオロチは30階層台の武器じゃなくて、その隠し部屋のアイテムを使うのが正解だったのか?
「その隠し部屋の武器は、付与はいくつできる?
『解。四つできます。』
「...巨大爬虫類特攻っていうのは、30階層台で出てくる武器と同じものか?」
『解。同じものです。』
思わず天を仰いでしまった。完全に上位互換じゃないか。30階層台の武器でなんとかしようとしてたあの時間はなんだったんだ。
「その隠し部屋への行き方は?」
『解。それは次回の報酬ということにしましょう。次回があるかはわかりませんが。』
「肝心なところは秘密か。」
まあなんでもかんでも教えてもらうのはよくない。だが知れるなら知りたかったな。
その武器があればヤマタノオロチ戦もかなり楽になりそうだし。
そういえばヤマタノオロチと言えば...
「そういえば最初、ヤマタノオロチは異世界のやつらと戦ってたよな?あれはなんだったんだ?」
『解。ダンジョンの魔物は、防衛システムでもあります。異常が起きれば魔物たちを防衛に向かわせることができます。とは言っても基本は管理者やサイドが対応するものであって、生成魔物は予備戦力のようなものです。』
「...もしかして魔物は味方だったりするのか?」
ダンジョンの干渉を防いでくれる防衛戦力。そう考えるなら、ダンジョンは魔物に守られているということにもなる。
『解。味方とはどういう意味でしょうか?』
「いや、乗っ取りを防いでくれているなら、このダンジョン...探索者は魔物に守られているようなものだし、そう考えると魔物は味方って捉え方もできるかなって。」
『解。斬新な考え方ですね。防衛システムとして戦っているだけであって、挑戦者にとって倒すべき存在なのは変わりません。』
「まあそりゃそうか。」
運営からすれば味方かもしれないが、探索者たちにとってそれは関係ないことだ。
「防衛するなら、もっと上の階層の魔物...それこそ150階層とか160階層の魔物は使えないのか?」
『解。条件が満たされていません。挑戦者に倒されていない魔物は、ダンジョンから離れることができません。なので今防衛に使える魔物は100階層までとなります。』
「なんだその条件...。じゃあ防衛力を上げるなら、ダンジョンを攻略する必要があるってことか?」
『解。その通りです。』
ため息が出てしまう。しばらくのんびり探索するつもりだったのに、先に進む理由ができてしまった。
自分で対処するなら攻略する必要もないが、そもそも攻めてこられたタイミングで俺がダンジョンにいない可能性もある。
探索休んでいる間にダンジョンが乗っ取られました、なんてことになったら最悪だし、それを考えるならダンジョンを攻略して防衛に使える魔物を増やさなければいけない。
「...はぁ。なんで俺が運営視点で考えなきゃいけないんだ。」
『解。あなたが唯一100階層を超えているからです。先に進めば本格的に管理者になることもできますよ。』
「いや、探索者の立場で運営視点なことを嘆いているわけじゃない。というか、こんなことやらなくちゃいけないんだったら管理者にはなりたくないな。」
異世界のことやダンジョンの防衛のことを考えてダンジョン運営するなんて、ストレスがたまってしまいそうだ。管理者は誰か他の人になってほしい。
「あとは...聞きたいことあったはずなのに、色々起きすぎて忘れたな。」
『解。そろそろ時間です。また戻らなくてはいけません。』
「そうか...。」
何か聞くことがあるような気もするが、これ以上聞いても頭がパンクしてしまう。おとなしくここで帰っておこう。
『報告。元いた場所に転移をします。また秘密のオーブが出るように設定しておきますので、またお会いしましょう。』
「...わかった。」
補佐システムから聞いた情報を整理しながら、曖昧に返事をする。
そして考えをまとめているうちに、俺の体は光に包まれてその場から消えていった。
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ダンジョン94階層
大雨が降る、湿地帯のような見た目の階層。
(...しまった。防御膜を創っていなかった。)
過剰駆動の重ね掛けの際にスキルを全部消してそのままだったので、雨でぬれることになってしまった。
考えながら転移をしたので、そのことすら頭から抜けていた。
スキルを創造していつもの構成にしてから、辺りを見回す。
(...魔物はいないな。今日はこのまま帰ろう。)
周囲に敵がいないのを確認してから、1階層の転移石を取り出し起動の準備に入る。
今回は多くの情報を知ることができた。
異世界のこと、サイドの存在、ダンジョンの防衛、アイテムの在処。
...一人で考えるには、ちょっと情報量が多い。また歌たちに話してみよう。
現状では、防衛は俺がやるしかない状況。
報酬があるので構わないが、荷が重いと感じるのも事実。
エリクサーを求めて進んでいたはずなのに、いつの間にかダンジョンの防衛まで考えさせられている。
ほんと、なんでこうなったんだか。




