22.「4箇所目」勇者と魔王とアルジ
この作品はフィクションです
「あ」
「………あ!」
…ついていない。
どうやら…今日は、ついていない日のようだ。
アルジの飯を食べるために廃墟に降臨したのだが、まさか、ダイレクトにこいつと鉢合わせるとは思わなかった。
はっきり言って、こいつは苦手だ。
やたらとテンション高いし、無意味に声がでかいし、すぐ距離感縮めてくるし、なにかあるとすぐに「勇者たるもの、」って言い出すし。
勇者の血筋だかなんだか知らないが、適切な距離感を保て。勇者だと名乗るなら、尚更保て。ぐいぐい来られると、迷惑なことこの上ない。
何より、
魔王の息子である俺に、勇者が気安く話しかけてくるな。
「こんにちは魔王くんっ!!」
「………。」
間違えている。いきなり間違えている。今に始まったことではないが、だとしたら、なおのこと問題だ。
勇者が魔王に対して、こんにちは、じゃないだろ。なんだ。同級生か俺たちは。
あと、くん付けするな。なんだ。スポーツマンシップにのっとっているのか。もしくは同級生か俺たちは。
それに、なんで満面の笑顔なんだ。お前は勇者の血筋で、俺は魔王の息子。その二人が相対したんだ。もっと緊張感を持て。敵意を持ってるくらいなのが普通だろ。なんだ。博愛主義者なのかお前は。
「もしくは同級生か俺たちは。」
「え?」
「…、………。」
…つい声に出てしまった。考えすぎると無意識に声が出てしまうのは、俺の悪い癖だ。
「う〜ん…」
「………。」
何を考えているんだ。…多分、俺にとってろくでもないことだとは思うが。
「ごめんっ!!」
「!?」
急に大声を出すな…。
「生まれてきてから今までのことを思い返してみたんだけど、どう考えても、僕と魔王くんが同級生だったってことは、なかったと思うんだ。」
「………。」
当たり前だ。あってたまるかそんなこと。
「でも大丈夫!」
「…は?」
「もし魔王くんが望むなら、僕は構わないよ!勇者たるもの、他者の望みを叶える存在になるべし。父さんも母さんもそう言ってたから!」
「………。」
すさまじく嫌な予感がする。
「今この瞬間から、僕と魔王くんは同級生だ!!」
やっぱり。無茶苦茶なこと言いやがった。
こっちはそんなこと微塵も臨んでない。ただ、心の声のツッコミが声に漏れ出ただけだ。
そもそも、勇者と魔王が何の同級生になれると言うのか。
「それじゃあ、僕と魔王くんは、国立勇者養成所の同級生ってことでいいね!」
いいわけあるか。
「そんな組織があるのか人間世界には…。」
「ううん。ない!」
「………。」
とりあえず、満面の笑みで言うのをやめろ。
空気を読めない勇者。
空気を読んでほしい魔王。
現実でもあるかもしれない構図。




