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スキルが生えてくる異世界に転生したっぽい話  作者: 明和里苳
第7章 鍛冶編

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第77話 婚約

 さて縁談が決まったと言っても、相手は内親王殿下。婚約の色々が整うまで、ほぼ半年ほどかかるそうだ。


「足止めしたつもりなんじゃろうのう」


 そう。普通に船旅をすると、秋津からギルランダを往復するには半年では足りない。ちょうど「一旦帰る」が出来ない期間を指定してきたわけだ。秋津の皆さん、アレクシス様がヒヒイロカネの出どころを知っていると踏んで、囲い込みにシフトチェンジ。まあ、俺たちは転移でいつでも移動出来るんだけど。でも、


「姫様、こう足元に風遁を出してしゅるしゅると」


「ぬう、わらわにはまだ難しいぞよ」


 こうして二人がキャッキャウフフしているのを見ると、まあいっかなって思う。


「ベルントが僕の手を離れるのは、ちょっと寂しいけどね」


 アレクシス様は、なんだか娘を嫁にやるような顔をしている。実家に問題があった彼は、成り行きとはいえベルント様を従者に迎え、共に長い年月を過ごして来た。単なる主従を超えて、相棒のような家族のような、心を許せる数少ない存在だったに違いない。そりゃあお兄ちゃん取られたみたいで、ちょっと切ないよね。


 しかし、ベルント様が黒髪のじゃロリ幼妻おさなづまがストライクゾーンだとは知らなかった。アレクシス様との絆の深さが窺える。そして姫様が大丘越前的な渋い系のイケオジがタイプだったとは。ちょっと地味で老け…落ち着いた感じのベルント様と、ベストカップルだ。もちろん婚約したからといって、いきなりラブラブ男女交際は御法度だ。コルネリウスは15歳で成人、秋津も同様。そして法的に成人したからといって、本格的な結婚生活はもっと後。現に寿炎帝も皇后様と婚約結婚したのはずっと前だけど、お二人の間にお子様はいない。まだ皇后様がお若いかららしい。


 ベルント・バッハシュタイン30歳。婚期を逃しに逃し、やっと決まったかと思ったら本格的結婚生活はもっとずっと後のようだ。ドンマイ。楽しそうだから良しとしよう。




 秋津滞在が決定したので、俺たちは引き続き思い思いに過ごすこととなった。お爺様は山へ芝刈り…じゃなくて訓練場へ。ベルント様も、ジュナ姫様とご一緒に。アレクシス様は引き続きエルフたちのもとへ。そして俺は刀剣工房へ。


「おう坊主、来たか!」


 何日か通っている間に、親方やドワーフの皆さんとはすっかり打ち解けた。なんせ彼らには、朝廷経由で玉鋼とヒヒイロカネが提供されている。しかも俺たちが蒸留技術と神の水(錬金で作った純粋なエタノール)の出所だという認識だ。


 デルブリュックと秋津との差は、適切な距離感だ。


 彼らは、同胞がデルブリュックで俺にしつこく迫って、俺たちが出奔する羽目になったことを悔いている。確かに蒸留技術と奇跡の酒は、ドワーフたちの正気を失わせるのに十分だった。しかし肝心の協力者を逃した失態は大きい。


 デルブリュックからイ=ソノ親方のもとに蒸留器の設計図が届いたのは、一年半前。その後、ナカジマ親方からは度々蒸留器の改良案、そして蒸留所の発足や周辺ドワーフたちの集結の流れについて書状が届いた。


 イ=ソノ親方とて、デルブリュックに馳せ参じたい思いは山々だった。しかし本国と秋津朝廷との盟約により、おいそれと京を離れるわけにはいかない。親方は蒸留器の改良に様々な提案をしつつ、極秘で送られてきたヒヒイロカネを使って実際に蒸留器を組み、秋津の弟子たちと火のように魂を焼く酒に大歓喜した。


 親方にとって幸運だったのは、俺たちが向かった先が秋津だったことだ。俺たちの動向を掴んだナカジマ親方から喫緊の書状が届き、晴れて秋津京でご対面となったわけだ。


 こういう経緯があり、彼らは俺たちに弟子入りしろとか神の水を出せとか、しつこく無理強いはしない。もちろん要望としては伝えて来るが、それだけだ。そして無理強いされるのでなければ、俺だって鍛治スキルを伸ばすのはやぶさかじゃない。


 俺は鑑定スキルを使って蒸留のアドバイス。彼らは工房の片隅でハンマーを振るう俺にアドバイス。Win-Winだ。これがデルブリュックで実現していれば、外交特使の名目で出国なんかしなくて済んだかも知れないのに。


 しかし秋津まで足を運んだお陰で、念願の交易路が成立した。他にも、道中操船技術の習得にクラーケン討伐。それから、ベルント様の婚約も。秋津に来て良かったことはたくさんある。


 お陰様で、鍛治スキルは随分レベルが上がった。もちろん、長年槌を握る親方やお弟子さんたちには到底及ばないけど。


 ドワーフは力が強い。重いハンマーを軽々と振るい、硬い金属の加工すらものともしない。鍛治は物理スキル、武術と同じだ。加工に骨が折れる素材を相手にするほど、スキルポイントが多く手に入る。しかし、自分の力量以上のものを相手にしてもポイントは入らない。俺は自分の身の丈に合った銅のナイフを、コツコツと量産している。


「やっぱお前ェさん、この道が向いてるぜ」


 いつも厳しい親方がニヤリとサムズアップしてくれると、俺もちょっと嬉しい。デルブリュックのナカジマ親方と同じセリフなのに、距離感の違いでこんなに印象が変わるもんなんだ。鍛治、ちょっと頑張ってみようかな。

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― 新着の感想 ―
 ベルントさん、大岡越後役の俳優さん似なんですね。旧作ですよね? 私は榊原伊織役の俳優さんが好みでした!(笑)
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