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孤島漂流記 無人島だと思ったら人がいた  作者: レモンティー


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第一話:生き残りの条件

――それは、ほんの一瞬の出来事だった。

視界が白く弾けた。

次の瞬間、ダイゴは海に投げ出されていた。

冷たい水。

耳鳴りのような波音。

遠ざかる船の残骸。

「……っ、は……!」

必死に腕を動かす。

泳げる。だが、体が重い。何かに引きずり込まれるような感覚がある。

振り返ると、黒煙を上げる船が沈みかけていた。

乗っていたのはダイゴを含めて十数人。

だが――もう誰の姿も見えない。

助けは来ない。

そう理解した瞬間、恐怖が現実に変わった。

――生きろ。

頭の奥で、誰かがそう言った気がした。

ダイゴはただ、前へと泳ぎ続けた。

気がつくと、砂の上に倒れていた。

焼けつくような日差し。

口の中は乾ききっている。

「……ここは……」

顔を上げると、そこには青い海と――終わりの見えない森。

文明の気配はない。

建物も、煙も、人の足跡すらない。

完全な無人島だった。

「……マジかよ」

笑うしかなかった。

だが、笑っている余裕は長く続かない。

喉が限界だった。

最初にやったのは、水の確保だった。

海水は飲めない。

それは知っている。

だが――真水はどこだ?

森へ入る。

蒸し暑い空気。

見たことのない植物。

虫の音がやけに大きい。

しばらく歩くと、小さな窪地を見つけた。

そこに、水が溜まっている。

「……頼む」

手ですくい、口に運ぶ。

ぬるい。

少し濁っている。

だが――

「うまい……」

涙が出るほど、うまかった。

次に必要なのは、食料と寝床だ。

空腹はまだ耐えられる。

だが夜は違う。

何がいるか分からない森で眠るのは自殺行為だ。

ダイゴは海岸へ戻り、流木を集め始めた。

太い枝。

葉のついたもの。

ロープ代わりになるツル。

見よう見まねで組み上げる。

「こんなもんで……いいのか?」

不格好なシェルター。

だが、何もないよりはマシだ。

日が傾き始めていた。

夜。

世界が一変した。

暗い。

とにかく暗い。

街の明かりなんてものはない。

月と星だけが頼りだ。

そして――音。

ガサガサ、と森が鳴る。

何かが動いている。

近い。

「……来るなよ……」

手には拾った棒。

武器になるかどうかも分からない。

だが、握るしかなかった。

しばらくして、音は遠ざかった。

膝の震えが止まらない。

――ここでは、ダイゴは弱者だ。

その事実が、骨の芯まで染み込んだ。

数日が経った。

ダイゴは少しずつ、この島に慣れ始めていた。

魚を捕まえる方法を覚え、

食べられる木の実を見分け、

雨水を溜める仕組みも作った。

だが――

「……人がいねぇって、こんなにきついのか」

独り言が増えた。

返事はない。

当たり前だ。

だが、それがこんなにも重いとは思わなかった。

ある日、森の奥でそれを見つけた。

足跡。

人間のものだった。

「……嘘だろ……」

胸が高鳴る。

この島は無人じゃないのか?

それとも――ダイゴ以外にも漂流者がいるのか?

足跡は奥へと続いている。

行くべきか。

迷う時間はなかった。

ダイゴは、その跡を追った。

そして――

開けた場所に出た。

そこには、小さな小屋があった。

煙が上がっている。

人がいる。

確実に。

「……おい……!」

声が震える。

生きている人間に会える。

その事実だけで、涙が出そうだった。

だが――

扉が開いた瞬間。

ダイゴは理解した。

この島は、ただの無人島ではない。

「……誰だ、お前」

低く、警戒に満ちた声。

手には――刃物。

その目は、明らかに“普通じゃない”。

助かったはずなのに。

心の奥で、何かが警鐘を鳴らしていた。

――ここは、生き延びた者だけが残る島だ。

ダイゴの本当の漂流は、ここから始まる。

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