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スキルが生えてくる異世界に転生したっぽい話  作者: 明和里苳
第6章 秋津編

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第69話 飛行船

 京へはあっという間、二時間ほどの空の旅。トンボはよくテイムされており、姿勢制御も優秀。更にキャビンには風壁ウィンドウォールが展開されていた。秋津はエルフとの親交が深いようだから、この辺りは技術提携が行われているのかもしれない。


「ふっふー。我ら秋津は蟲使いの一族じゃからなぁ」


 姫様がさらっと爆弾を落とす。


「はっ?」


「古来我らは、蟲を友に共存してきた。ゆえに森人エルフらは、我らの良き隣人よ」


 フェベ教授がこくこくと頷く。


「そんな重大な機密を僕らに話していいんですか?」


 おお、アレクシス様のシリアスバージョンだ。普段滅多と見られないが、昨日から結構レア引いてんな。


「コルネリウスから宝石絵巻が渡った時点で、我らは秋津はコルネリウスと親密な友誼を結ぶ方針じゃった。そして今となっては、ほれ」


 ジュナ姫様、通訳、フェベ教授、そしてアレクシス様。この場にいる全ての人員の視線が注がれる。


「うふふ、クラウス。私と君との仲じゃないか。隠し事なんか無しだよ」


 フィリベルト大使が、相変わらず俺にべったりと貼り付いている。友誼よりもまずコイツをどうにかしてほしい。




 基本的に半鎖国の秋津国内では、諜報対策はほぼ必要ない。今のところ権力闘争らしきものもなく、天皇制のもと平和な国家運営が為されているようだ。しかし、内親王たるジュナ姫様と長年大使を務めるエルフの重鎮、そしてその類縁が一堂に会するとなると、飛行船の船室は最適な場所となるだろう。


「鎮守府の応接室も、それなりのしつらえじゃったんじゃが。やらかしたのう、フィルよ」


 ジュナ姫様が大使にジト目を送る。


「まあまあ、ジュナ。些細なことさ。それよりもクラウスだよ。コルネリウスには、こんな逸材がいたなんて」


「すまないクラウス。兄上は一度執着したらしつこくて」


「教授よ、何を他人事のように申しておる。フィルの手引きがあったとはいえ、不法入国じゃぞ」


「め、面目ない」


 応接室でちょっとした()()()()()()があった後、俺たちはそのまま演習場での勝負になだれ込んでしまった。あの時点では、天井裏の影さんからの報告が間に合わなかったのだろう。一晩経って、あそこで何があったのか、姫様は把握していらっしゃるようだ。教授の存在は完全に秋津非公認、フィリベルト大使は事後承諾を取るつもりだったみたいだけど。


「まあ、やらかしたのはわらわも同じじゃ。これらと同じく新しい知識に目がなくてな。大事な機密に不躾ぶしつけな質問、すまなんだ」


 そう言って、姫様は俺たちに向かって頭を下げた。確かに謁見の後の初顔合わせで、彼女は宝石絵巻ことタブレットの()()の経緯をカジュアルに質問して、ディートリント様が激怒された。あの場で彼女が抗議の意を示したのは正しい。一行の代表ディートヘルム様が不快の意を示したら会合は決裂するし、矛先を向けられたアレクシス様が戸惑って対応できないとなれば、次に身分の高いディートリント様がストップを掛けるしかない。そして姫様もあの場でやらかしたことを自覚して、謝罪なさっている。俺の秋津語理解疑惑でうやむやになっちゃったのと、今回は引き合わせたエルフが更にやらかしたので、再度頭を下げる羽目に。いずれもいくら非公式の場とはいえ、国の代表たる姫が明確に謝罪を述べるのは非常に重い意味がある。


「頭を上げてください、姫。謝罪は受け取りましたから、どうかお気になさらず。ねっ、クラウス」


「そうですそうです。別に機密でもなんでもありませんので、気にしないで頂けましたら」


「おお、そう言っていただけると———機密って、えっ?」


 あれっ?みんなの視線が俺に集まっている。なんだか微妙な雰囲気に?


「ははっ、クラウスならそう言うと思っていたよ。心が広いね、マイハニー」


「「「お前は謝れ」」」


「め、面目ない」


 聞いちゃいない大使と、背後からこっそりと謝る教授。そうだお前も謝れ。




 そんな話をしているうちに、目的地のみやこに近付いてきた。はるか眼下に見える都市は山々に囲まれ、美しく碁盤の目に整備されている。うっすらと記憶にある有名観光地で間違いないようだ。飛行船は大内裏の奥で停止し、静かに着陸した。トンボのホバリング能力ハンパない。


 直接大内裏に降り立った俺たちは、大勢の官吏や女官に出迎えられ、そのまま豊楽院ぶらくいんという建物に案内された。飛行船の別室で武官たちと楽しく歓談されていたお爺様とベルント様は、そのまま通訳を連れて近衞の演習場へ直行。残りの俺たちは、客室に案内してもらった。なおフィリベルト大使とフェベ教授は、とりあえず引き剥がして撤去していただいた。ハウス。


「…もう帰りたいですわ…」


 客室で意識を取り戻したディートリント様がボヤく。リンダあなた疲れてるのよ。


「まあまあディー、蟲力ちゅうりょく飛行船なんてコルネリウスにいたら一生」


「ヒッ!あんなおぞましいもの、二度と乗る必要なくてよッ!!」


「あっはい」


「ぶんぶん〜」


 巨大なトンボにご機嫌なアロイス様の一方で、発狂寸前のディートリント様。いくら秋津国が俺たちを歓迎する意思があろうと、これはもう帰還した方がいいかも分からんね。


 しかし、俺自身はこの国に非常に興味がある。まず、上空から見た街の外観は日本の古都にそっくりなのに、いざ大内裏に通されると、中は洋風建築だ。神社の社務所って言えば通じるだろうか。そもそも出島が時代劇村みたいだったのに、鎮守府は洋館。秋津の文化レベルや生活レベルは、一体どうなっているのか。


 それから、姫の言う「蟲使い」ってやつだ。彼らはテイマーなのか?この世界にはテイマースキルが存在するのか。俺だってこれまで、村では家畜の世話、旅の途中には馬の世話もしてきた。しかしステータス画面には、テイミングのテの字も見られない。固有スキルなのか?それとも俺でも取れるんだろうか。生やせるなら生やし方を教わりたい。


 問題は、あのエルフたちだけど———相手は異種族の要人だ。下手に危害を加えるわけにはいかないし、かといって好き放題させるのも癪に障る。どうにか穏便にお引き取り願えないだろうか。やっぱり秋津観光とテイミングスキルを諦め、さっさととんずらするしか。


 京までの招待には応じた。今頃ディートヘルム様のブートキャンプも絶好調だろう。義理は果たした。アレクシス様と帰還の算段でも立てよう。そう思っていたのだが。


「秋津へようこそ。朕が寿炎じゅえんである」


 昼餐の席に呼ばれた俺たちを、お誕生日席で迎えたのは、今上帝だった。

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― 新着の感想 ―
 ここにも可哀想な男児(主人公)がいて、シンクロニシティに笑いました。  普通の貴族には出て来そうにないですけど、子育てスキルもありそうですよね? 育つと指導とか教導になったり。クラウスは村時代から…
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