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スキルが生えてくる異世界に転生したっぽい話  作者: 明和里苳
第7章 鍛冶編

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第80話 情報交換

「兄上がすまない。ここ何百年と、人に頭を下げたことのない方なのでな」


 そういうフェベ教授も、見よう見まねのぎこちない謝罪だけど。大使は物理的に黙らせたことだし、教授からの謝罪は一応受け取ることにした。


「それで、私に何かご用ですか?」


 俺は自分自身がエルフと関わるのは御免だった。ひたすらキモいし、無礼だし。ただし、アレクシス様が彼らと交流する分には関知しない。そしてアレクシス様には、彼の判断で自由に情報を開示していいと言った。だって俺が持つ知識は、別に秘密でもなんでもないからだ。ただそのまま世間に流したら混乱するだろうから、公爵家や王家と相談して、徐々に開示を進めていただけで。だけど、敢えてアレクシス様が俺をこの場に連れて来たということは、それなりの意図があるのだろう。


「ごめんね、クラウス。だけどこれは、君にも関わることだと思って」




 この一週間、アレクシス様とエルフたちとで情報交換をしたところ、これまで俺たちが掴んでいるスキルの取得条件や伸ばし方については、エルフの持つ情報とほぼ相違なかったそうだ。ただし彼らの知識はもうちょっとふわっとしていて、具体的な試行回数や取得条件の代わりに、「雷の精霊の加護を得るためには、炎の精霊の仲介を乞う」とかそういう感じらしい。ほか、薬学などの知識は俺たちの上位互換。鉱物学や武術スキルはそこそこ。森の精霊の末裔なので、鍛治や前衛職にはあまり適性がないらしい、といったところ。


 一方アレクシス様が知りたかったこととは、「フェンケ」という人物について。先日フェベ教授が、古代秋津に精通したエルフとしてフロウル師、フィロメナ師、フェンケ姉上という三名を挙げていた。アレクシス様は、そのフェンケさんに心当たりがあるそうだ。


「えっと、僕の祖母がフェンケ・アイブリンガーっていうんだけど…」


 そこからはフェベ教授が話を引き継いだ。


 前述の三名は、前任の秋津大使、テイマー、そして考古学者だそうだ。このうちフロウルさんは、秋津大使の次に西大陸諸国を担当、その後南大陸に異動になったそうだ。フィロメナさんは、蟲使いの秋津の民と交流し、テイミングの共同研究をしていたとのこと。そしてフェンケさんは、フィールドワーク命の考古学者。しばらく秋津に留まって古代秋津史を研究していたが、その後各地を転々としていて消息不明らしい。まあ、エルフの「ちょっと旅行」って百年単位なので、誰も心配してないそうだが。


 一方アレクシス様のお祖母ばあ様がフェンケさんっていうんだけど、彼女は母方アイブリンガー家の客分として滞在してお子さんを儲けた後、ふらりと出かけたきりということだ。母親としてどうなのって気もするけど、エルフということなら事情は分かる。人間族の貴族の奥さんに収まったら、絶対揉めるに決まってる。ということは、アレクシス様のお母様はハーフエルフ、アレクシス様はクオーターなのか。


「西大陸から秋津を目指すといえば、てっきりフロウル師の関連かと思っていたが、まさかフェンケ姉上の類系とはな」


 そしてこれはアレクシス様の身の上話であって、俺には関係ない話なんだけど。


「この世界には、時折この世ならざる知識をたずさえた者が迷い込む。クラウス殿、貴殿もその一人だろう」


 おおう。やっぱ俺以外にも、転移者や転生者がいるんだ。




「我らとしても、全員を把握しているとは言い難いのだが」


 なんせエルフは人口が少ない。多くて一国に一人、だいたい一つの大陸に数名。時折、この世界にとって異質な知識や技能を備えた者を保護したり、知識の交換を行なって蓄積してきたとのこと。中には自分から転生者を名乗ってコンタクトを取って来た者もあるが、だいたいはエルフからのスカウト、そしてもちろん誰にも言わずに生涯を終えた者もいるだろうということだ。


「当初私は、そちらアルブレヒト伯が魔法陣の秘密を読み解いたかと警戒したんだ。しかしお主が転生者だったとはな」


「うぇっ」


 アレクシス様には、俺がぼんやりだが別の世界の記憶を持っていると告げてある。それは例のテラスハウス組もみんなご存じだ。彼の判断で情報は伝えて良いと言ったけど、転生のことまでは———


「ふふ、やはりな。秋津行きを希望したのが貴殿と聞いて、そうだと思っていたのだ」


「へ?」


「クラウス、表情が正直過ぎだよ…」


 しまった、引っ掛け問題だったのか。


「迷い人のうち、我らエルフを見て自ら転生者を名乗る者は、なぜか秋津を目指す傾向にある」


 ははっ。秋津には、既に先輩がいっぱいいたんだな。分かる。

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