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生まれてすぐ出涸らしと言われました転生令嬢ですが、転生特典の振り分けを忘れていただけのようでした。  作者: くにのめめ


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出涸らしと呼ばれた日

 暖かな場所から外に出たのを感じた。肌に空気が当たり、少し寒い。生まれたのだ、と気づいたときには、周りに人が集まってきた。


 だれかに抱き上げられてぬるま湯に浸かった。柔らかい布で触れたあと、おそらく布団の上に寝かされた。


「お二人目の洗浄が完了しました」

「では、測定に移ります」


 あのゲートに飛び込む前、神様が生まれてすぐに魔力測定があると言っていた。生まれて本当にすぐなのだなぁと思いながら何もできずに横たわっていると、男の人の声が近づいてきた。


「大丈夫、怖くありませんからね。一瞬ですよ」


 優しいその声の人がそう言うと同時に、頭に手が触れた。暖かな陽だまりのような……神様の手みたいな温かさを感じ、私は急激な眠気に襲われた。もしや神様も魔法を使って私を安心させてくれていたのだろうか、そう思って、いやいや寝るわけにはいかないと寝ないように努めた。


「え」


 ただ、とても不安な声を漏らされたせいで眠気など吹っ飛んだ。気にしなくていいと神様は言ったけれども……。


「……魔力値、20です」


 20、という数字がどれほどのものなのかはわからなかったが、しかし私の魔力を測定した人や周りの反応ですぐにわかった。これは、少ないのだと。


「どういうことですか!先に生まれた子は100を超えていたではありませんか!」

「生まれてすぐの身でありながら20あるだけで本来はすごいのですよ」

「いいえそんなわけがありません!この名門アセロラ家の子供が、そんなに低いわけが!せめて50はなければ!」

「奥様落ち着いてください、貴女は産後すぐなのですよ。お体に障ります」

「もう一度調べなさい!それでも変わらないようなら、その子は教会に預けます!」

「奥様!」


 先に生まれた子と比べてかなり低い数値らしい。二倍どころか五倍の数値差は確かに変だと思うかもしれない。それに先に生まれた子が優秀だと、後に生まれる子にも期待がかかったのかも。


 でも、そう言われても、私は気にしなかった。だって、私には神様が付いている。


 神様は私に加護をくれたと言っていた。けれどもその加護が何なのか……は今回はわからないらしい。私自身もよくわかっていないし、たぶん後々にわかるんだろう。何の魔法が使えるかな、何かスキルとかあるのかな、私は騒動の中でワクワクとしていた。


「何度調べても20です」

「嘘よ!こんなに大変な思いして二人も生んで!一人はこんな、こんな……!」


 興奮した女性の声が近づいてくる。私は嫌な予感がしてぎゅっと身を縮めた。こんな風に怒ってくる人は、手を上げたり酷いことをしてくる。それを私は知っているから。でも赤ん坊の私に逃げる手段はない。


 そんな中で、声がかかった。


「そこまで」


 男性の、魔力を測定した人とは違う人の声だった。その声は私の近くから聞こえ、そうしてそっと、私を抱き上げたらしい。布でくるまれて両手両足が自由が利かない。でも、安心する。


「生まれた子供に罪はない。君が産んだのをこの目で見た。この子はこの家の子供だ。君の勝手でどこかにやる気はない。おい、お前ら、彼女を部屋に」

「はい。奥様、動かしますよ」

「……っ、いいですわ、私は先に生まれた子――ルルを見ないといけないですからね」


 そこで、私は母親に見捨てられたのだなと気が付いた。けれども心はちっとも痛まなかった。


(早めに家を出て行った方がいいのかしら)


 でもまぁ異世界に転生できた喜びがまだ胸いっぱいなので気にもしない。私は私の好きに生きたい。でも、怖い人とは距離を置きたい。大切な人を傷つけられてるの見たくないものね。


「……それで、この子は本当に魔力値が20なのだな」

「はい。魔法の使えない人間でも生涯かけて20ほどの魔力値には至ります。それを考えたら、お嬢様はお持ちなほうです」

「……二人で足して割ればちょうどよかったのだがな」


 ――もしかして、同じ腹で育った双子だから、魔力が偏ったのだろうか。姉が多く持って行って、妹が残りをもらうしかなかった。その結果が私。


 廊下から、母の声がした。


「――あんな出涸らしいらないわ!!」


 ……出涸らしかぁ。


 かつて前の世界で呼んできた話の中にも、出涸らし令嬢モノがよくあった。でも逆転劇が面白くて、読んだ記憶がある。私はその張本人なのだ。


 異世界転生、出涸らし令嬢モノ。面白いなぁと物語を呼んでいる気分に浸った。自分の事なのにどこか他人事だ。


「……五年後に、また測定をするのだろう」

「はい、そこまで、健やかにのびのびと過ごしていただくことをお勧めします」


 私を抱いている男性の、腕の力が強くなった。


「……そうだな、まずは君に名前を」


 おでこに、温かな感触が当たった。それが男性の――父の唇だとすぐにわかった。


「君はベル、ベル・アセロラ。ようこそ、俺のお姫様」


 歓迎の言葉に、私は心がくすぐったくなった。

最後までご覧いただきありがとうございます。

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