表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキルが生えてくる異世界に転生したっぽい話  作者: 明和里苳
第6章 秋津編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/84

第74話 テラスハウスの一夜

 ディートリント様をアロイス様の待つデルブリュック城に送り届けた後、俺とアレクシス様とはテラスハウスに戻ってきた。お爺様とベルント様は、秋津の酒と肴で一杯やるそうだ。


 手に土を出して粘土に変え、ルビーとサファイアにしてから魔力を込める。そして同量ずつ手にしながら、酸化アルミニウムとクロムなどの不純物を鉄に置き換える。ちょっと集中を要するけど、慣れてしまえば流れ作業だ。黙って没頭する俺に、アレクシス様がぽつんとつぶやいた。


「今日、フィル大使に会ってきたんだけどさ」


 そっか。彼は彼で、大内裏に足を運んだんだっけ。アレクシス様は、クリーンのスキルの噂を聞きつけて、辺境まで足を運ぶ魔法馬鹿だ。無遠慮で距離感がおかしいフェベ教授とフィル大使。俺は非常に苦手だが、アレクシス様にとっては知的好奇心の方が勝るのだろう。


「何から話したらいいかな。この間、応接室で大使が気絶していた間、教授と話していただろう?」


「ああ、そんなことがありましたね」


「その時に、心当たりのある名前があったんだ。フェンケっていうんだけど———」


「ああ、言ってましたね。お、出来た」


「はは。ヒヒイロカネも、君の手にかかったら造作もないね。———ってそれは?」


「はい。鑑定したら、『魔鉄』ですって」


「魔鉄だって???!!!」




 ちょっとした出来心だったんだ。火属性のルビーと、氷属性のサファイア。これを鉄にしたらヒヒイロカネだろう。ならばアメジストに闇属性を込めて鉄にしたら、何が出来るかなって。


「まったく、君の突拍子のなさには脱帽だね!しかし、魔鉄がこんなに簡単に手に入るなんて」


 そう。イ=ソノ親方に会った時、ベルント様が聞かれたんだ。彼が作った不恰好なアルミの日本刀もどき、これを綺麗に打ち直してもらえないかって。そしたら、


「馬鹿言っちゃいけねェ。刀ってなァ、鋼って決まってるもんだ」


 それで納得した。どうしてヒヒイロカネの刀はあるのに、ミスリルの刀や、アダマンタイトの刀のことは聞いたことがないんだろうって。地金が鉄なのが条件なんだ。


 火・氷属性のヒヒイロカネの刀があるんだ。じゃあ、他の属性の刀って作れないのかなって。聖属性の魔力を込めたダイアモンド。これがアダマンタイトで、炭素を銀に置き換えればミスリルになる。ならば、銀じゃなくて鉄に置き換えたら?


 結論は、「聖鉄」という物質になった。だけど鉄と聖属性の相性が良くないのか、聖属性魔力の定着率が低い。ミスリルに比べて20パーセントくらい。ちょっとは残ってるけど、後の8割は流れ出ちゃうっていうか。


 じゃあ、火属性単体ならどうだろう。魔力を込めたルビーだけを鉄に置き換えたら、炎鉄。サファイアだけだと氷鉄。どちらも聖鉄と同じ、ミスリルと聖属性ほどの相性の良さは見られなかった。ヒヒイロカネが火と氷の両方の属性を秘めているのは、それが鉄と馴染むから。ちゃんと理由があったんだ。なお光、土、風、水においては、魔力の残存率はゼロ。相性のいい別の金属を探さなければならない。


 そして最後、闇属性を試してみたら、「魔鉄」が出来たというわけだ。魔鉄、黒光りしていて格好いい。魔王とか暗黒騎士とかが持ってそうだ。込める魔力のレベルによって、付与する状態異常が異なりそう。待って、スリープを込めれば「いざ⚪︎いの剣」になるのでは?!




 真剣な話を生返事で流されていたことも忘れて、アレクシス様は大興奮で紙とペンを取り出し、それから二人して実験に没頭した。いくつかの金属を試してみて、土属性はタングステン、風属性はアルミやチタンなどと親和性が高かった。どうも土は硬い金属と、風は軽い金属と相性がいいらしい。いずれも鉄じゃないので日本刀にはならないが、他の武器防具なら作れるだろう。光は、金とプラチナ、それからチタンも多少。安定していて光沢を失いにくいのがいいんだろうか。それから、水属性は不明。逆に雷属性は、電気を通す金属ならなんでも相性が良かった。


 雷属性は、トパーズに魔力を通して作るオリハルコンから錬成できる。だけどオリハルコンって、俺の記憶では真鍮説が有力だった気がするんだけど。そう思ってトパーズを真鍮に加工すると、なんと名称はオリハルコンのままだった。トパーズ状態でも真鍮状態でもオリハルコンなんだ。だけど鉄に加工すると、「雷鉄」と名前が変わる。雷属性の刀が打てるのは嬉しいけど、属性と金属との組み合わせで名称が変わるのは奥が深いな。しかも対象が合金まで広がると、ちょっとやそっとではコンプできそうにない。しかし、


「すごいねクラウス!可能性は無限じゃないか!」


 さすがに無限ではないと思うが、アレクシス様が楽しそうなので、いいか。その夜俺たちは、ひたすら徹夜で錬金大会を繰り広げていた。




「で、申し開きは?」


「「ございません」」


 翌朝。ディートリント様がテラスハウスにお越しになって、徹夜明けでハイになっている俺たちとおびただしい魔法金属を発見。もれなくハリセンの餌食となった。そして秋津では、ヒヒイロカネと純鉄以外の供出は固く禁じられた。雷神剣なんか、絶対ロマンだと思ったんだけどな。こうなったら自力で鍛治スキルを上げるしかないか。


「クラウス、お前なにか良からぬ考えを巡らせていますわね?」


 ぎくっ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ