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孤島漂流記 無人島だと思ったら人がいた  作者: レモンティー


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第六話:最後まで生き残れ

警報のような低い唸りが、施設全体に響き渡る。

赤い光が、断続的に点滅し始めた。

――異常事態。

そんな言葉が頭に浮かぶ。

「こっちだ!」

ミナが先導する。

通路は複雑に分岐していた。

だが彼女は迷いなく進む。

「なんで分かる!?」

走りながらダイゴが叫ぶ。

「前にここまで来たことがある!」

息を切らしながらも、はっきりと答えた。

「でも、その時は――途中で引き返した!」


背後から、重い音が響く。

ガコン。

ガコン。

一つじゃない。

複数。

「……増えてるな」

キイチが振り向かずに言う。

「さっきの化け物が、他にもいるってことかよ……!」

「その可能性が高い」

淡々としているが、声はわずかに低い。


通路の先。

大きな扉が見えてきた。

「……あれだ!」

ミナが指差す。

金属製の分厚い扉。

横には端末がある。

「開けられるのか!?」

「やるしかない!」

ミナが端末に触れる。

画面が光る。

だが――

【認証が必要です】

無機質な表示。

「くそっ……!」


その時。

ダイゴの視界に、さっきの部屋で見た表示がよぎる。

被験体No.47。

そして――

「……待て」

ダイゴが言った。

「“被験体”って、ダイゴたちのことじゃないのか?」

ミナとキイチが一瞬、動きを止める。

「……どういう意味だ」

キイチが問う。

「ここに流れ着いたのが偶然じゃないなら……ダイゴたちも“対象”ってことだろ」

心臓が早鐘を打つ。

「だったら――認証も、それで通るんじゃないか」


一か八か。

ダイゴは端末に手を押し当てた。

数秒の沈黙。

やがて――

ピッ。

音が鳴る。

【被験体No.52 認証】

「……!」

画面に表示された数字。

52。

ダイゴ……か……」

寒気が走る。

番号で管理されている。

人間としてではなく。


重い音を立てて、扉が動き始めた。

ギィィィ……。

ゆっくりと、開く。

「よし、行くぞ!」

キイチが即座に中へ飛び込む。

ミナも続く。

ダイゴも――

その瞬間。


後ろの通路から、“それ”が現れた。

一体じゃない。

二体。

いや――三体。

さっき倒したものと同じ異形。

だが、その中の一体は――

明らかに違っていた。

体が、さらに大きい。

腕が三本に増えている。

そして――

目が、こちらを“認識している”。

「……上位個体か……!」

キイチが舌打ちする。


「早く閉めろ!」

ミナが叫ぶ。

だが――

異形たちは速かった。

一体が、扉に飛び込む。

ギリギリのところで、身体を滑り込ませる。

「っ……!」

完全には閉まらない。


「どけ!」

キイチが槍を構える。

「ダイゴ、押さえろ!」

「分かった!」

二人で、扉を無理やり押し戻す。

だが――重い。

そして、異形の腕が内側へ伸びてくる。

爪が、空気を切り裂く。

「ミナ!」

キイチが叫ぶ。

ミナは迷わなかった。

ナイフを振りかぶり――

「悪く思わないで!」

ザシュッ!!

異形の腕を、根元から切り落とした。

黒い液体が飛び散る。

絶叫。


その隙に――

ガンッ!!

扉が、完全に閉じた。

静寂。

荒い呼吸だけが響く。


「……助かった……」

ダイゴがその場に崩れ落ちる。

だが、誰も気を抜いていなかった。

キイチが周囲を警戒する。

ミナも、すぐに立ち上がる。

「ここが……どこだ……」


そこは――

先ほどの施設とは、まるで別世界だった。

白い壁。

整然と並ぶ装置。

壊れていない機械。

そして――

中央に、一つの部屋。

透明なガラスで囲まれている。

中には――

人がいた。


「……嘘だろ……」

ダイゴが呟く。

その人物は、椅子に座ったまま動かない。

だが――

生きている。

ゆっくりと、こちらを見た。


「ようやく……来たか」

低く、落ち着いた声。

スピーカー越しに響く。

「被験体たちよ」

その言葉に、空気が凍りつく。


キイチが一歩前に出る。

「お前が……これをやってるのか」

男は、わずかに笑った。

「“これ”とは?」

「島、化け物、ダイゴたち……全部だ」

沈黙。

そして――

「そうだ」

あっさりと認めた。


「ここは実験場だ」

男は続ける。

「極限状態に置かれた人間が、どこまで適応し、進化するのか」

「ふざけんな……!」

ダイゴの拳が震える。

「人を……何だと思ってる!」

「人間だよ」

即答だった。

「だからこそ、価値がある」

その言葉には、一切の迷いがなかった。


ミナが静かに言う。

「……出口は?」

男は微笑む。

「ある」

その一言に、三人の視線が集まる。

「ただし――」

男の目が、冷たく光る。

「最後まで生き残った者だけだ」


その瞬間。

背後で、再び音が鳴った。

ゴン……ゴン……。

扉が、叩かれている。

異形たちが、まだ外にいる。

「時間はあまりないぞ」

男が楽しそうに言う。

「選べ」

「ここで死ぬか」

「それとも――」

わずかに身を乗り出す。

「“次の段階”へ進むか」


三人は、顔を見合わせた。

選択の時だった。

これはもう――

ただの生存じゃない。

運命を決める分岐点。

ダイゴは、ゆっくりと口を開いた。

「……進む」

迷いはなかった。

ここまで来て、引き返す理由はない。

キイチがうなずく。

ミナも、笑った。

「同感」


男は満足そうに目を細めた。

「いいだろう」

指を一つ、鳴らす。

カチリ。

どこかでロックが外れる音。


そして――

床が、動いた。

「……っ!?」

足元が沈む。

エレベーターのように、下へ。

ゆっくりと。

だが確実に。

暗闇へと、落ちていく。

光が遠ざかる。

そして――

完全な闇。

その先に待つものは、

“出口”か。

それとも――

さらなる地獄か。


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