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スキルが生えてくる異世界に転生したっぽい話  作者: 明和里苳
第6章 秋津編

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第75話 秋津京三日目

 秋津京三日目。出島で足止めされた一週間はあんなに退屈だったのに、一転過密スケジュールだ。今日はお爺様とベルント様と一緒に、近衛このえの訓練場へ。元々彼らに稽古を付けてやって欲しいっていうのが、みやこに呼ばれた名目だった。


 玉鋼とヒヒイロカネの供出は、ジュナ姫様にお任せした。とりあえず大内裏でインゴットを提出、後は朝廷と親方とで好きなように分配していただくことに。お役人さんたちはインゴットの出どころを聞きたそうにしていたけど、そこは姫様たちが許さなかった。なんせ鎮守府の兵士を一人でぶっ飛ばしたお爺様に、何百年と朝廷に君臨するエルフを呆気なく降した俺。国賓としてもさることながら、割と災害級の戦力と認識されているようだ。


「土台、お主らと互角に渡り合おうとするのが間違っておったのよ…」


 姫様はちょっと遠い目をしている。いや、お爺様はともかく俺に関しては、大使がちょっとアレだったっていうか。


「ぬははぁ。このディートヘルム、お主らに引けを取るほど耄碌してはおらんぞぉ!」


 どかーん。「「「うわー!!!」」」


 親の顔より見た光景だ。そもそも4歳で王都に出てから、実の両親とはほとんど会ってないしな。今でも時折テラスハウス経由で足を運ぶけど、兄たちはそれぞれ所帯を持ち、妹は家事手伝い、弟はまだ小さい。この間、下にもう一人妹が生まれて、母は家事に育児にてんてこまい、父は農業に狩猟に忙しくしている。だいたい農家には、一人一人の子供に手をかけて育児をするような余裕なんてないんだ。みんな俺のことを忘れたわけでも、家族としての親愛の情がないわけでもないんだけど。そういう意味では、義理の両親であるアレクシス様やディートリント様たちの方が、よっぽど家族らしいと言える。


「クラウスよ。退屈かえ?」


 ぼんやりしていた俺に、突然声を掛けたのはジュナ姫様だ。彼女はさっきから隣でベルント様と何やら話していたが、退屈なら俺もどうだっていうことだ。


「———隠密寮の方とですか?」


 主要メンバーが不在の今、ジュナ姫様と直接交渉出来るチャンス。そんなベルント様がここぞとばかりに希望したのは、忍者との面会だった。お付きの人は「そんな、影の者を表に出すなど」と慌てていたけど、姫様は「まあよいではないか」で黙らせ、「ついてまいれ」と近衛の兵舎へ。




 兵舎とはいえ、近衛はそれなりのお家柄、身分のしっかりした子弟で構成されている。建物の造りは鎮守府とそう変わらないが、中身はどっちかっていうと迎賓館に近い。通された応接室は、ちょっとした既視感。しばらく前に大使と対面したトラウマが蘇る。俺たちが大人しくお茶を啜っていると、間もなく黒装束の青年が通された。


「お呼びでしょうか」


「うむ。コルネリウスの客人が、隠密と面会を希望されておったゆえな」


「失礼ですが、お名前は」


「我らに名はありません」


「普段のお仕事の内容は」


「要人警護と警邏が主となります」


 ベルント様からの矢のような質問に、手短に回答する隠密。普段寡黙なベルント様だが、一度何かにハマると途端に饒舌になる。一見ポーカーフェイスを装いながら、お目目がキラッキラだ。姫様と俺は、会話のラリーを黙って見守る。


 しかしなぁ。この黒装束のお兄さん、完全に下っ端だろう。本職さんなら今も天井裏にいらっしゃるし、何ならこの通訳のおじさんもお茶を運ぶメイドさんも、みんな忍術スキルや斥候スキル、中には暗殺術なんて危険なスキルを持っている。


 てか、斥候スキルや暗殺術はどこで取れるんだろう。大抵のことは魔術スキルなんかで代用が効くけど、生やせるもんならどっかで生やせないかなぁ。鑑定とアカシックレコードのスキルでヒントが得られることもあるけど、この辺のスキルは今のところさっぱりだ。


 鑑定やアカシックレコードは、レベルが上がるほどに詳しい知識を教えてくれるが、やはり俺の理解度によって得られる情報量が違う。知らないことは調べようがないし、俺の馴染みのないことに対してはほとんど情報が得られない。そしてレベルやステータスが俺を大きく上回る相手には、鑑定が通らないのだ。むむむ。


 ぼんやりと考えを巡らせていると、「ならば訓練場で」とベルント様が立ち上がった。どうやら、実地で技術交流ということで同意を得たようだ。鼻息が荒い。本物の忍者に大興奮しているようだ。だけど、黒装束のお兄さんはベルント様よりも忍術レベルが低い。どっちかっていうと、天井裏の中堅の方とか、通訳のおじさん、それから———


わらわも忍術には興味があるでのう」


 ベルント様と黒装束さんの後を追いながら、上機嫌に呟くジュナ姫様。


 そうなのだ。ジュナ姫様も、忍術スキル持ちであらせられた。

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