16.「3箇所目」アルジと上から目線と上から目線
この作品はフィクションです。
「出来たぞ。」
「うむ、待ちかねたぞ。」
水晶から切り出された自前の椅子に腰を下ろし、料理の器を受け取る。
ほのかに湯気のたゆたう器の中には、黒く、深く、色濃いスープ。そして、白色の太い麺と、しっかりと煮込まれた、魔物や動物のスジ肉の塊。
「我が味も匂いもわからぬのを承知の上で、かように手をかけた料理を出してくるとは。これはまさに、敬意だな。苦しゅうない。」
「…お前への敬意じゃなくて、料理への敬意だ。」
「ふっ。照れ隠しなど無用だぞ?」
「………。」
呆れた風にこちらに背を向けると、男は器を磨き始めた。相変わらず、照れ隠しが下手な男だ。
人間たちの間では、我ら「輝石の一族」は、命を持った石像、と形容されているらしい。事実、我のことを、動く石人形、などと言い放った人間もいた。
腹立たしい。実に、腹立たしい。我らの輝かしき姿は、あらゆる生物を魅了し、虜にし、平伏させる。悠久の栄華を生きるのに相応しい姿なのだ。
その輝かしき姿を、石像だの石人形だのと。暴言も甚だしい。
全身の骨という骨をすり潰されたとしても文句を言えぬ。それほどの暴言である。
「…!出たな石人形め。」
そう。まさにこのような
「、……………。」
…話は少し巻き戻る。
アルジと輝石の一族の者が話をしていた、ちょうどその頃、
「まったく…。こんな深いところに潜り込むとは。」
私は地下深くへと歩を進めていた。
本来であれば、このような場所に足を踏み入れるなど御免被りたいところだ。陽の光は届かず、空気はよどみ、足元も歩きづらいことこの上ない。
だが、屋台はこの洞窟の中へと入っていった。ならば、追うしかない。
それが、国のためになり、彼のためになり、私のためになるのである。
「何故それを理解できないのか…。」
この世には、理解の出来ないことが数多ある、ということは理解している。そして、理解のできないことを理解するためには、理解の出来ない理由を理解することから始めなければならない。
が、
あの男に関して言えば、それが出来ない。与えられた名誉を無下にするなどという心理、理解出来るはずがない。
「それでも、どうにかしなければならない、と…。」
国王からの命令に、拒否する権利などない。勿論、失敗することも出来ない。
道は唯一つ。やり遂げるのみ。
そうして歩き続けると、洞窟には似つかわしくない良い香りが漂ってきた。道の先に少し開けた空間があるのが見える。
どうやら、屋台はあそこで停まっているらしい。
「やれやれ…。」
やっと追いついた。一つ安堵して、その空間に足を踏み入れる。そこにはお目当ての屋台と男。そして、
「…!出たな石人形め。」
牛すじ煮込みうどん、好きですね〜。




