56 変異体のドロップ品
本日二話目です。0時に前話を投稿しているので、まだの方はそちらからご覧ください。
「事前に話した通り、今回は君たちが倒した変異体のドロップ品を俺たち烈煌四雅が拾ったので、それの譲渡についてだな。」
緋村はマジックバッグからいくつかモノを取り出して、机に並べながらそう言った。
「ドロップ品としては、魔石、魔道具、スキルオーブ、付与素材、だな。かなり豊富と言える。多分、通常魔物のレアドロップも混じってるだろうな。」
並べられたドロップ品の数は、たしかに多い。いくら変異体と言えど、これだけ一気にドロップするのはなかなかないだろう。緋村の言う通り、通常の鬼の魔物のドロップ品も混じってるかもな。
「鑑定はしたの?」
並べられたものを見て、三羽が緋村にそう聞く。
「ああ、したよ。だから一つずつ言っていこう。そのうえで、もし不要なものがあれば譲ってもらえると嬉しい。全て必要というのであれば、当然すべて譲渡するけどな。」
...その言い方的に、『どれか一つは譲ってくれ』ってことだろうか?チーム内の暗黙の了解、みたいなものについてはよくわからないので、その辺りは三羽に任せよう。
緋村が説明を始める前に、俺は『鑑定』を創造しそれぞれのドロップ品を見てみる。鑑定内容を見ながら、緋村の説明を聞いていくとしよう。
緋村は最初に、壺のようなものを手に取った。
「魔石はいいとして、まずは魔道具からだな。これは『修復の壺』と言って、装備を中に入れると修復してくれる。ただし魔力を流す必要があるし、修復までの時間も必要らしい。」
魔道具は、装備品の修復か。通常なら魔物からドロップする修復のオーブを使う必要があるので、時間と魔力がかかるとは言えそれを使わずに修復できるのは便利だな。
とは言っても俺は修復のオーブには困っていないので、欲しいと思えるものでもない。あれば便利だが、なくてもどうにかなるものだ。
ちなみに鑑定内容によると、深層装備ほど修復に必要な魔力と時間も多くなるらしい。まあ当然のことだな。
「次にスキルオーブ。これは『魔法の腕』というスキルで、魔力でできた腕を作り出すらしい。80階層主は四本腕だから、それをモデルにしたスキルだろうな。」
次に緋村が手に取ったのはオーブ。
緋村の言う通り、このスキルは魔力でできた腕を作るスキルだ。そして、最大で二本まで作れると表示されている。
単純に手数が倍になると考えれば、かなり有用そうなスキルだ。操作は難しそうだけどな。
しかし、俺はスキルを変更するつもりはない。こういうスキルがあると知れたので、今度創造スキルで試してみようとは思うが、スキルオーブも別にいらないな。
「最後は付与素材。これは『武器理解』というもので、これが付与された武器を持つと、その武器の扱い方が自然と理解できて上手に扱えるらしい。スキルっぽい付与だな。」
最後に緋村が手に取ったのは、鬼の角のようなもの。
付与素材か。俺の鑑定には
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この付与が施された武器を持つと、使用者はその武器の扱いを直感的に理解しやすくなる。
不慣れな武器でも一定以上の精度で振るうことができ、攻撃や防御の動作補助を受けられる。
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と表示されている。
うーむ。これもあると便利だが、緋村の言う通りスキルのようなものだし、創造スキルで似たスキルを創ることができる。
創造スキルで創ったスキル+付与効果だと、さらに武器の扱い方が上手くなる...達人のようなものになるのだろうか?
そこが少し気になるくらいで、これも絶対にほしいというものではないな。
「以上だな。どうだ?ほしいものはあったか?君たちのドロップ品だから、遠慮なく言ってくれ。」
緋村がすべての説明を終えたところで、俺たちに目を向けてくる。
「...俺は、絶対にほしいと思えるものはないな。」
「うちとしては、スキルオーブか魔道具かしらね。魔道具は便利そうだし、スキルオーブは一考の余地ありね。」
「じゃあオーブと魔道具は彩風三花に渡して、レイには付与素材を渡すか?そんで烈煌四雅は魔石をもらっていいか?」
それを聞いて、三羽は呆れたように息を吐いた。
「うちもスキルオーブか魔道具のどっちかでいいわよ。ドロップ品目当てで変異体のところまで行ったわけじゃないし。それならレイが二つ、うちと烈煌四雅で一つずつでいいわよ。」
「いや、俺も二つはいらないぞ。ていうかナシでもいい。そういうドロップ品があるっていうのが知れただけで価値があるし。」
「いやいや、さすがにドロップ品の説明を聞いて満足しました。はあり得ないだろ。俺らは拾っただけで、戦ったのはあんただ。せめて何か一つは持っていけよ。」
ここに来て譲り合いが始まってしまった。探索者がドロップ品の割合で揉める、というのは聞いたことがあるが、普通はどれだけ多くもらえるかで揉めるんじゃないだろうか?譲り合いで議論することはなかなかなさそうだが。
そして話し合いの結果。
「じゃあ私たち彩風三花がスキルオーブ。レイが付与素材と魔石。烈煌四雅が魔道具でいいわね?」
「...ああ。」
「よし、決まりだな。」
俺は付与素材と魔石をもらうことになった。
別に魔石は他に譲ってもよかったが、『倒したのはレイだから』ということで、俺が二つ受け取ることになった。
魔石は普通に売るとして、付与素材だな。せっかく手に入れたのなら、さっき考えたようにスキルと合わせて使ってみて、武器の扱いがさらに上手くなるか試してみるとするか。
「スキルオーブは誰が使うんだ?」
「多分、わたしか歌のどっちかでしょうね。」
「うちは後衛だから、腕が増えてもそんなに意味ないからね。」
まあ、普通に考えたら前衛の腕が増えたほうがいいよな。武器を三つ、四つ持てると考えたら、集団戦にも強くなれるし。
「いやーしかし、烈煌四雅としても魔道具がもらえたのは嬉しいな。」
「人数が多いと、武器の修理も大変そうだからな。」
「それもあるけど、うちの斗真のスキルがな。武器に負担がかかるけど、武器技が強くなるってスキルなんだよ。」
「そんなスキルあるのか。」
「ああ。ついでに斗真は、魔力と体力を消費して技が強くなるスキルも持ってる。だから、うちで一番火力は高いんだ。」
「めっちゃ疲れるから、あんまり連発とかはしたくないけどな。でも、短期決戦するなら俺にお任せって感じだ。」
どうやら、烈煌四雅は短期の突破力がかなり高いらしい。しかし長期戦となると少し苦手のようだ。
ボス戦には強いけど、ボス戦までの道中が苦手、みたいなイメージか。
「これで本題は終わりかな。高橋さん、記録取れた?」
「ええ、問題なく。」
「よし。じゃあここからは...」
緋村はそこで言葉を止め、マジックバッグからお菓子やおつまみ、ジュースを大量に机に出して並べた。
「食いながら雑談でもするか!レイ、あんたの話もっと聞かせてくれよ!」
「あなた、ほんとにそういうの好きね。」
「つばきも好きだろ?ふーちゃんもほら。いつものお菓子持ってきたから。」
「もらう。レイも好きなやつ食べていいよ。」
さっきまでの真剣な空気は消し飛び、いきなり和やかなムードになった。
風雅はカステラの袋を開けて一つ取り出し、俺に渡してくる。
とりあえずそれを受け取って食べながら、なんだこの空気は...と少し困惑する。
「レイ。緋村はね、堅苦しいのが苦手なの。そしてすぐに騒ぎたがる。しかもその内容も子どもっぽいのよ。酒とかタバコとかじゃなくて、お菓子とジュースだからね。」
「俺は酒苦手だからな!といってもつばきと夜叉丸は酒好きだから、ちゃんと酒も持ってきてるぜ!」
夜叉丸って誰だと思ったが、どうやら烈煌四雅の瑠偉のことらしい。瑠偉夜叉丸。すごい名前だな。
「そうか...。まあ確かに堅苦しいのが続くと、気疲れするもんな。メリハリがあっていいんじゃないのか?」
「だよな~。さすがレイ!俺と同じあだ名なだけあるな!」
「同じ?」
「俺さ、緋村玲炎って言うんだよ。あだ名はレイ。あんたと同じさ!そんで名前に炎が入ってるから、赤髪にしてるんだよ!」
「大体リーダーとか緋村って言われてて、レイって呼んでる人そんないないけどね。」
「被ってたのか...。俺改名しようか?」
「改名って!気軽すぎるだろ!むしろ同じ名前で嬉しいからそのままにしてくれ!」
緋村は楽しそうに笑いながらそう言う。
「あんたのこれまでのダンジョンの経験、教えてくれよ!言えるところだけでいいからさ!」
「まあいいけど。」
「よし!じゃあ最初からな!ダンジョンには何年前に潜り始めた?」
「...まさか最初から最後まで話すのか?」
話し合いの後は、そんな風にして賑やかな時間を過ごした。
なお、三羽は結構な量の酒を飲んでいたが平気そうだった。すごい強いんだな。
風雅も少しだけ飲んでいたが、すぐにジュースに切り替えていた。
...というかあんまり気にしてなかったけど、二人とも成人していたんだな。
短くするつもりでしたが、なんだかんだで普通の量になってしまいました。
ちなみに年齢は
主人公 21歳
風雅れんげ 20歳
花歌さんぽ 21歳
三羽つばき 22歳
です。




