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創造スキルは万能です~ソロでダンジョン深層まで攻略していた俺、配信に映ってバズってしまう~  作者: ターシ


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57 付与の検証と91階層


 後日


 ダンジョン1階層


「...これで大丈夫だな。」


 『武器理解』の付与を施した剣を眺めながら、そう呟く。


 何の武器に付与するかは少し悩んだが、やはり一番使う剣にすることにした。

 他の武器を使うこともあるが、それは相手が剣に対応してきた時や、意表を突きたい時がほとんどだ。

 普段の主軸はあくまで剣。ならば、剣の理解が深まる方が戦い全体の安定性は増す。


 問題は、この付与がどこまで役に立つかだな。


 武器の扱いが自然と理解できる、というのは便利そうではある。

 だが、実際にどの程度変わるのかは試してみなければわからない。

 使ってみたらそこまででもなかった、なんてこともあり得るからな。


 俺は軽く剣を握り、手に伝わる感覚を確かめる。


(まずはスキルなしで試すか)


 普段は余裕があれば剣術スキルを創っている。だが、ボス相手などはそこまで余裕がない。

 そのためそういう時は、ほとんど身体能力や腕力に任せていたり、剣技で誤魔化している時が多い。


 そういった時と比べて、一体どれくらい変わっているか。

 それを試すために剣を構えてみると...。


(お?構えの段階からすでに何か感じるな。)


 剣を振ろうと構えたところで、背筋や足の幅など、どんな姿勢が適切か直感的に理解できた。

 そしてそのまま素振りをする。止まったまま縦斬り、横斬り、突き。


 その動作のたびに、力の入れ方、重心の動かし方が自然とわかる。


(剣術スキルと同じ感じだな。)


 剣術スキルを創っている時も、このように自然と適切な動きをすることができた。

 ここまでは、まあ予想通りだ。


(次はスキルを創ってみてだな。)


 付与の効果は、大体スキルと同程度だった。ならば、『剣術』スキルを創造してみると、どのようになるのか。

 そう思い、スキルを創造して再び剣を構え直す。


 先ほどと同じように姿勢が理解できる。

 そしてそのまま剣を振る。


 止まったままでなく、歩きながら、走りながら、相手の攻撃を受けるイメージをしながら...。


(これは...)


 動きが直感でわかるのは、先ほどまでと変わらない。

 だがスキルと付与を合わせることで、さらに()()()()が頭の中に入ってきた。


 なんというか、過程がわかる、と言えばいいだろうか?

 なぜこの動きがいいのか、どうしてこの姿勢になるのか。それらを一つ一つ分解して、理屈まで理解することができる。


(これはありがたいな)


 スキルか付与、どちらか一つだけでは、その場では最適な動きができても次に繋げることは難しかった。

 なにせ動きの理屈まではわからず、「こうしたら上手く動ける」という結果だけがわかる状態だったからだ。


(使っている時だけ上手くなる、では意味が薄い。この感覚を体に落とし込めるなら落とし込みたい。)


 付与とスキルを合わせて、理屈までわかるようになったのならば。

 この理屈を身につければ、付与やスキルなしでも剣を上手く扱えるようになるかもしれない。


(まあ、そんなすぐに上手くいくわけないけどな。)


 試しに剣を持ち替え、スキルも消して振ってみたが、当然先ほどのように滑らかにはいかなかった。

 速さや威力はある。だがそれは身体能力に任せたものであって、技術ではない。


 先ほどまでの感覚を思い出しながら振ってみても上手くいかない。

 頭で分かっているのと、体がその通りに動くかどうかは別問題だ。


(これは要練習だな。)


 技術というのは、一朝一夕で身につくものではない。才能ある人間ならばすぐにできるのかもしれないが、生憎俺は凡人だし剣道なんかも碌にやったことはない。

 この技術を身に着けるのは、かなりの時間がかかるだろう。


 だが独学で身に着けるよりは遥かに早いだろうし、練度も高くなるはずだ。

 これからは探索の前などに、できるだけ練習していこう。


(...よし、じゃあ探索に行くか。)


 しばらく素振りや足さばきを練習したところで剣をしまい、いつもの装備やスキルに変更する。

 今日は検証だけでなく、探索も行うつもりだ。

 行き場所は、91階層。未探索エリアを求めて。


 ドローンを取り出して電源と配信開始ボタンを押し、画面に転移石を映し出して起動する。


「91階層。」


─────────────────────────────────────


 ダンジョン91階層


 灼熱の太陽、砂が多い地面。

 ぬるい風が吹き、草木は枯れていて緑が少ない。

 砂漠とまでいかないが、それに近い環境。それが91階層だった。


:こんにちは

:まさかの91階層か

:101階層はいかないの?


「階層更新は、偶にやるくらいかな。それよりも解説配信と、未探索の場所を埋めていくのを優先したい。」


:91階層未探索なの?

:とりあえず先に進むだけ進んだ感じか

:彩風三花とか烈煌四雅も、70階層台はそんな感じだったな


 『最新階層に行かないのか』というコメントが多かったので、そこは事前に考えていたことをそのまま伝える。


「先に進んだとしても、この90階層台みたいに未探索エリアがどんどん増えていきそうだからな。それだと大事なアイテムを見落とすかもしれない。それにこの90階層台にも何かあるかもしれないし、まずはこの90階層台の探索を終えておきたいんだよ。」


:宝箱取得率100%にしときたい感じか

:マップ埋めてから次に行きたいんだね

:行き止まりまで制覇しときたいよな


「...ゲームの例えか?わからないけど、多分そんな感じかな?」


 コメントを見るに、みんなゲームに例えて言っているようだ。影山もそんな感じのことを言っていたような気がするな。なんだっけ。ハズレの道が当たり、だったか?


 そんなことを考えながら、水分補給をして歩き出す。

 この階層はとにかく暑い。創造スキルで「暑さ軽減」を創っているが、それでも完璧には防げない。

 こまめな水分補給をしないと、脱水症状になってしまいそうだ。


「見てもわからないかもしれないけど、この階層は暑いんだ。それが嫌ですぐに進んだっていうのもある。」


 環境対策スキルを創れば、その分索敵や戦闘スキルは減る。当時80レベル台だった俺にとってそれはきつかった。

 だが、さすがに今は違う。あの時より創れるスキル数は増えているし、身体能力も向上している。これなら探索できるだろう。とはいえ、あまり時間をかけたくない気持ちはあるけどな。


:いや、日差しがすごいのは見て分かるよ

:眩しそう

:汗かくと動きにくいし、戦いもしんどそうだね

:足場は?砂でとられる?


「いや、砂は硬めで普通に歩けるな。これで砂が柔らかくて足が埋もれるような環境だったら、何か対策する必要があったかもな。」


 足場が普通なのは幸いというべきか。暑いのさえしのげれば、探索はできる。

 それに、魔物もオーソドックスなものが多い。ゴブリンやスライム、それらが強化されたものだ。

 戦い慣れた魔物なので、強化されていようがそいつらは問題ない。


 だが当然、魔物はそれだけではない。この階層特有の魔物も存在する。

 しばらく歩いたところで、そいつに遭遇した。


:なんだあれ

:ラクダ?

:ラクダにしても何か変だな


 コメントの言う通り、おそらくラクダをモチーフにした魔物。

 遠目から見るとシルエットはラクダだが、顔は凶悪だし体もゴツゴツしている。


(...そういえば、鑑定してみるか)


 100階層のボス、アシュファンを鑑定した時は、これまでよりも少し詳しい情報が記載されていた。

 もしレベル100になった影響なのだとしたら、この魔物の情報も以前より詳しく見れるかもしれない。


 アシュファンが特別な鑑定文だった可能性もあるし、それを確かめるためにも一度鑑定をしてみるか。


─────────────────────────────────────

種族名:キャモゥダ

個体名:なし

状態:正常


レベル:90

スキル:環境適応・突進・旋回


 難易度2ダンジョンの90階層以降に生息する魔物。

 背中のコブには回復液が詰まっており、自身が傷つくとその回復液を吹き出し傷を癒す。

 回復液を出させないまま討伐すると、ポーションのドロップ率がアップする。

─────────────────────────────────────


(...詳しくなっているな)


 たしか、以前は種族名とスキル、傷つくと回復する。くらいのことしか書かれていなかったはずだ。

 難易度2ダンジョン、という文と、ドロップ率アップの文が追加されている。


 これは、今まで調べた魔物ももう一度鑑定した方がいいかもしれないな。


 そう思っていたところで、ラクダがこちらに気づき鳴き声を上げてきた。

 そしてそのまま足に力を込める動作をし、突進してくる。


:うわ、きたきた

:ボーっとしてる場合じゃないぞ!

:近くで見るとごっついなこのラクダ


 俺はその突進を横に移動して躱すが、ラクダはすぐに体の向きを変えて再突進してくる。


 こいつの突進はかなり強力で、正面から防ぐと盾ごと吹き飛ばされてしまう。

 なので以前は、避けて素早く斬る、を繰り返していた。


(どうするかな。)


 レベルが上がった今なら、正面から受けることもできるかもしれない。もしくはシールドバッシュで跳ね返すという選択肢もある。

 避けて斬るの繰り返しは、時間も体力も消耗する。この暑い空間では、あまり取りたくない選択肢だ。


 なので、短期決着を試してみる。

 念のため『不動』『盾技強化』を創造。そしてラクダのタイミングに合わせて、シールドバッシュを発動。


「...っ!」


 やはりものすごい衝撃が来るが、それでも弾くことに成功。ラクダは自身の勢いに負けて、そのまま倒れこんだ。

 俺はすぐさま剣を構えて、タメの体勢に入る。


 そしてそのまま『極鋭刃』を発動。振りぬいた剣はラクダを真っ二つに切り裂き、ラクダは粒子化して消えていった。


:お疲れ様

:突進怖いなあ

:あの形相で突っ込んで来られるのは恐怖だね


「俺も最初はちょっとびっくりしたな。たしかに突進の速度も旋回も速いけど、動きは単調だからな。落ち着いてみれば大したことないよ。」


 1体倒すだけなら、彩風三花や烈煌四雅でも問題なく倒せるだろう。どちらかと言えばこの階層の環境による消耗の方がきついくらいだ。


(ドロップ品は...魔石だけか。)


 ラクダが粒子化した場所を見てみるが、落ちているのは魔石だけだった。ポーションも転移石もない。

 まあポーションも、ドロップ率がアップするだけで確定ではないからな。こういう時もあるだろう。


:すげえ残念そうな顔

:魔石だけだとちょっとがっかりか

:魔石だけの割合の方が多いとはいえ、期待はしちゃうよな


「こいつはコブから回復液を吹き出すんだけど、それを出させないまま倒すとポーションがドロップしやすいんだ。でも、今回は出なかったな。」


:ほえーそうなんか

:よくそんなのわかったな

:ちなみに現実のラクダは、背中のコブに水があるっていうのは迷信だぞ


 そんなコメントを横目に、俺は再び砂が続く大地を歩き出した。


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