55 烈煌四雅とご対面
後日
予定を合わせて烈煌四雅と会うことにした俺は、集合場所であるダンジョン横の建物にまでやってきた。
この建物には貸し会議室がいくつかあるらしく、時々探索者や探索者関連の人たちが利用しているらしい。今回もここの一室を借りたようだ。
しかし俺はソロなので、当然使ったことはない。入口はどこだろうと探していると、横から声をかけられた。
「レイ、こっちよ。」
聞き覚えのある声に反応してそちらを向くと、そこには三羽つばきと風雅れんげがいた。
「ああ、お疲れ様。いや、こんにちは?...こういう時の挨拶って、何て言えばいいんだろうな。」
「お疲れ様でいいんじゃない?私は別に『よう』でも気にしないけどね。」
「よっ、久しぶり。」
三羽がそういうと、横にいた風雅がちょこんと手を上げて気軽に挨拶してきた。
俺もそれに「よう」と手を上げて返し、周りを見渡してみる。
「やっぱり歌は来てないのか?」
「ええ。腕のリハビリもあるし、取材とかもあるからね。まだあんまり自由に動ける状態じゃないのよ。」
歌からは事前に『私は行けないかもしれません。』という連絡はもらっていた。
リハビリはもちろんだが、先日『腕が治った』という発表をしたところ、『あの状態からどうやって?』と少し話題になってしまい、取材の申し込みなどが来たらしい。
事務所的にもすべてを断ることはできなかったらしく、仕方なくいくつかの取材は受けることになったようだ。
霊薬については、話し合った結果『秘蔵のポーションを使用した。入手先は秘匿。』と答えることにした。だが、俺が手に入れたものだと推測されるのはほぼ確実だろう。
そうなると俺の方にも何かしらのアクションが来るかもしれないが、その辺はダンジョン省...佐藤さんになんとか弾いてもらおう。
別に一件くらいなら取材を受けてもいいが、一件受けてしまうとひっきりなしに来るだろうからな。それは勘弁してほしい。
「まあ今回はただの話し合いだから、歌がいなくても私とふーちゃんがいれば十分よ。烈煌四雅はもう中で待ってるらしいから、行きましょうか。」
そう言って三羽と風雅が建物に向かって歩いて行ったので、俺もその後ろをついていく。
「ドロップ品って何か聞いているか?」
建物に入りエレベーターに乗ったところで、二人にドロップ品について聞いてみた。
「魔石は当然として、オーブと、あと何か道具っぽいものや素材ね。詳しい内容までは聞いてないわ。」
「配信で拾ってたけど、すぐに切り上げてた。拾う時も遠目に映してたから、映像越しの鑑定もできないって、うちの鑑定係が言ってた。」
鑑定係か。チームや事務所所属となると、そういう係の人もいるんだな。
しかし、ドロップ品の内容は不明か。変異体からは通常とは違うドロップ品が出るので、どんなものか少し楽しみではあるな。
「まあ、もうすぐ分かることだな。」
「そういうこと。烈煌四雅もレイに会うのは初めてらしいから、ちょっと楽しみにしてたわよ。」
「俺に?」
「100階層を突破した探索者なんだから、当然気になるでしょ。」
そう言って三羽つばきは少し笑う。
そしてエレベーターが止まり、扉が開いた。
エレベーターを出ると廊下になっており、扉が複数あるので会議室がいくつかあるのがわかる。
「第三会議室よ。結構広いから、烈煌四雅と私たちが入っても十分なスペースがあるはず。」
三羽はその中でも大きめの会議室の扉の前で止まり、ノックをしてから扉を開いた。
「失礼するわよ。」
「...失礼する。」
「失礼しまーす。」
三羽に続いて、俺と風雅もそのまま中に入る。すると、中にいた人物たちが一斉にこちらを見てきた。
そしてその中の一人、赤髪の男が立ち上がって喋り出す。
「おう。よく来てくれた。まあ座ってくれ。」
そう言って席に手を向けた後に、俺の方を見る。
「君とは初めましてだな。烈煌四雅のリーダーを務める、緋村だ。よろしく。」
「探索者のレイだ。こちらこそよろしく。」
「ぽぽちゃんが言ってた通り、レイって名前なんだな。いい名前だ。うちのメンバーの名前も教えておこう。」
緋村はそう言って、残りのメンバーを指さしながら名前を言っていく。
メンバーは霧島、叢雲、瑠偉という名前らしい。...なんだか随分と画数の多い名前だな、というのが第一印象。
そう思っていると、烈煌四雅のメンバーが五人いることに気づいた。その最後の一人を見ていると、緋村が付け加えるように言った。
「彼は探索者じゃなくて、マネージャーのようなものだ。今回の話し合いの記録を取るために来てもらってるんだよ。」
「高橋です。一応、事務所の物を受け渡したりすることになるわけですので、記録係が必要なんです。自分のことはあまり気にしないでいただいて結構ですよ。」
そういって高橋さんは頭を下げてきたので、俺も軽く頭を下げておく。
そして俺は三羽つばきに声をかけた。
「彩風三花はそういう人は来てないのか?」
「ええ。記録は烈煌四雅が取るし、一人いれば十分よ。ある程度の裁量は私に任されてるしね。」
「事務所によって、少し違いがある。うちは結構緩い方。多分。」
そういうものか、と思っていると、烈煌四雅の一人がこちらを見て何かすごくうずうずしているのが見えた。
「霧島、だったか?何か言いたそうにしてるように見えるが...。」
「あぁ!霧島斗真だ!リーダー、ちょっと話していいか?」
「いいけど、あんま関係ない話とか長話はやめてくれよ。」
「おっけー!レイ、あんたに会ったら聞きたいことがあったんだよ!」
霧島は俺に向けて勢いよく話しかけてきた。
「半年くらい前に41階層で変異体が出たんだけどさ、あれ倒したのあんただよな!?」
「ん?...ああ、そういえばそんなことあったな。ゴーレムの変異体だよな?それならたしかに俺が倒したぞ。」
何の話かと思えば、半年前の話しだった。何故そんなことを?と思ったが、そういえば烈煌四雅はその時に変異体の生み出したゴーレムと戦って、撤退していたんだったか。
俺のその言葉を聞き、霧島は嬉しそうな笑顔で指を鳴らした。
「やっぱり!当たってた!いやな、実はあの時撤退の直前に、ゴーレムを軽々とぶっ飛ばしてる人影を見たんだよ。めちゃくちゃ気になってたんだけど、後日あんたが噂になってさ。絶対そうだとは思ったんだけど、どうしても確認しておきたくてさ!」
「そうなのか?結構離れてたと思うが、よく見えたな。」
「ドローンのおかげだな!上空から遠くまでうつせるから、それで見えたんだよ!地上からだとわからなかっただろうな!」
たしかあの時、気配感知などで烈煌四雅や他の探索者の位置を把握して、そこからそれなりに離れた位置で戦っていたはずだ。
だから見えていないと思ったが、ドローンなら見えていたのか。
「その時の映像さ、切り抜きにしてあげていいか?『レイ、烈煌四雅の配信にも映っていた!』みたいな感じでさ!」
「俺に不利益が出るわけじゃないなら、別にいいぞ。多分何もないよな?」
「あんたがさらに有名になるくらいだな!それと、それを映した俺もちょっと話題になる!」
「まあ、それならいいかな?」
41階層の変異体のことなんて、正直今更って感じだ。80階層なり100階層なりを映しているので、別に今更41階層の映像を上げても何も変わらないだろう。
「よし!話はまとまった!リーダー、終わったぞ!」
「ああ。...そういや斗真、そんなこと言ってたな。初めましてだと思ってたけど、そこでレイと会ってたのか。」
「会ってるってほどじゃないな!遠くから見かけただけだ!」
「それでも、その時から少し接点のようなものがあったんだな。何か運命を感じるな。」
運命とは、また大げさな言い方だな。たまたまだろう。
いや、そのたまたまを運命と言っているのか?緋村はちょっとロマンチストのようなところがあるのかもしれないな。
「さて、じゃあ斗真の言いたいことも終わったようだし、今回の本題について話していこうか。」
緋村がそう言って話を切り替えたところで、全員が話を聞く体勢に入った。
41階層の変異体は、第三話、第四話の話です。
話が進んでいないので、12時にもう一話、短いものですが投稿します。




