21.「4箇所目」勇者とアルジ
この作品はフィクションです
「こんにちはっ!!」
良いコミュニケーションは、元気な挨拶から。
勇者たるもの、円滑なコミュニケーションは大事。
父さんも母さんも、そう言っていた。
「いらっしゃい。」
大きな鍋から、ちらりと視線をこちらに向けてそれだけ言うと、屋台の主人は、また大きな鍋に向き直った。
これが、職人特有の無愛想、というやつか。
勇者たるもの、人々のことを知らなければならない。
いい人も悪い人も、世の中には色んな人がいる。
その中で、職人、という人種は、威勢がいいか、あるいは無愛想。それが職人だ。
父さんも母さんも、そう言っていた。
…あれ、料理を作る職種の人は、職人、に分類されるのだろうか?ものづくり、という意味では、職人、だけど、料理職人、というのは、なんだかしっくりこない。
鍛冶職人。
左官職人。
料理職人。
やっぱり、料理職人、だけ、なんだかしっくりこない。
う〜ん、
その辺りのことは、父さんも母さんも言ってなかったから、よくわからないな…。
「今日はどうするんだ?」
「あ!はい!」
いけないいけない。思わず考え込んでしまった。
勇者たるもの、行動はきびきびとスムーズに。
父さんも母さんもそう言っていた。
屋台の席に座ると、一呼吸置いて、
「卵とかき揚げ入りでお願いします!」
「はいよ。」
いつもの注文を入れる。
勇者たるもの、食事は質素過ぎず豪華過ぎずを心掛けるべし。
父さんも母さんもそう言っていた。
僕の家は、代々「勇者」の家系。
勇者の家系に生まれた者は、「魔王」との戦いを義務付けられる。僕の父さんもお祖父さんも曾祖父さんも、みんな魔王と戦ってきたそうだ。
だから僕も魔王と戦うため、日々、勇者としての鍛錬を重ねている。
勇者と魔王が戦うのは、古来より定められた宿命だと、そう、父さんも母さんも言っていた。
「おまちどうさま。」
「ありがとうございます!」
スープの良い香りが、食べる楽しみを増幅させる。
主人に感謝の礼。そして、料理に感謝の礼。
勇者たるもの、万物への感謝を忘れずに。
父さんも母さんもそう言っていた。
ここ、修練の廃墟は広い。本当はちゃんと別の名前がある廃墟なのだけれど、僕は修練の場としてここを利用しているので、修練の廃墟、と呼んでいる。
屋台の主人は、廃墟の中間地点くらいにいてくれるので、ちょうどいい休憩地点だ。
勇者たるもの、適度な休みを取り、常に体調を整えるべし。
父さんも母さんもそう言っていた。
親の教えを大事にする(しすぎる)勇者…




