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孤島漂流記 無人島だと思ったら人がいた  作者: レモンティー


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第二話:奪う者、守る者

扉の奥から現れた男は、無言のままこちらを睨んでいた。

日に焼けた肌。

無精ひげ。

ぼろ布のような服。

そして――明らかに人を信用していない目。

「……遭難者だ。船が沈んで……ここに流れ着いた」

ダイゴは両手をゆっくり上げた。

敵意がないことを示すために。

男の視線は、ダイゴの全身を舐めるように動く。

武器の有無。

隠し持っていないか。

やがて、舌打ちをした。

「……入れ」

意外な一言だった。

小屋の中は、思っていたより整っていた。

木で組まれた簡易ベッド。

火のついたかまど。

干された魚と肉。

「……すげぇな、これ……全部一人で?」

「質問が多い」

男は短く言い、ナイフを手放さないまま火の前に座った。

「名前は?」

「……俺はダイゴ」

とっさに名乗る。

「そうか」

それ以上は聞かれなかった。

沈黙が落ちる。

火の音だけが、やけに大きく響いていた。

「……ここ、他にも人いるのか?」

勇気を出して聞く。

男はしばらく黙ったあと、低く言った。

「いる」

その一言で、空気が変わった。

「ただし――仲間じゃない」

背筋が冷たくなる。

「この島に流れ着くのは、だいたい同じだ。

事故、沈没、遭難……理由は違っても、最後はここに辿り着く」

「……じゃあ、助けは――」

「来ない」

即答だった。

キイチは三年ここにいる。船も飛行機も見たことがない」

三年。

その重みが、言葉にならない圧でのしかかる。

「ルールがある」

男は続けた。

「水場は限られてる。食料もな。

だから――奪い合いになる」

「……」

「群れる奴もいるが、長くはもたない。

裏切りが出るからな」

男の目が、ほんの一瞬だけ曇った。

「お前はどうする」

試すような視線。

「……一人じゃ無理だ」

正直に答えた。

「だから――」

言葉を選ぶ。

間違えれば、ここで終わる。

「……組ませてくれ」

沈黙。

長い沈黙。

火のはぜる音が、やけに耳につく。

やがて――

「……条件がある」

男が口を開いた。

キイチの言うことは絶対だ」

「……分かった」

「食料は平等じゃない。働いた分だけだ」

「当然だ」

「裏切れば――殺す」

その言葉に、冗談は一切なかった。

「……ああ」

覚悟を決める。

男はしばらくダイゴを見つめ――

小さくうなずいた。

「いいだろう」

その瞬間、ほんのわずかに空気が緩んだ。

「俺はキイチだ」

初めて名前を聞いた。

それからの日々は、戦いだった。

生きるための、純粋な戦い。

キイチは厳しかった。

魚の取り方。

罠の仕掛け方。

火の維持。

水の確保。

一つでも失敗すれば、生きていけない。

「遅い!」

「それじゃ逃げられる!」

何度も怒鳴られた。

だが――

確実に、生きる力は身についていった。

ある日。

キイチが珍しく、真剣な顔で言った。

「……動きがある」

「何がだ?」

「他の連中だ」

空気が張り詰める。

「この辺りに近づいてる。三人以上だな」

「……敵か?」

「この島じゃ、基本は全部敵だ」

キイチは立ち上がり、槍を手に取った。

「来るぞ」

心臓が跳ねる。

ついに来た。

人間との――戦い。

夕暮れ。

森の奥から、足音が近づく。

一つじゃない。

複数。

そして――

姿を現した。

三人。

男が二人と――女が一人。

全員、武器を持っている。

目が合った。

その瞬間。

全てを理解した。

――話し合いじゃ、終わらない。

キイチが低く言う。

「……下がってろ。最初は俺((ダイゴ))がやる」

「待て、ダイゴも――」

「足手まといになる」

即答だった。

悔しさが胸を刺す。

だが――反論できない。

「……分かった」

ダイゴは一歩下がる。

その時。

相手の一人が笑った。

「へぇ……二人か。運がいいな」

軽い口調。

だが、その目は笑っていない。

「食料と水、置いてけよ」

完全な略奪。

キイチは無言。

槍を構える。

空気が凍りつく。

一触即発。

次の瞬間――

地面を蹴る音が響いた。

戦いが始まった。

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