第84話 魔力媒体
翌日、俺はしょんぼりと肩を落としながら、親方に火の玉フラワーを見せた。
「こっ、これはオリハルコン鋼———!!」
親方は泡を吹いて倒れた。慌てて駆けつけたお弟子さんが介抱して無事再起動したところ、
「坊主、何作ってんだァァ!!!」
とめちゃくちゃ怒られた。そして俺が叱られた理由を知って、今度はお弟子さんが泡を吹いて倒れた。なぜ。
グラインダーの動力問題は、あっけなく解決した。秋津には「ろくろ」があった。ろくろの上部にディスクを固定すれば、難なく駆動する。フラワーは一晩の命だった。
そして粉塵問題も解決した。水で濡らせばいい。なんて素晴らしいテクノロジー。間違っても室内で風力に頼ってはならない。しかもどうしてジェットストリームを噴射しようなどと考えたのか。俺は馬鹿か。
あとスキルポイントについては、ろくろで研磨してもちゃんと得られた。時間当たりのポイント加算は手磨きと同じだったが、なんせ加工に骨が折れる素材の研磨も楽々だ。高いポイントが得られる素材を研磨することで、スキルポイントウハウハ。急遽設た足踏みろくろを踏みながら、俺は上機嫌だった。
そして更に三日。かなりの媒体が貯まった。水晶、ルビー、サファイア。アクアマリン、エメラルド、トパーズ、アメジスト。もちろんダイヤモンドも。魔力を込めない無属性のものから、属性魔力を満たしたものまで。大体思いつく限りの宝石は削ったと思う。しかしもともとは、短杖を作るために研磨したんだ。これは一度試射してみなければなるまい。
というわけで、合間合間に用意しておいた本体に魔力媒体をセットして、各属性一本ずつ短杖を作成。晴れてテラスハウスでブッパすることとなった。立会人はアレクシス様。なお彼がお気に召した杖は、プレゼントすることになっている。
「レベル1からだよ、クラウス。慎重にね?」
自分も撃ちたくてウズウズしているアレクシス様。しかし初撃は製作者からだろうということで、譲っていただいた。
俺が最初に削ったのは水晶。そして次に、魔力を込めていないルビーに、魔力を込めたルビーだ。順番で言えば水晶から試すべきなんだろうけど、俺としてはルビーの威力の差を知りたい。というわけで、まずは魔力を込めてない方のルビーの杖を構え、振るった。
「ファイアーボール」
ゴオオオオ、ちゅどーん。
杖の先からバレーボール大の火の玉が飛び出し、勢いよく飛んだかと思うと、はるか向こうの岩山に命中爆発した。
「「…」」
ちょっと待て。俺は今まで、どうして杖を使おうと思わなかったのか。ビジュアルは格好いいけど、いちいち懐から出して構えるなんて面倒だ、などとタカを括っていた。しかしこの精度、この威力よ。ただのファイアボールが何倍にも膨れ上がって、レーザービームのようにまっすぐ飛んだ。杖ってマジすげぇな。みんなが使うわけだ。
しかし問題点は一つある。本体の木の部分が、火の魔力に耐えきれずに燃えてしまったのだ。慌てて手を離したので火傷は免れたが、これではいけない。何か不燃性の素材に変えなければ。しかし金属だと、やっぱり持ち手が熱くなってしまう。親方に相談しなければ。
「…ははっ。クラウス、これは失敗だねぇ…」
「まったくですアレクシス様。本体に相応しい素材を探さないと」
「そこじゃなくて」
おかしい。オリハルコン鋼にグラインダー、そして出来上がった杖。俺としては、最近調子がいいなって思ってたんだけど。
「キイイ、お前は次から次へと…!」
スパコーン。
ディートリント様のハリセンが炸裂する。ハリセンは音だけ大きくてちっとも痛くないんだが、どうして彼女はブチギレモードなのか。
「最近の!功績は!全部ベルントに!付けておけばいいと!思ってましたのに!」
スパコーン。スパコーン。スパコーン。
「こんなの、世に出せるわけが、ないでしょおおおーーー!!!」
スパコーン。
「まあまあ大丈夫だよ、ディー。幸い、魔力媒体はイ=ソノ親方たちしか見ていないわけだし、ね?」
アレクシス様が執りなしてくれる。しかしお灸を据えるために彼女を召喚したのはアレクシス様なので、マッチポンプかもしれない。ディートリント様は、これらの魔力媒体がどこかに漏れでもしたら大戦争になるかもしれないとひどくお怒りだったので、とりあえず秘匿の方向で。せっかく各種取り揃えて制作しておいたのに、深い悲しみ。
「なんでお前が被害者みたいな顔をしているのです!」
スパコーン。




