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サラブレッド

待ちに待った体験入部。

顧問の先生を訪ねると部室棟で着替えてこいと指示があった。

部室棟に行くと中学生とのきまで使っていた部室とは比べ物にならないくらいきれいだった。加えて、中学生まで一階しかなかった部室棟が、なんと二階まである。自動販売機も数多く設置してあった。人気の炭酸飲料は既に品切である。利用者は多いらしい。あまりの違いに驚きを隠せなかった。陸上部長距離の部室は、階段上って正面の部屋。


「お、外来がいよいよ体験入部に来た。一年経つのは本当に早いな。坂口、お前が案内してやってくれ。」と部長の佐々木が話した。

外来。何を言っているのかわからなかった。


この学校では中学から高校卒業までの六年生コースの生徒を内来と呼び、高校から入学してきた三年生コースを外来と呼んでいるらしい。よくよく考えると内来種、外来種みたいで少し差別用語みたいに捉えられるがあまり気にしている生徒はいない。


私立中高一貫校でもあり、中学生から既にこの学校に入学している同級生は1ヶ月前ほどから練習に来ていた。また、スポーツ推薦や入学前から部活に興味がある外来も同様に1ヶ月ほど前から練習に来ていた。


そして、坂口が案内してくれた。坂口は俺と同じ外来組の同級生である。しかし、スポーツ推薦で入学していたこともあり、内来組と同じくらいの時期から練習をしている。


「部員がそれなりに多いから、俺ら一年は外で着替えと準備ね。」と教えてくれた。坂口の他に、外来組で一緒だったのは長野だけだった。長野も今日初めて練習するらしい。長野は寡黙そうだったので少し挨拶しただけである。


坂口は、中学の時から陸上をやっており、県大会で入賞していた。この高校を選んだ理由を聞くと、練習メニューの自由度の高さと佐々木部長の綺麗なフォームで清々しい様に憧れて入部したらしい。強豪校からのスカウトもチラホラあったらしいが、しがらみが少なく伸び伸びとできそうなこの高校を選んだらしい。


練習が始まった。まずはストレッチからだ。屈伸、伸脚といった基本的な体操に加え、腕とその反対の足をハサミのように動かしお腹周りを伸ばすストレッチや足を180度まで広げ、股関節が伸びたところで元に戻すといった変わったストレッチが数多くあった。

ストレッチが終わったところで佐々木部長から軽く挨拶があった。佐々木部長はいかにも便りがいのある部長という訳ではなかった。脱力感があって、部長と言われない限りあまり目立たない人だと思った。筋肉は水泳部のように逆三角形ではない。見た目はひょろひょろとしているが、横を向いたときに筋肉の厚みがわかった。サッカー部のうまい先輩方はふくらはぎに張りがあったのに対し、佐々木部長の筋肉はふくらはぎはそこまで厚みがないが太ももがに厚みがあった。スポーツが違うだけで発達する筋肉が微妙に異なることに驚いた。そして、練習が始まった。


まずはジョギング。ペースは全然早くない。寧ろ遅いくらいだ。脱力した足で確実にタータンを蹴る。部員が二列になり、無駄な掛け声が一切ない。300mほど走しりタイムを読み上げる。タイムは84秒。そこまで早くない。ウォーミングアップだが、これならついていけると思った。500メートルほどのトラックを5周走ったところでジョギングは終わった。

俺は何とか食らいついた。まだ少し余裕がある。他の部員は笑いながら雑談しているため、全然辛くなかったのだろうと思う。坂口もかなり余裕そうだ。


次に筋トレがあった。二人一組でペアを組み片方が抑えもう片方が筋トレをするやり方だ。俺は坂口とペアを組んだ。メニューは腹筋30回、右腹筋20回、左腹筋20回、腕立て20回、体幹トレーニングのプランク1分これを3セットだ。坂口は軽々やってのけたが、俺は腹筋20回で、身体全体がプルプルと震えている。坂口は嘘だろと言いたげそうな顔をしていた。それでも、「後もう少しだ。頑張れ。」と応援してくれた。坂口も演劇部の後藤と同じように爽やかイケメンタイプなのかもしれない。

筋トレが終わったらいよいよ練習だ。この時点で俺はクタクタだった。

監督の佐藤先生が「まずは量を走らないかんのやぁ~。いきなり先輩部員と走ってもすぐに置いていかれるだけやぁあ。だから、君たちは40分ジョギングやぁ~。」と話した。俺はすぐに返事をし長野とジョギングを開始した。長距離走には自信があったが開始20分程で徐々に長野に差をつけられた。40分経った頃には一周差をつけられていたのだ。長距離走は得意と思った自分が少し恥ずかしかった。

長野に中学生の頃の部活を尋ねると俺と同じサッカー部だったと言う。益々恥ずかった。



長野も早かったのだが佐々木部長は遥かに早かった。佐々木部長はもちろんAチームの練習をしていた。その日の練習はペース走といって1周500メートルのトラック5周走るごとに300メートルあたり3秒速く縮める。何故300メートル換算かわからない。これを15周走る。

佐々木部長は一切無駄のないフォームで走り続ける。全く疲れてる気配はない。ペースは300メートルで63秒とジョギングのときと比べ物にならないくらい早い。それなのに涼しげな顔をしている。15周終わると他の部員は疲れきっていた。しかし、佐々木部長と2年生の李周先輩、同じく2年生の田中先輩は追加で5周走っていた。李周先輩と田中先輩はなんとかくらいついているが、佐々木部長は最後まで涼しげだった。昨日見たのは佐々木部長の綺麗な走りを見たのだと確信した。外からはあまりにも涼しげに走っていたため、早く見えなかったが間近で見ると物凄く早く感じた。サッカー部ではせいぜい4キロから5キロだったが、彼らはその倍近く走っている。フォームが何故あれだけきれいなのかもわかった。全力過ぎて肩で走ったり、フォームが崩れてしまうと無駄に体力がなくなってしまい早く長く走れなくなるからである。これで昨日の疑問を何となくであるが解消できたのである。

同時にこの部活の長所にも気づいた。追い込みたかったら決められたメニューに付け足しができるという点である。今は少しも付け足す気になれないが、いつかは基本メニューに付け足せるように頑張りたいとも思った。


帰り際坂口と会った。俺は坂口に「クタクタでもう身体が動かないよ。」と話したら坂口は、「そうか?今日は練習軽い方だったんじゃない。」と驚いたように話していた。坂口は既にBチームの練習に参加していた。入部してから1ヶ月ほど経つからか何故か余裕そうである。

俺は、まずは同級生の長野から追いて坂口よりも早くなってやるぞと心の中で誓った。同時にこの部活で三年間走り抜けると意気込んだ。


次の日、仮入部届けを佐藤先生に提出した。










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