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孤島漂流記 無人島だと思ったら人がいた  作者: レモンティー


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第五話:倒しても、終わらない

影は、ゆっくりと光の中へ踏み出した。

――それは、人ではなかった。

二本足で立っている。

だが、その体は不自然に歪んでいる。

片腕は異様に長く、地面に引きずるほど。

皮膚は灰色に変色し、ところどころが裂け、内部の筋肉が露出していた。

顔――と呼べるものもある。

だが、目は濁り、焦点が合っていない。

口は裂け、呼吸のたびに湿った音を立てていた。

「……被験体……」

ミナの声が、かすかに震える。


ガコン。

背後で扉が閉まる音がした。

「っ!」

振り向く。

来た道が、完全に塞がれていた。

「閉じ込められた……!」

ダイゴの声に、キイチが低く吐き捨てる。

「想定内だ。動揺すんな」

だが、その目は鋭く周囲を見ていた。

出口を探している。


その時――

ズル……ズル……

異形が、こちらへ歩き出した。

遅い。

だが――

「……来るぞ」

キイチの声。

次の瞬間。

消えた。

「――は?」

視界から、消えた。

いや――違う。

速すぎて、見えなかった。


ドンッ!!

背後から衝撃。

「ぐっ……!」

ダイゴの体が吹き飛ばされる。

肺から空気が抜ける。

何が起きたか分からない。

ただ――

「あいつ……速い……!」

信じられない速度だった。

あの巨体で。


「ダイゴ、立て!」

キイチが叫ぶ。

同時に、槍を突き出す。

ガキンッ!

手応え。

だが――浅い。

「チッ、硬い……!」

皮膚が、異様に硬い。

刃が通りにくい。


ミナが横から回り込む。

「目だ!」

短く叫ぶ。

「弱点はそこしかない!」

キイチが即座に動く。

正面で引きつける。

「来い、化け物!」

異形が反応する。

キイチへ突進。

その瞬間――

ミナが跳んだ。

ナイフを逆手に持ち、一直線に――

「っ!!」

だが。

異形の腕が、横薙ぎに振るわれた。

速い。

避けきれない。

「ミナ!!」


ギィン!!

金属音。

ミナの体が弾かれる。

だが――斬られてはいない。

「……っ、あぶな……!」

キイチが間に割り込み、槍の柄で受けていた。

だが、その衝撃で二人とも後退する。

「力も……化けてるな……」

キイチが歯を食いしばる。


ダイゴは立ち上がった。

体が痛む。

だが、止まっていたら死ぬ。

周囲を見渡す。

何か――使えるもの。

武器。

罠。

環境。

そして――

見つけた。

床に転がる、鉄パイプ。

「……これだ」

握る。

重い。

だが、いける。


「キイチ、ミナ!」

叫ぶ。

「動きを止める!」

二人が一瞬だけこちらを見る。

意図を理解したのか――

うなずいた。


キイチが正面から突っ込む。

ミナが横へ回る。

異形の注意が分散する。

その隙――

ダイゴは背後へ回り込んだ。

足音を殺す。

距離を詰める。

あと数歩。

あと――一撃。


「今だ!」

叫ぶと同時に、全力で振り抜く。

狙いは――足。

ドゴッ!!

鈍い衝撃。

異形の膝が、わずかに崩れる。

「効いた!」

その瞬間。

キイチが動いた。

「終わりだ!」

渾身の突き。

一直線に――

目へ。


ズブッ。

確かな手応え。

異形の動きが止まる。

時間が、止まったように感じた。

そして――

グラリ、と。

巨体が揺れた。


ドサッ……。

重い音を立てて、崩れ落ちる。

動かない。

完全に、沈黙した。


「……やった……のか……?」

ダイゴが呟く。

誰もすぐには答えなかった。

息が荒い。

全員が、限界に近い。

やがて――

キイチがゆっくりと槍を引き抜いた。

「……ああ」

短く言う。

「今のはな」

その言葉の意味を理解するのに、数秒かかった。


ピッ。

再び、音が鳴る。

三人が同時に振り向く。

端末の画面。

表示が、変わっていた。

【被験体No.47 活動停止】

そして――

新たな文字が浮かび上がる。

【次段階へ移行します】

「……は?」

嫌な予感が、全身を走る。


ゴォン……。

施設全体が、低く唸った。

どこかで、大きな機構が動き出す音。

床が、わずかに振動する。

「おい……これ……」

ミナの声に、キイチが即座に反応する。

「走るぞ!」

理由を考える暇はない。

本能が告げていた。

ここにいたら――死ぬ。


三人は同時に駆け出した。

奥へ。

光の先へ。

“出口”を求めて。

だが――

その先にあるものが、

本当に“出口”なのかは、誰にも分からなかった。


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