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スキルが生えてくる異世界に転生したっぽい話  作者: 明和里苳
第6章 秋津編

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第66話 応接室

 ちょっと待って。ここでエルフとか。いや、ウダールにも監視役のエルフがいたんだ。他の国家にも食い込んでておかしくない。しかし、ジュナ姫様が満面の笑みで意気揚々と紹介したのがよりによってエルフとか。しかもフィーレンス姓だ。ウダールのフィーレンス教授と、家族なのか?


「はじめまして、コルネリウスの大使。改めて、私はフロタユスが大使フィリベルト・フィーレンス。フィルと呼んでくれたまえ」


 おおう。アレクシス様はアレクシス様で王子様キャラなんだが、こっちはこっちでキラッキラのイケメンだ。例のフェベ・フィーレンス教授が基本表情筋死亡系だったのでギャップがすごい。エルフってこんなに自然な愛想笑いが出来るんだ。


「お主らが宝石絵巻の発掘者と知って、フィルに相談しておったんじゃ。我らではとんと仕組みが分からんでのう。フィルはあらゆる魔術に造詣ぞうけいが深い。きっとお主らの研究の助けになるじゃろうて」


「あ…ありがとうございます…?☆」


 アレクシス様の笑いが引きつっている。ウダールでジェラルド様にお叱りを受けた通り、彼は貴族的な駆け引きや振る舞いにおいてはまだ未熟だ。平民の俺は言わずもがな。ジュナ姫様は純粋にご好意でフィーレンス氏を俺たちに引き合わせてくれたみたいだけど、ここはブチギレ覚悟でディートリント様についてきてもらえばよかったかもしれない。


「我らの耳に入れたくない話もあるじゃろうから、わらわは退席するとしようぞ」


「ありがとう、ジュナ」


「では客人、ごゆっくりのう!」


 お通夜の俺たちを置いて、彼女はご機嫌で出て行った。姫様ェ…。




「さて、本題に入ろうか。君たちが発掘したというこの宝石絵巻…そちらではタブレットと呼ぶのだったかな。これは一体どこで?」


「あー…」


 ああ始まった。いきなり尋問タイム。アレクシス様は愛想笑いしたまま目を泳がせている。発掘どころか、元は俺が作り出したものだ。アレクシス様は功績を肩代わりして矢面に立って下さっているに過ぎない。ここは俺が応対しなければならないだろう。


「あっあのう、ちょっといいですか?」


「ん、何だい?」


「フィーレンス大使は、ウダールのフィーレンス教授とご関係が?」


「フェベと会ったのかい?お察しの通り、僕らはフィーレンスの森の氏族。一応、血縁ではあるかな」


「いえ、会ったのかい、ではなくてですね…」


 さっきから視界の隅にチラつく、不自然なひずみ。うん、いるね。


「うう…だから言ったであろう、兄上。この子供は侮れぬと…!」


 動揺した声とともに現れたのは、フィーレンス教授。光属性と闇属性、レベル3のウォールを重ね掛けした光学迷彩。ウダールで密航してきた時と同じスキルの組み合わせだ。


「ふむ。未だ信じがたいが、フェベが言っていたことは本当だったようだね」


「えっと、この様子ではフィーレンス教授が私たちを待ち構えていらしたようですが」


「ち、違うクラウス殿。我らはそのような」


「ふふ、驚いたかい。私たちエルフ族には、君たちのあずかり知らぬ秘術と叡智の蓄積がある」


「兄上!」


「いかに君たちがその神秘の一端に触れたとはいえ、私たちを侮らないことだ」


 あれれ。なんだか不穏な空気になってきたぞ。フィーレンス大使、杖持ってない?


「クラウス、下がって」


 しかし俺が腰を浮かせる前に、アレクシス様が俺の前に割って入った。


「なんの真似かな、アルブレヒト伯?」


「僕が尋問を受ける分には構わない。だけど、クラウスに杖を向けるなら話は別だ」


「アレクシス様?」


「私は杖を取り出しただけだが———よろしい。そちらがその気なら、お相手しようじゃないか」


 テーブルを挟んで立ち上がった二人から、おびただしい魔素の圧が押し寄せる。ちょっと。ここ、秋津の迎賓館ですけど?


「僕だってドラゴンスレイヤーの端くれ、舐めてもらっては困るね。———クラウス、君は転移だ。ここは僕に任せて」


「ほう、雷精に氷精の加護か。面白い」


「あああ兄上!気を確かに!」


 目の据わった二人。慌てるだけの教授。ああもう面倒臭いなぁ。


「やめろって、言ってるん、ですけど?」


 俺は懐から小石を三つ取り出し、彼らの眉間に向かって投げた。




「「面目ない」」


 シュンとするアレクシス様とフィーレンス教授。あわや応接室で魔術大戦が始まるところだった。


「ちょっと痛かったよクラウス…」


「ちゃんと治したじゃないですか」


 だって二人は既に詠唱寸前で、ダメージでも入れないと止まりそうになかったから。ちなみに投げたのは普通の小石です。オリハルコンを投げると迎賓館が消し炭になっちゃうしな。


「すまんな。兄上は三度の飯より魔法戦が好物でな…」


 ちなみにダブルフィーレンスには、気絶している間にアダマンタイトの手錠を掛けておいた。そして大使の方はおねんねさせたまま、教授の方だけ治癒して起こして差し上げた。


「それで一体、僕たちに何の用事が?」


「あうっ…そ、そのっ、悪い話ではないのだ!」


 ウダールではイアサント様に、秋津ではジュナ姫に遠慮気味だったアレクシス様。しかしフィーレンス大使が俺に杖を向けた途端、コルネリウスの英雄の顔を見せたアレクシス様。多分まだアレクシス様のことをちょっと舐めてたフィーレンス教授は、たじたじと言い訳を始めた。

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