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孤島漂流記 無人島だと思ったら人がいた  作者: レモンティー


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第四話:出口の噂

翌朝。

空気が、いつもと違っていた。

湿った風。

妙に静かな森。

鳥の声が――ない。

「……変だな」

ダイゴが呟くと、ミナが小さくうなずいた。

「この感じ、嫌いなんだよね」

キイチはすでに装備を整えていた。

槍、簡易バッグ、水袋。

「行くぞ。“出口”だ」

迷いはなかった。


ミナの案内で、ダイゴたちは森の奥へと進んだ。

これまで足を踏み入れたことのない領域。

木はより高く、密度も濃い。

日差しがほとんど届かない。

「……こんな場所、よく見つけたな」

「前にいたグループでね」

ミナは淡々と答える。

「でも、途中で分裂した」

「……揉めたのか?」

「半分はね」

意味深な言い方だった。

それ以上は聞けなかった。


しばらく進むと、地形が変わった。

なだらかな森が、急に岩場へと変わる。

地面は固く、足音が響く。

そして――

「……なんだ、これ……」

目の前に現れたのは、崖だった。

だが普通の崖じゃない。

不自然なほど、一直線に削られている。

まるで――

「人工……?」

ダイゴの言葉に、キイチが眉をひそめる。

「この島に、そんなもんがあるわけ――」

言いかけて、止まった。

崖の壁面。

そこに、明らかに“加工された跡”があった。

直線。

均一な削り。

自然ではあり得ない。


「こっち」

ミナが崖沿いに進む。

やがて――

「……あった」

小さく呟いた。

そこには、洞窟の入口があった。

だが、ただの洞窟じゃない。

入口の形が、あまりにも整いすぎている。

円に近い、滑らかな縁。

そして――

中から、微かに風が吹いていた。

「……ここが、“出口”?」

ダイゴが問う。

ミナは首を振った。

「違う。ここは“入口”」


キイチが一歩前に出る。

「罠の可能性は?」

「高いね」

ミナはあっさり答えた。

「でも、何もない島にこんなものがある方が不自然でしょ」

確かに。

ここは“ただの無人島”ではない。

その確信が、じわじわと広がっていた。

「……入るぞ」

キイチが決断する。

誰も反対しなかった。

もう引き返せない。

ダイゴたちは、闇の中へと足を踏み入れた。


内部は――冷たかった。

外の蒸し暑さが嘘のように消える。

足音が反響する。

コツ、コツ、と。

壁に手を当てる。

滑らかだ。

岩じゃない。

「……コンクリート……?」

思わず呟く。

そんなはずはない。

だが、それ以外に言いようがなかった。


しばらく進むと、通路が開けた。

広い空間。

天井は高く――

そして。

「……光?」

奥に、淡い光が見えた。

自然光じゃない。

白い、人工的な光。

三人で顔を見合わせる。

ここに来て、確信した。

この島は――

誰かが“作った場所”だ。


光の先へ進む。

そして――

それを見た。

「……嘘だろ……」

思わず声が漏れる。

そこは、巨大な施設だった。

壁一面に並ぶ機械。

壊れているものも多いが、一部はまだ動いている。

点滅するランプ。

低く唸るような音。

そして――

中央に、大きなガラスの部屋。

中は空だが、何かを“収容”していた形跡がある。


「……実験場、か……」

キイチが低く呟く。

ミナは無言で周囲を見回していた。

そして、ゆっくりと口を開く。

「この島に流れ着くの……偶然じゃないかもね」

その言葉に、背筋が凍る。

「どういう意味だよ……」

「誰かが、“集めてる”ってこと」

沈黙。

誰も否定できなかった。


その時――

ピッ。

小さな音が鳴った。

「……!」

三人が同時に振り向く。

一台の端末。

それが、突然起動した。

暗かった画面に、光が灯る。

ノイズ混じりの表示。

やがて――文字が浮かび上がる。

【被験体No.47 覚醒確認】

「……は?」

理解が追いつかない。

そして――

次の瞬間。

施設の奥から、重い音が響いた。

ガコン。

ガコン。

何かが、動いている。


「……来るぞ」

キイチが槍を構える。

ミナもナイフを抜く。

ダイゴも――震える手で武器を握る。

足音が近づく。

人間のものじゃない。

重い。

鈍い。

そして――

影が、現れた。

それは――

人の形をしていなかった。


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