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心がわかるDKとわからないJK  作者: 碌寺紫葛
第3章 夏休み~文化祭後

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第47話 昼ごはんを食べたい高校生

心がわかるDKとわからないJK

第3章 夏休み~文化祭後

第47話 昼ごはんを食べたい高校生

 文化祭   当 日!

 ここを通るのは何回目だろうか。生徒以外の人が高校を歩き回っている。中学でもあったはずなのに、今は、はしゃぐような気持ちになれない。


「お化け屋敷ー!今ならすぐに行けますよー」


 頑張って午前中の当番にした結果、全然お客さんが来ないまま、自分の当番は終わった。暗い教室の中で待機するのは中々大変だった。理由の大半は暇だから。


「藤!高倉見なかった?」

「え、いいや?あいつ何かしたの」

「次の当番なのに来ないってさ。呼びこみがてら歩き回ってんだけど見つかんないんだよね。見つけたら声かけてくんね?」

「わかった。頑張れ」


 声をかけてきたクラスメイトが看板のようなものを持って、お客さんが多い場所に向かっていった。ちょうどいいから、たかを探すか。柏原さんの作戦は午後からだし、まだ昼飯の時間ではない。早めに昼飯は食べるつもりだ。そう言われているし、他にやることもない。早い段階から、文化祭で動くと柏原さんに言われてから、この高校にいない友達からの誘いを断ったりしておいたし、まだ時間はある。

 そんなことを考えながら1年生の教室があるところに向かう。2組の教室には行かない。3組と4組がある2階に向かってみる。もしかしたらそこにいるかもしれないし、声をかけてきたクラスメイトは2年と3年の教室がある方向に向かったから、別の場所を探した方がいだろうな。

 自販機から、階段、いつもどおりに3階に向かわないで、2階で止まって、たかはいない。


「石川ちゃん、よろしくね」

「はーい」


 3組って何してんだろ。謎解き?ここにいるかな。


「いらっしゃーい。……あれ?」

「ん?」

「どこかで……合コンにいた?」

「え」


 ちょっと3組の教室の中を見たかっただけなんだけど、入り口の女子に声をかけられた。事情を説明しようと思ってたら、合コン?どういうことだ。


「夏休み始まってすぐのさ、カラオケの合コンにいた?」

「あ、はい。藤です」

「やっぱり。石川だよ。男バスのマネ」

「あぁ、ごめんなさい。すぐに思い出せなくて」


 びっくりした。本当に合コンに参加してた人だった。あの時の参加者って、女子は柏原さんと坂下さん以外の記憶が薄いんだよな。女子が問題だったんじゃなくて、色々緊張しすぎて合コン自体の記憶が危ないからなんだけど。


「3組に用事?」

「あの、合コンにも参加してた高倉って男子を探してて」

「えー?見たっけ?さっき交代したからなぁ。ちょい中見てくるよ」

「ありがとう」


 思わぬ助けだった。見つかるといいけど、一応上ってきた階段とは反対の方向も見ておいて、いや、人多いな。見つかるかな。


「高倉くん、いたよ。最後の謎解きで詰まってた。他にも友達と一緒だね。私服だったから、他校の男子だよ」

「ありがとう!出口の所に立っててもいいかな?」

「いいよ。教室出てくる人のじゃまにはならないでね」


 すんなり見つかってよかった。今石川さんがいるところは入り口みたいだし、もう1つの扉の方に行ってみよう。


「わっかんねぇ……」


 あ、いた。他にも男子がいるってことだったけど、あれは……あ。


「ん?あれ、ふじじゃね?」

「かず!マジで解けない!」

「知らない。頑張って解いて。あと時間見ろ」

「え……あ、やっべ」


 気づかないまま謎解きしてたのか。そんなに難しい問題だったりする?


「ふじぃ、久しぶり」

「うん。そっちは解けたわけ?」

「よゆー」


 たかが謎解きに慣れていないだけの説が浮上した。


「てゆーか、遊ぶの断ったくせに、暇そうじゃん」

「たかを探して当番に引っ張ったらやることがあんの。細切れにやることが設定されちゃって、ちゃんと時間を確保できなそうだって言わなかった?」


 これは、柏原さんと一緒に考えた言い訳。柏原さん、こういうの思いつくの上手いし早いのはなんでだろう。


「あっそ。たかー、はやくー」

「うるせ!抜け駆けしたくせに!」

「ふじ、一緒に飯食わね?たかの当番終わるまで暇なんだわ」

「……11時くらいでいい?」

「いいじゃーん。いこーぜ」


 ちょうどいいや。早めの昼飯は考えていたし、それでこいつの機嫌を下げないで済むならいいかも。


「飲食は3年がやってるから、あっちの、反対側に移動して、そこで合流で」

「おーけー」

「たか!それ終わったら2組行けよ!じゃ、これで」

「11時ねー」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「じゃあ、お昼食べてきます。そしたら戻ってきますね」

「はーい」


 写真部の方は問題なし。予定通りに当番になって、その後は部室に移動しなきゃ。思わぬ協力者のおかげで、部長の誘導はしなくてよくなったけど、それにしたってやることが多い。

 同じ中学の子たちを避けながら、お昼ご飯を買って、当番をこなして、藤くんを部室に案内して、部長と会って告白、それから藤くんを部室から出して、と。

 とりあえずはお昼ご飯を買おう。でもお腹空いてないんだよな。少しくらいは何か食べたほうがいいかな。パンフレットを開いて、軽食的ななにかがあればいいんだけど。


「お化け屋敷ー!1年2組の教室でやってまーす」


 呼び込みの声が響く。うちのクラスでも呼び込みやってるのかな。


「会えないね」

「そうだねぇ」


 ん?この声……やば。


「いちか、ほんとに運動部に入ったの?」

「バド楽しいらしいよぉ」

「……へぇ」

「うちは、あんまりガツガツ厳しくないからさ、肌にあったんじゃないかなぁ?」


 坂下ちゃんだ。しかも話してるのって、マジか、逃げなきゃ。


「わ!」

「あ、すみませ……部長」

「柏原さん?」


 しまった。人にぶつかってしまったことと、ぶつかった相手が部長だったことで気が動転した。今ここで名前を呼ばれるのはマズイ。


「ちょっとこっちに!」

「え?」


 部長の腕を掴んで、階段の方に逃げ込んだ。あの子たちがどこに行くのかは知らないけど、この階段は通常時でもあまり使わないし何より暗い。お客さんを案内するにはむかない階段だ。通らないでくれ。


「あの、かじ」

「静かに!」

「はい!」


 話し声は聞こえない。様子を見にいく?危ないな。このまま階段下りてお昼ご飯を買いに行っちゃう?どうしよう。


「……あっち、行きたくない、とか?」

「はい。ちょっと、会いたくない人がいるって、教えてもらって、その……名前呼ばれて思わず、逃げちゃいました」


 小声で会話をしてもらってる。


「……少し待ってくれる?」

「はい?」


 あたしの弱い力で引っ張られていた部長は、軽々あたしの手を振りほどいて、階段を下りて行った。

 ていうか、何か用事があったんじゃないか?昨日萩之先輩が、部長は午前の1番最初に自分のクラスでの仕事を終わらせて、あとは写真部に集中できるようにしたって言ってた。

 あたし、邪魔しちゃったんじゃ?やっちゃった。告白前に悪い印象を与えてしまった。


「さいあくだ……」

「え、ごめんなさい」


 返事がくるとは思ってなかったので、勢いよく声がした方向に振り向く。


「部長?用事があったんじゃ?」

「うん。うちの展示で、ちょっと。でも、すぐに終わったから」

「……邪魔、してませんか?」

「え、いや?それより、大丈夫?」


 悪印象になってない?変な後輩だと思われてない?すでに遅い??


「あの、これから、何をするつもりだった?」

「……お昼食べて、当番を交代しようかと」

「あ、午後の最初の方だったよね。じゃあ……昼ごはん、買いに行きませんか」


 予想外の提案だ。部長がそれでいいなら構わないんだけど、いいのか?


「その、ボクを、壁にしてくれたら、見つからないんじゃないかな?」

「……え、助けてくれるんですか」

「うん。あと、今抱えてる用事が済んだから、ご飯食べようかなって」

「……とても、助かります」


 思わぬチャンス。あれ?萩之先輩、いつ部長を誘導するつもりだったんだ?部長は、すでに、萩之先輩の思惑を知ってるのか?


「飲食系1階だから、このまま階段を降りようか」

「はい」

「なるべく廊下側に立っておくよ。最短距離で階段を下りて行ってくれる?」

「はい」


 え、あたし、緊張すべき?考えることが多くて、行動がぎこちない気がする。

ぎこちないけど、逃げなきゃマズイから、えっと、階段を最短距離で?じゃあ、内回りで下りていっていく。あ、部長があたしが隠れるように外側を回ってくれてる。ありがたい。


「近づいてくる人はいないみたい。このまま下りよう」

「は、はい」


 すごい頼もしい。え、部長も、前にこういうことあったりした?それくらい手慣れてる気がする。

 そんなことを考えてたら、飲食系がまとまっている1階までたどり着けた。


「あ、ありがとうございます!部長」

「いいよ。久しぶりの人に会うって、面倒に思うの分かるから」

「……そうですね」


 面倒っていうか、もう思い出したくないのと、坂下ちゃんの行動を制限するため、なんだけど。


「うちのクラス以外だと、何があるかな?」

「部長のクラスも飲食ですか」

「3年の3クラス分は飲食だよ。抽選で勝ち取ったらしい」


 そんなこと、文化祭の係の子が言ってたな。飲食ができるクラスには限りがあって、高校生活最後である3年生が優先される。その中でも抽選があるらしいから、1年生のあたし達は飲食以外のもので企画しよう、みたいな話だった気がする。何をしてもどうでもいいなって適当に聞いていたはずなのに、意外と覚えているものだ。


「カレーか、焼きそばだね。柏原さんは、どっちが好き?」

「……焼きそばだったら、席がなくても食べられるかも」

「いったん見に行ってみようか。まだ混んでないといいけど」


 教室が並んでいて、ほとんど飲食みたい。廊下にも人が多いけど、イベントステージがある体育館が近いから、ここは混みやすい場所なんだろうな。でも、はぐれるような混み具合ではない。


「一応席は空いてるよ。どうしようか」

「……あたしは座ってもいいんですけど、部長は?」


 さっき、用事を済ませたって言ってたけど、いつ用事ができるか分からないんだから、席に座るんじゃなくて、身軽に動ける方がいいんじゃないの?


「え、あ、その、落ち着いて、食べたいな、と思ってるよ」


 さっきの頼り甲斐はどこにいった?挙動不審とは言わないけど、おどおどしてる。


「まあ休憩ですからね。座れるなら座っちゃいましょうか」

「い、いいの?」

「はい。会いたくない子もいなそうですから」

「それもなんだけど、いいんだ?」


 なにを気にしているんだろう?聞いていいかな?


「問題はないと思うんですけど、どうかしましたか」

「いや、柏原さんが大丈夫なら、いい」


 問題ないのかな。じゃあ、注文しちゃおう。どうやって買う形式なんだろうか。食券を買って、席に座っていればいいのかな。あ、パックが置いてある。じゃあすぐに食べられる感じだな。


「そういえば部長、財布ってありますか?」

「持ってるよ。文化祭中はポケットに入れてる」

「……盗まれないように気をつけてくださいね」


 急に買い物をすることになったからお金を持っているかという意味で聞いてみたけど、財布が入っているんだろうポケットをポンポンと叩いている姿を見ると、「ここに大事なものがありますよー」と宣言させてしまった気分になる。


「すみません。焼きそば1つ……2つで」

「ありがとうございます!」

「あたしも」

「柏原さん、まとめて買うよ」

「え」


いや、自分で買うし、自分で食べますよ?


「そういうわけには」

「ちょうど払えなそうだったから、まとめて」


 小銭がなかったのか?たしかに、2つ買えば1000円でちょうどいい、のか?


「あとで払います」

「うん。あとでね」

「やきそば2つです。お席は自由にどうぞ」

「どうも」


 部長がやきそば2つをまとめて受け取り、そのまま教室内に用意されている席に向かった。あたしは財布をしまって、急ぎ足で部長についていく。


「どうぞ」

「ありがとう、ございます。……いただきます」

「いただきます」


 手を合わせて、プラスチックのパックを開けたら、薄く湯気が出てきた。このやきそば、出来立てなのかもしれない。


「ん、うま」

「……おいし」

「こういう雰囲気で食べると、いつもより美味いよね」

「部長は、用事とかで走り回ってるから、ほんとに疲れて身体に沁みてるんじゃないですか?」

「たしかに、歩きまわってはいたけどね」


 昨日の準備から部長は慌ただしく動いている。まともに話したのは、部長が撮ったパノラマ写真を見ていたら話しかけられた、あの時だけだった。

 あれ?今って、2人で話せる絶好のチャンスでは?当日になっちゃったけど、世間話をしておこうか。それか、萩之先輩から話があったか、探ってみようかな。


「あの、部長」

「なに?」

「……萩之先輩から、なにか話、ありました?」

「ぐっ」


 この人も隠すのが下手な人だった。

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