63 ダンジョンの干渉者
「めんどくさいな、この魔物」
「でもこれ生成魔物だろ?なんで管理者やサイドが出てこない?」
難易度3ダンジョンから派遣されたウスとハティは、対峙している八つ首の蛇の魔物と戦いながらそんな話をしていた。
元々ダンジョンの挑戦者だった彼らは、100階層を超えたことにより管理者の使徒のような存在...サイドへと選ばれた。
彼らは腕っぷしが自慢だったし、自分たちが管理者に目を付けられるのも当然だという思いでサイドになるのを了承した。
元々部族内では上位の強さだったし、スキルもシンプルな肉体強化系。それがハマることにより、サイドに選ばれてからもダンジョンを進めどんどんとレベルを上げていった。
「管理者もサイドも、俺らの強さにビビってるんだよ。」
「そりゃそうか。ここのダンジョンは防衛がとんでもなく強いって噂だったけど、それでも俺らにかなうわけないもんな。」
...腕っぷしは強いが、頭の方はあまりよくなかったが。
実は彼らのスキルも、管理者が肉体強化系がドロップするように操作をしていた。彼らが頭を使うようなスキルを使いこなせるとは思わなかったからだ。
そして今回この二体を送り込んだのも、ほとんど捨て玉のようなもの。
難易度3ダンジョンの管理者は、以前もこの難易度2ダンジョンにサイドを送り込んだが、その時は管理者とドラゴンにあっけなく撃破された。
そこからしばらくこの難易度2ダンジョンの記録を見ていたが、ある時からピタッと活動が止まっているように見えた。
いや、活動はしているのだが手の込んだものではないというか、まるでシステムに任せきりのような動き...。
もしや管理者に何かあったのか?
今ならダンジョンを吸収することができるのではないか。そんな考えで、難易度3ダンジョンの管理者は様子見のためにもう一度サイドを送り込んだ。
ウスとハティは、そんなことは知らずに『自分たちを重要な攻め役に選んだんだな』としか思っていなかったが...。
「聞いていた話と違うな。ドラゴンが出てくるって話だった。」
「それよりもっと強い魔物を生み出したから交代したんじゃないか。つまりこいつを倒せば、生成魔物で俺らに勝てるやつはいないってことだ。」
「なるほど。じゃあやっちまうか。めんどくさいけど、勝てない相手じゃないしな。」
八つ首の蛇は再生能力もあるし、様々な属性もあるので厄介ではある。
だがウスとハティの身体能力であれば魔法を受けながらも反撃できるし、攻撃が当たれば大ダメージを与えることもできる。
唯一黒い頭だけは固くてなかなか攻撃が通らないが、それ以外の頭は潰すのは苦労しなさそうだ。
「...ん?」
「なんか来たな。」
そして少し傷つきながらも蛇に大ダメージを与えたところで、離れたところに魔力の歪みを感じた。
そちらを見てみると、二足歩行の生物が転移をしてきていた。
それと同時に、戦っていた蛇の床に魔法陣が浮かび上がり、蛇が転移をして姿を消す。
「あ、逃げやがった。」
「あんだけやっちまえば修復には時間がかかるし、もう出てこないだろ。そんで、次の相手はこいつってことだ。」
「魔物じゃなさそうだな。管理者でもなさそうだし...サイドか?それにしてはちっぽけだな。レベル100超えたばっかりじゃないか?」
現れた二足歩行の生物は、自分たちよりも格下に見えた。
感じる雰囲気として、レベルは先ほどの蛇よりは上だろう。
おそらくは自分たちと同じような、サイド。だがサイドに成り立て...レベル100を超えたばかりのように感じられた。
「戦力不足なのか、ただの足止めなのか...。どっちにしろ相手にならんな。」
「おいおい、そう言ってさっきの蛇も手こずっただろ。何か能力があるかもしれないから、気をつけろよ。」
二体は『負けるはずがない』という思いで、二足歩行の生物に近づいていった。
レベルもそうだが、体型もちっぽけだ。背丈も自分たちの半分ほどしかない。
軽くひねりつぶして、システムの中枢まで行ってやろう。そう思っていたところで...。
ゴウッ!!!!!!
っと、目の前の生物から圧倒的な『力』があふれ出した。
「「...は?」」
二体は同時に困惑の声を出した。
どう見てもちっぽけにしか見えなかった生物から、魔力や威圧感、身体能力など、あらゆる『力』があふれ出ている。
それは、ウスとハティを軽く凌駕するほどのものであった。
そして二体は、すぐさま臨戦態勢に入る。
腐ってもサイドでありレベル130を超える実力者。強敵を目の前にしたときの動きは早かった。
ウスは弓を構え、力強く放つ。ハティは目にも止まらぬ速度で動き、相手の背後に回り込み剣で斬りかかる。
だがその二足歩行の生物は、ウスの放った矢を素手で掴むとそのまま投げ返してきた。
その間にハティの剣が襲い掛かるが、まるで後ろに目がついているかのように、正確にその動きは見切られ避けられた。
そして剣が空を切り無防備となったハティに、相手の剣が襲い掛かる。
ハティはとっさに盾を構え、さらに自身の体も『硬化』を使い防御する。
盾とスキル、その二つで剣を防ぎ、反撃で蹴り飛ばしてやろう...と思っていたハティだが。
スパッと
盾ごと体を切り裂かれた。
「えぇ...?」
戸惑いの声を出し、何が起こったか理解しようとしたところで、今度は顔面に盾が迫りくる。
その盾に顔面を潰されたハティは、そこで意識が途切れた。
「ハティ!!」
投げ返された矢を避けたウスは、一瞬でやられた相方を見て大声を出す。
ハティが死んだ...と思ったが、その体は粒子化を始めている。
どうやら消滅させられたわけではなく、単純に死んで元の世界に帰っただけのようだ。
そのことに少し安心したウスだが、同時に怒りのような感情が湧いてくる。
俺たちにだって、ここまで強くなったプライドがある。それをこうも一瞬でやられてしまうと、立つ瀬がない。
相打ちでもいいからやってやる。そんな思いで、ウスは再び弓を構える。
しかしウスが弓を構えた瞬間には、もう相手は目の前に来ていた。
「はや...っ!」
動きが全く見えなかった。
そして相手を認識したと思ったら、いつの間にかウスの腕が斬り落とされていた。
(いつ剣を振った...!?)
移動だけでなく、攻撃の動きすら見えない。あまりにも圧倒的な実力差。
なんだこの生物は?最初はレベル100程度にしか見えなかったのに、力を隠していたのか?それとも、ここまで力を引き上げられるのか?
わけもわからず、それでも前脚で蹴りを繰り出そうとしたが、その蹴りが相手に届く前にウスの意識は途切れた。
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「ふぅ...」
真っ二つになり粒子化していくケンタウロスを見て、俺は剣をしまい息を吐く。
そして、「過剰駆動の重ね掛け」を解除した。
「うっ...」
解除と共に襲い来る反動。痛みや倦怠感、眩暈。
おもわず膝をついてしまう。
「しんど...。でも要求を満たすならこれが一番だしな。」
ここに来る前に、補佐システムから要求された排除内容は
『圧倒的な力で排除してください。ここに干渉しようとしても無駄だ。と思わせるほどに。』
というものだった。
その意味は、なんとなくわかった。
もしギリギリで勝ったとしたら、相手は『次は行ける』と思い再び干渉しに来るのだろう。
なので、もう干渉に来させないためにも圧倒的な力を見せつける。それが狙いなんだと思う。
俺もこんなわけのわけらない戦いに何度も駆り出されるのは御免なので、俺の出せる最大の力...過剰駆動の重ね掛けをした。
だがやはり体への負担が大きい。吐きそうだし倒れそうだ。
そう思っていたところで足元に魔法陣が出現し、俺は管理者空間へと転移をさせられた。
『労い。お疲れ様です。』
「なんだその語頭...。本当に疲れたぞ...」
眩暈がする中、フラフラとしながらなんとか立ち上がる。
すると俺の目の前に、液体が入った瓶が2つ出現した。
「なんだこれ?」
『解。霊薬と万能薬です。あなたの反動はその二つで打ち消せるはずです。どうぞお飲みください。』
「...結構大事なものだと思うけどな。」
ポンと渡されたが、霊薬と万能薬の入手難易度は高いはずだ。それをこんな簡単に出現させることができるのか...。
ダンジョンの運営に関わっているとそんなこともできるのかと思いながら、その二つを一気に飲み干す。
すると補佐システムの言う通り、体のしんどさは消え去りいつも通りの体調に戻った。
「本当に反動がなくなったな。」
『解。分析通りの結果です。改めて、今回はありがとうございました。』
「ああ。いきなり戦えって言われてびっくりしたけどな。全力を出せばすぐだった。」
『解。お伝えした通り、それも分析通りです。』
「そうだな...。さて、じゃあ事情を説明してもらおうか。あいつらはなんだったんだ?」
体も治ったところで、補佐システムに説明を求める。事前の説明通りなら、これで権限とやらが解放されて事情を教えてもらえるはずだ。
『解。そうですね...。どこからお話ししましょうか...。』
補佐システムは少し悩んだような口ぶりの後、今回の相手について話し始めた。




