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スキルが生えてくる異世界に転生したっぽい話  作者: 明和里苳
第6章 秋津編

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第70話 今上帝

「此度はお招きにあずかり光栄至極。秋津の兵の練度には感服しましたわい」


「これはこれは、聞きしに名高い前デルブリュック公のお褒めの言葉。大将軍、大義であったな」


「ははっ」


 偉いお貴族様同士が、目の前でお貴族様らしい会話を繰り広げている。平民の俺からすると、とてもシュールだ。今上帝はまだ年若く、アレクシス様やディートリント様と変わらない、いやそれよりもお若く見える。黄色人種モンゴロイドだからだろうか。しかし彫りの深さや顔の造形などは、記憶の中にある日本人よりもちょっとはっきりしている。黒髪黒目、目元の涼やかなイケメンだ。寿奈内親王のお兄ちゃんらしい。


 そして皇后陛下は、寿炎陛下よりももうちょっとお若い感じ。JKといったところかな。


「コルネリウスからのお客人を、帝はそれはそれは楽しみにお待ちしておりました。料理はお口に合いまして?」


「ええ、皇后陛下。さすがユニークな歓待をされるユニークなお国柄。とってもお見事ですわ」


 ほほほほほ。ディートリント様のチクリと刺々しいレスポンスに、皇后陛下が苦笑い。あらやだ、こっちはちょっと緊張感が漂ってる。まあ仕方ないよね。姫様とエルフがやらかしたことは、両陛下の耳に入っているようだ。当然、この席にエルフの姿はない。俺たちは外交特使として秋津を訪問したのであって、彼らは部外者だからだ。なお、俺とアレクシス様はひたすら沈黙。アロイス様はお利口さん。そしてベルント様はお爺様の側の末席、あっちは脳筋同士で和やかな感じだ。代わって欲しい。


 それにしても、味噌と醤油を求めて気軽に秋津を目指して来たけど、面倒臭いことになっちゃったな。確かに偉い人とコネでもあればと思ってたけど、まさかトップとランチとか考えてなかった。しかし今上帝寿炎(じゅえん)ってお名前、なんだか落語家みたいだ。


「ところでクラウスとやら」


「えっ、ひゃいっ」


 よそ見してたら噛んだ。この距離でダイレクトパスが来るとは思わなかった。




 寿炎陛下のおっしゃることには、大使と手合わせして勝利した俺に何か褒美を取らせたいと。緊張して噛み噛みだったけど、俺からは定期的に秋津と交易がしたいと申し出た。帝からの返答は、俺に関税フリーの自由交易権と出入り自由の身分証明、そして出島とみやこに拠点とする邸宅を与えるというものだった。


 後から聞いたところ、これらは秋津側が俺たちの入国目的や意向を調べ、事前に用意されていた。でなければ、こうもすらすらと褒美を渡されるわけがない。本来は、「その代わり宝石絵巻の新作を発掘したら、うちにも優先的に回してちょんまげ」って条件が付く予定だったんだけど、ジュナ姫と大使のやらかしで削除。


 国交にしてはカジュアルなランチ会だけど、それでも公式の場は公式の場。陛下自ら謝るわけにはいかないから、「ごめんねこれで手打ちにしてね」ってことだ。


「これからも励むがよい。そして何か困りごとあれば、朕が力になろう」


「あのっ、そういうことでしたら!」


 俺は早速お願いカードを切ることにした。困りごと、ありますとも。アイツらがね!


「うむ…大使と教授、であるか…」


 しかしこうかがなかった。今上帝がさっと顔色を曇らせる。皇后陛下においては分かりやすく視線を外した。やっぱりエルフたちは外国籍の要人のため、秋津の法の及ばぬ存在らしい。しかもじいちゃんのじいちゃん、何代も前の帝からの相談役も兼ねているらしく、おいそれと排除も難しい。ぶっちゃけ「アイツら俺の言うことなんか聞かねぇ」だそうだ。


「あの鉄面皮にも春が来たと思うたのじゃが…」


「ジュナちゃん。クラウス様にも好みというものがありますわ」


 エルフは総じて見目麗しい。大使も教授もまるで精巧な人形のように整った造形をしている。ゆえに、長年朝廷に出入りしているフィリベルト大使は、男女問わずみんなの永遠のアイドルなのだそうだ。いや、俺からしたらただの気持ち悪いオッサンなんだけど…。


 とにかく、今上帝から身分証フリーパスと拠点が与えられた俺たちは、これで無罪放免だ。紆余曲折を経たとはいえ、秋津に来た当初の目的は、これ以上ない形で達成した。というわけで、ランチが終わったら速攻おいとまして、与えられた拠点に場所を移そう。秋津に止まるにしろ帰還するにしろ、今後の方針を作戦会議しなければならない。




 と思っていたのだが。


「やあハニー。それじゃあ新居に帰ろうか♪」


「すまぬ、兄上がどうしてもと…」


 俺たちが乗り込む予定の牛車ぎっしゃには、既にフィーレンス兄妹が乗り込んでいた。ですよね。お爺様は彼らの首根っこをむんずと掴んで放り出し、俺たちは何事もなかったかのように出発した。

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― 新着の感想 ―
 牛車、一台に何人乗り込むつもりなんだ(笑) というか何人乗れるのか気になって調べたら、四人乗りでした。でもお爺様は二人分場所取りますよね。
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