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スキルが生えてくる異世界に転生したっぽい話  作者: 明和里苳
第8章 一時帰国編

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第103話 名誉魔導伯たちのその後

 ディートリント様が記憶水晶に魔力を通すと、そこには満面の笑顔のディアナ王妃が。そして彼女の向こう側には、顔の上に薄布ヴェールを掛けられてぐったりしているフィーレンス名誉魔導伯。


 実は、王妃のプライベートサロンで脳汁、もとい光美容マッサージを施術しているのは王妃自身だ。これまで、脳汁を第三者に伝授するどうか随分と議論された。信頼できる家臣に習得させてみてはどうかと。しかし他の魔法陣はともかく、これだけは知られてはまずいと、結局俺とディートリント様、王妃様、デルブリュック公爵夫人、そして前公爵夫人ギルベルタ様だけの秘術に留めている。後は「光属性でマッサージすれば効く」とだけ知らされ、それっぽくやってるまがい物だ。多少効果は出るが、本物には遠く及ばない。


 もともと脳汁は、クリーンから派生したリフレッシュから始まった。これを脳に照射しながらツボ押しとリンパマッサージをしたものが脳汁だ。まずクリーンを自力でマスターするのが必須条件。それから疲労物質を除去するようにイメージしながら、皮下の深部までスキルを届けなければならない。ここがリフレッシュを習得する上で、一番難しいところだ。幸い、医療ドラマを思い出してタブレットに焼いておいたため、人体の構造についてわかりやすく説明できたのが良かった。老廃物をイメージして、シュッとしてファー。これを直接脳にやるものだから、中毒性が半端ない。


 女性陣はこれをお互いに施術し合って、実年齢が行方不明だ。頭部だけでなく体中にリフレッシュを施してキラッキラしている。しかもディートリント様とギルベルタ様が龍眼ロンイェンで本場のツボ押しを習得されて、いよいよ効果が爆上がり。この間、久しぶりにイクバールでジゼッラ様にお会いしたが、マジで誰だかわからなかった。とうに70を超えた先々代侯爵夫人が、30代そこそこにしか見えない。そのうちステータスに「不老」でも出るんじゃないだろうか。


 というわけで、この脳汁にハマったら最後。脳汁の魔力から抜け出すのは不可能だ。




 それともう一つ。次のタブレットには、フィーレンス伯が研究室の隣の仮眠室のベッドに横たわり、ポテチを齧りながら大河ドラマを見ている様子が映し出された。なお、「塔」の研究は国家機密に当たるため、研究室の様子は時折録画されることがあると、契約書に小さく書かれている。


 人間、苦痛にはある程度耐えられても、快楽を我慢することはできない。一度与えられた快楽を取り上げられるなど、到底耐えられないのである。


 フィーレンス伯の給金は、向こう二年分くらい脳汁こと光美容マッサージとファッションアイテム、化粧品のローンと消えている。その上タブレットも他の貴族と同様、有償貸与だ。基本、宮廷魔術師団員には寮が与えられ、食事も無料、制服も貸与だ。給料を使い切っても生活は出来る。彼女のローンが何年分に膨れ上がるのか、見ているこちらが心配になる。


 なおイアサント様はもっと簡単だった。旧知の文官が綺麗なお姉さんのいる酒場に案内したところ、あっという間に丸裸だそうだ。なお彼には前科があって、留学中に同じことをして親御さんが尻拭い、からの婚約解消。そして「今度やったら平民堕ち」の通告を受けていたらしい。


 幸いコルネリウスで名誉魔導伯の地位を得たわけだが、この「名誉」ってのが曲者で、実際は役職に就いている間だけの臨時契約公務員に過ぎない。借金がかさめば平民どころか借金奴隷もありうるわけで、散財を重ねる限り職務を抜けて逃げ出すことはままならない。


 飼い殺し。恐ろしい響きだ。しかし数々の名誉には事欠かないので、熱心な魔術師たちと共に日々の研究を頑張っていただきたい。




 さて、エルフの片方は片付けた。残るはキモい方だ。俺としては顔も見たくないが、アレクシス様は出自と併せてそうは言っていられない様子。あのナンチャッテ魔導伯はともかく、彼は割とちゃんとした知識人らしい。ただ人格に難があるだけで。


「やあ、戻ったね。僕の元へ」


「やかましいわ児ポ野郎」


 俺はもう最低限の儀礼すらかなぐり捨てた。10歳児に迫るオッサンなど犯罪だ。時々会談に立ち会う姫もアレクシス様も嗜めてくれるが、


「何を言っているんだ。人間族ヒューマンはすぐに死んでしまうんだよ?」


 そう言って聞きやしない。


「ほんの瞬きのような君たちとの時間、年の差がどうとかまごまごしていたら、すぐに過ぎ去ってしまう」


 遠い目をしてつぶやく大使。過去に何があったのかが気になったところだが、


「ちょっと100年くらい旅行に行っている間に、贔屓にしていた役者が儚くなったんじゃと」


 半目でフォローする姫の隣で、悩ましげに額を押さえて何かに浸る大使。お前は一度、ディートリント様にシバき倒される必要がある。


「さて、過去の話は置いておいて本題だ。稀有な知識と力を持つ君たちを見込んで、相談がある」


 しかしいつになく真剣な表情で、大使は切り出した。

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― 新着の感想 ―
 実は前話読むまで脳汁忘れてました(笑) 老女からの若返り、どこまで可能何でしょうね。個人的には十代、二十代からの脳汁より、ある程度年齢を重ねてからの方が美しいのではないかと思います。悪い例)エルフ
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