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心がわかるDKとわからないJK  作者: 碌寺紫葛
第3章 夏休み~文化祭後

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第46話 画策したい女子

心がわかるDKとわからないJK

第3章 夏休み~文化祭後

第46話 画策したい女子

 2人のお客さんが帰っていった。それからも、部員と友達の人が顔を出したりして、少ないけど人がいる状態が続いた。

 販売役の練習を全員がやっている中、さきほど販売を実践したあたしたち2人は休憩を言い渡されたので、聞いてみることにした。


「なんで助けてくれたの」

「あんま言いたくなんでしょ?中学のこと」

「……ありがと」

「いいってことよ。面白いもの見させてもらってるからね、お礼だよ」


 藤くんがあたしのことを聞いてくるとは思ってなかった。だって、今起きている問題を解決するために行動するし、踏み込んだことは聞かないように配慮しようと決めていた。まあ、1回、サングラス探しのときにやらかしたんだけど。

 あと、あたしが通っていた中学がどこかなんて関係ないことだから。電車で通う必要があるくらい近くにはないけど、そこ出身の生徒がここにいないわけでもないらしい。坂下ちゃんからの情報だ。そんな、たかだか数人を特定する必要は、現状ないはず。その中に候補がいるってことなら分かるけど、最有力候補である部長は違う。たぶんそう。


「正直助かった。普段とか入学したてのときなら適当にしてたんだけど、今は、その類の話題にはピリピリしてて」

「へー、大変だね。杏南ちゃんがらみ?」

「そんなとこ。はあ、間が悪いよ」


 大きなため息が出てくる。止まらない。まあ、藤くんたちが来ている間に部長がいなかったのは幸いかな。カレシがいることを知られるのはマズイ。明日、部長に告白する人間にカレシがいるという前情報は植えつけたくない。


「相田ちゃんたちにはバレたよね」

「藤くんのこと?ごめーん」

「いいよ。バレそうだったし」

「アシしてたことも話す?かじわらが話す?」

「そうする。今日の内はその話題になっちゃうでしょ」


 相田ちゃんも濱辺ちゃんも、結局この手の話題には反応してしまうらしい。女子だなーという感想しか出てこなくなったから、別にどうってことない。


「てかさ、このパノラマやばくない?」


気を遣われた。話題を変えてくれた。


「誰のもの?品評会であった?」

「部長だって」

「……へぇ」


 あたしは、写真部の出し物の準備に遅れた。原因はもちろん空井くん。でも先輩たちは怒ったりせず、「急いでくれたの?ありがとね~」と気にしていなかった。よかったな、空井くん。ここで怒られたり、手助けを懇願されたら、日曜日以降の態度がもっと酷くなっていたよ。

 実際に取り掛かった仕事は、予定通りに写真を飾っていくことだった。最終的なバランス調整は先輩たちがやっていたし、今見ているパノラマ写真はすでに置かれていた。

 この写真の詳細を聞ける時間がなかったのだ。


「……きれいだね」

「ですって、部長~」


 八乙女ちゃんじゃない女子の声が聞こえた。しかも、知っている声だ。

振り返るとそこには、萩之先輩と、部長が立っていた。なんていうことだ。


「お疲れ様ですー。ご用ですか?」

「連絡から帰ってきたところです。準備が終わったかの確認をしていたんだけど」

「お、お疲れ様です」

「……その写真」


やばい。事前に接触しておきたかったけど、他の部員がいる前でやることは考えていなかったし、ちょうど感想を言った瞬間を本人に聞かれたのが妙に恥ずかしい。


「ボクが撮ったって知ってた?」

「い、今さっき、教えてもらいました」


 この写真は恐らく180°の景色が撮られている、写っているものから判断して、この高校の近くにある公園。全体的に白の印象が強いのと、人が1人も写っていないところから、朝方に撮られたものなんだろと予想できる。青々という言葉が似合う植物と、使い込まれている遊具が朝日に照られていて、きれいだと思った。


「朝方の、公園ですか?」

「うん。いくつかパノラマは撮ったんだけど、これが一番きれいだったから」

「はい、とても、きれいだと思いました」

「……」


 無言にならないでほしい。部長のこと分かってないんだよ。褒めたの、正解だったかな?


「月岡!1年に褒められたままかよ!」

「だから部長になるんだぞ」

「それは、そっちが押し付けたからで……はいはい」


 つきおか?もしかして、部長の苗字?3年の先輩たちがワイワイ部長をいじってる。


「部長~、連絡事項は?」

「あ、そうだった。えっと、みんな聞いて」


 先ほどより声を張り上げた部長が、あたしと八乙女ちゃんに背を向ける。


「準備を進めてくれてありがとう。全員が販売の練習をしたら解散で大丈夫です。施錠するので、17時半をすぎたら荷物を外に出しておいてください」


 今は16時になるかどうか。持ってきた荷物は1組の方にあるから、こっちに移動しておこうかな。


「販売では、自分の撮ったものを勧めるとか、そういうことはしなくていいです。部員で競争とかもしてないし、売り上げは平等に還元する予定です」


 そもそも、写真を買う人がどういう人なのか予想しづらい。部員の家族、友達、それ以外だと誰がいる?


「まあ、私らは買ってもらったけどね」


 小声で話しかけてきた八乙女ちゃんに、返事はしない。

さっき、高倉くんは八乙女ちゃんが撮ったものを、藤くんはあたしが撮ったものを買っていった。あたしからは何も言ってないし、買ってほしいとも言っていない。八乙女ちゃんが誘導した可能性はあるけど、相田ちゃんに呼ばれてからはそっちにいたから、ほんとに藤くんたちが選んだことになる。

 購入用の番号でしか売り上げを管理していないから、誰が買ったとかは記録に残らなくてよかったと、安心している。


「あとは自由時間です。明日、が、頑張りましょう!」


 パチパチ拍手が起きてみんなが自由に喋りだすまでの5秒くらい、拍手を受ける立場になりたくないなと思うくらい微妙な時間が流れた。部長、お疲れ様です。


「かじわら、荷物取りにいかない?」

「ちょうどそれ……いや、後で行く」

「うんおけー。行ってきますー」


 頭のそろばんを早く弾けた。後で荷物を取りに行って、そのまま部室に行き、藤くんが隠れられる場所の確保をしよう。そうなると、八乙女ちゃんと一緒に行動するのは都合が悪い。それと、販売の当番に変更がないか確認して、あとやるべきことはなんだ?


「柏原ちゃん、みつは?」

「荷物取りにいった。2人は大丈夫?」

「あたしは持ってきたから問題ないよ。で、あのさぁ」


 来た。藤くんのことだな。濱辺ちゃんがあたしの耳元に顔を近づけてきた。


「カレシさん、いい人そうだね」

「……あんまり、言いふらさないでもらえると」

「りー。苗字呼びなんだね」

「なんか、名前で呼ばれるの、落ち着かなくて」


 本当の意味で付き合っていないのだから、苗字呼びがちょうどいいだろう。


「え?じゃあ、あたしの壱華ちゃん呼びもダメ?」

「それは大丈夫」

「よかったぁ」


 濱辺ちゃんが、心底安心した顔になっている。濱辺ちゃんと藤くんが事情が違うんだから、大丈夫なのは当然でしょ。


「もしかしてさ、提出した中に写ってる?」

「え!?いや、写ってないものを選んだけど」

「あー、たぶん、ここには飾られてない。でもね、みつもかな?Tシャツがチラッと見えてたり、男子が履きそうなサンダルが見えたから、もしかしてって」


 相田ちゃん、鋭いな。あたしの方はなるべく除けておいたけど、八乙女ちゃんが同じくらいの厳しさで除けたとは言えないし、カメラで写真を見ていた1年生たちは気づきやすかったのかもしれない。よかった。品評会用にフォルダ作って、それを先輩に渡しておいて正解だった。そこで部長に「カレシがいる?」なんて思われたら、作戦が台無しだった。


「気をつけます……」

「だいじょうぶだって。もしそれが提出されてても、個人情報がうんたらには引っかかってないと思うよ」


 それもそうだけど、言えない事情が重なってしまった。


「あ、壱華ちゃん!」

「今度はなんでしょう」

「明日の当番なんだけどさ、ちょっと遅れるかも」

「3組、忙しくなりそう?」

「実は、今日当番を交換してくれって話になって、ギリギリになりそうなんだよね」


 濱辺ちゃんは、あたしと一緒に午後一番の写真部の当番になっている。あたしは、絶対に被らない、絶対に影響がでないように調整しているし、お昼ご飯次第だけど早めに来る予定だし、特に問題はないだろうな。


「わかった。無理しないでね」

「ありがとぉ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 1組の教室に行ったが、人がいるわけでもない、空井くんが待ち構えていることもなかったので、すんなり自分の荷物を確保できた。

 このまま部室に行って、場所の確保をしなきゃ。いつも部活に行くときの道筋で目的地に向かう。

 結局、藤くんが隠れられそうな布は見つからなかったから、机とかで誤魔化そう。部室にある机と、今文化祭のために使っている教室の机が集まっているから、物で隠すことはできると思う。少し隙間を作って、あたしと部長を見れるようにして、且つ部室から退出が可能な程度に道を作って、と。

 ガラッと部室の扉を開けたら、人がいた。


「あ、みっけ~」

「は、萩之先輩?」

「どこにいたの~?探したよ」

「自分の教室に、荷物、取りに行ってて」


先輩が、あたしを探してた?なにか連絡事項でもあるのか?

 ただ、先輩の好意で探してくれていたと、そう捉えておけばいいものを、その捉え方が「好意的に考えて」って思ってしまうのは、先輩の顔がいつものじゃないから。


「大丈夫だよ。しばらくは誰も来ないよ」

「……人払い、ですか」

「難しい言葉使うね。でも、そうだね」


他人に聞かれたくない、お願いでもするつもり?

 後ろ手に部室の扉を閉める。どうせこの部屋に用事があるんだ。話を聞いてから判断しよう。


「実はね、お願いがあるの」

「なんでしょうか」

「二股してくれない?」

「……はい?」


 なんていう提案だ。

他人には聞かれたくない内容だけど、その笑顔で言う内容ではないでしょ!?


「な、なにを?どういうことですか?」

「月岡先輩のお願いを聞いてあげて。もう卒業しちゃうから」

「つき……部長、ですか?」


 部長が出てくるのか。部長のお願いをきく?二股?卒業……、まさか。


「気づいてる?先輩って、柏原ちゃんのことずっと見てるよ」

「し、知らなかったです」

「だよね。もうカレシいるみたいだし、タイプじゃなかったか」

「か、はい?」


 なんで萩之先輩が、あたしにカレシがいるって認識になっているんだ?


「今日来てくれた男子2人のどちらかって、柏原ちゃんのカレシじゃないの?」

「いえ、あの2人は、撮影を手伝ってくれた、知り合いです」

「友達じゃないんだ?」

「うーん、なんか、友達というには、付き合いが短い?ていうんでしょうか」


 嘘ついちゃった。なるべく嘘をつきたくなかったけど、今は必要だと判断した。それだけ。それに、明日の作戦がうまくいけば、カレシは部長になる、はず。


「おけ~。じゃあお願いなんだけど、月岡先輩の話を聞いてあげて」

「……卒業しちゃうから、最後に、部長の願いを叶えたいと?」

「叶ってくれたらいいな」

「……萩之先輩って、部長のこと」

「複雑なんだよね」


 卒業しちゃうのは3年生全員に当てはまる。なのに萩之先輩は、部長のことしか言及していない。先輩の中で部長の存在が大きいからだろうとすると、その理由って限られてくるんじゃないか?


「あの人、部活中はカメラと写真のことに夢中になるのに、写真を褒められたらコロッと落ちるんだもん。笑いそうになっちゃった」

「……ごめんなさい。何の話でしょうか」

「月岡先輩はね、自分の写真を褒められるの好きなんだよ。でも、知り合いから褒められた途端に社交辞令だの気遣いだの、余計な壁が挟まる」


 これはなんだ?萩之先輩の、部長への愚痴?


「それでも、急に褒めるのやめたら気まずいでしょ?頻度下げてたら、一発で落ちてた。その時にね、諦めようって思ったんだ」

「……今も、思っているんですか?」

「ずっと諦めようとしてる」


 それって、まだ諦めてないんじゃないの。


「だから、部長のお願いを叶えてってお願いじゃないの。これは、わたしがどうにかしてほしいから、わたしのお願いが、部長の話を聞いて、なの」

「……部長のお願いが、叶わなかったら?」

「それでもいいよ。あの人は、すぐ諦めそうだよね」

「……聞く、だけですよ」

「ほんと?ありがと~」


 満面の笑み。それを、言葉通りに受け取れない。


「部長はね、自分のクラスの当番は午前の1番最初だって。それ以降は写真部にかかりきりになれるようにしてるらしい。あと、動くなら午後だね」

「なんで、でしょうか」

「午後は、北体でイベントステージがあるの。そっちに人が集中して、客足が減るから」

「わ、わかりました」

「ほんとにありがとね。わたしも、部長を誘導できるようにしておくよ。ここでいいかな?」


 笑ったまま、部長のために行動してる。あたしには、そんなことできない。

そのまま萩之先輩の話を聞き、頭の中では作戦にどう組み込むか考えていた。

 満足したのか、部室を去っていく萩之先輩の足取りが軽かったように思えた。

頭がパンクしそうなのをどうにか落ち着かせて、一人で机を移動させていた際中もずっと、あたしはなんて自分勝手なんだろう、その言葉が頭を埋め尽くした。

 今日邪魔してきたやつと、何が違うっていうんだよ。分かってるよ。同族嫌悪だよ。

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