↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心がわかるDKとわからないJK  作者: 碌寺紫葛
第3章 夏休み~文化祭後

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/48

第45話 知りたいDK

心がわかるDKとわからないJK

第3章 夏休み~文化祭後

第45話 知りたいDK

「終わったぁ」

「おつかれー」


 男子の声も、女子の声もする。もう15時だ。やっと準備が終わった。


「おつー。かずはこのあとどうする?」

「……疲れたから、休みたい」

「あー、監視してたんだっけ?」


 空井が準備を抜け出して柏原さんと話をしていたのは約1時間前、もう監視をしなくていいと言われたけど、気になって仕方なかったので、続けていた。

 でも準備が終わったから、監視を続けるのは難しくなる。それに、この瞬間にはもう空井の姿がない。だったらもう休んでしまおうかと思ってる。


「教室飛び出したときのこと聞きたいから、自販機いかね?」

「……行く」


 休憩と気分転換にはちょうどいいかもしれない。なんか、甘いもの飲みたい。

そう言って、制服のポケットにスマホと財布をねじ込み、手には文化祭のパンフレットを持って、1階まで下りていく。

 昼飯時も過ぎて、自由に動ける生徒も多いから、2,3箇所で「売り切れ」の文字が見える。


「炭酸……ココアでいいや」

「マジで疲れてんだな」

「慣れないことしたから」


 たかはいつも通りに炭酸を選んでる。……たかに気を遣われてるかな。


「で?廊下でなにがあったんだよ」

「柏原さんが空井を撃退した」

「どーやって?」

「……毒吐いて、空井を犬扱いして、脅した」

「わー」


 たかは厳しい言い方をする柏原さんを知っている。だから多少きついことを言っても驚かないのかもしれないけど、たかより付き合いがあるおれが驚いたくらい、毒があった。


「びっくりした。今まで柏原さんが怒っていたのも迫力あったし、柏原さんが正しかったから受け入れてたんだけど、空井にやったやつは、向けられたくないな」

「柏原ちゃんってSなん?」

「たぶんそう」

「じゃあお前はMだな」


 たかが気を遣うなんて妄想だった。こいつ、面白がってる。昨日もそうだったし、絶対面白がってる!


「なんか、空井がね、おれに首輪つけてんのって聞いたわけ、柏原さんに」

「おお」

「柏原さんはそんな趣味ないって否定して」

「おん」


 おれが合流する前にそんな話でもしてたのかな。いきなりそんな例え話出すのもおかしい気がする。


「そしたら、藤くんは動物じゃなくて聖人だからって」

「……ん?」

「だろ?おれが聖人ってなんだよ」

「聖人って、聖なる人?」


 合ってるはず。他にせいじんって言葉があるのか?


「どうしてそんなことを考えたのか気になったんだけど、すぐに教室戻った方がいいって言われちゃったから聞きそびれたんだよ。マジで気になる」

「聖人っていうことは、めっちゃ性格良い人みたいな?」

「悪いことはしてないはず。でも、めっちゃ良いって、そんな行動した覚えないんだよな」


 柏原さんからはもうちょっと考えて行動してとか言われたことはあるけど、そういうのはマイナスな評価に繋がるはず。でも聖人って相当な誉め言葉じゃないか?


「でも、夏休みの撮影アシスタントって、お前が提案したんだろ?」

「うん」

「それって、良い人の行動なんじゃねーの?」

「それは……誕生日を逃してしまったから、何かしたくて」


 付き合ったばかりとはいえ、柏原さんの誕生日にはもうカレシだった。作戦のために付き合っているけど、それでも、お世話になっている人の誕生日であることに変わりはない。


「昨日のやつも、柏原ちゃんを巻き込まないために呼ばなかったんだろ?」

「聞かれたくなかっただけだよ。でも、呼んでもよかったのかなとも思ってる」

「結果論だな」


 昨日は、空井を“視る”ために柏原さんを呼ばなかった。結局、今日柏原さんは巻き込まれた。空井の動きを予想しやすくなったと言ってくれたけど、もっとやれることがあったんじゃないかと考えてしまう。


「ま、俺としては、面白いもん見れてるんで、証言くらいはしてやるよ」

「どこで証言するんだよ」

「坂下ちゃんと空井の大喧嘩とか?」

「野次馬する気かよ!」


 呆れた。こいつ、自分にカノジョができないから、カノジョで困っている奴を見て楽しんでるのか?柏原さんより、たかの方が自分勝手だろ。


「どこでけんかすっかな?ここではない気がすんだよな。電車とか?」

「……坂下さんと、空井って同じ中学?」

「違うんじゃね?そんなこと言ったら、坂下ちゃんと空井と、野沢もか。この3人が地元同じになるだろ。もしくは隣の駅とか」

「だな。……ん?坂下さんは電車通学だよな?」


 自転車に乗ってる姿も見るけど、それは、高校がある駅の周辺を移動するために、駅の駐輪場やら親戚の家に自転車を置いて、必要なときに使っている人もいるらしい。でもこの3人は、部活が終わったら駅まで歩いている姿を見たことがある。野沢は、夏休み明けに顔を合わせたら軽く挨拶してくれるから、2学期から目撃している。


「柏原さんは、自転車だよな」

「海が近いって言ってた。実際詳しかった」

「じゃあ、おれたちと同じ中学でもおかしくないよな?」

「……あぁ、坂下ちゃんと柏原ちゃんの接点か」

「おれって、柏原さんのこと、あんま知らない?」


 おれとたかのことを話すために「同じ中学」と使ったことはあるけど、柏原さんがどういう経緯で坂下さんと友達なのか、そもそも柏原さんがああいう女子と友達なのがちょっと不思議なんだよな。八乙女さんは分かる。カメラっていう共通のこともあるし。


「八乙女ちゃんと同じとか?俺らと違うとこじゃん」

「……たぶん違う」

「どして」

「八乙女さん、柏原さんの家のこと、最近知ったみたいだったから」


 撮影アシスタントをした帰り、資料集を返してもらった時。柏原さんがいったん家に入っている間の会話で、八乙女さんが言っていた。「かじわらの家が二世帯住宅にリフォームしたものだって、今月の頭くらいに聞いた」と。

 家自体は新しいそうに見えたから、この3年の間に引っ越しとかがあっておかしくないはず。でも、八乙女さんは8月の頭に、その話を聞いたって言っていた。

まだ高校1年の夏だった。柏原さんはぼくと出会ってからずっと自転車を使っているはず。高校入学と同時に引っ越しがあった可能性はある。でもそれにしたって、春休みのここは引っ越しだから遊べないとか、そういう会話があったりして、知る機会はあったはずだ。

 中学から八乙女さんが友達なら、知っていてもおかしくないことを、8月の頭に知っている。柏原さんは海の周辺に詳しい。なら、どこの中学にいたんだ?


「八乙女さんも、高校からの友達なんだと思う」

「……」

「おれらとも、八乙女さんとも違う中学から来た?でも柏原さんの家の位置的に、おれらと同じ、もしくは隣?隣だな。じゃあ……」

「休憩しに来てんのに、けっきょく頭脳労働ですか」

「あ」


 そういえば、飲み物買って気分転換したいかったはずなのに、めっちゃ頭使ってる。ココア飲もう。


「てか、直接聞けばいいんじゃね?」

「……はい?」


 ココアが入っている紙パックのストローが口から離れた。


「気になってたんだよね。俺らが手伝った写真飾られてんのかなーって」

「……今から、写真部に行くわけ?」

「そ。飲み終わったら行こーぜ」

「で、でも」

「今は生徒は自由に動いていい時間だよな?」


いきなり行ったら、柏原さんはいい顔しないんじゃないかな。


「空井が凸ってないか確認しときたいよな?」


確かに空井が今どこにいるかは分からない。トラブルを起こす可能性はゼロじゃない。


「柏原ちゃんの中学がどこか気になるよな?」

「……えっとぉ」

「誕プレ代わりに手伝った写真、気になるよなぁ?」

「……はい」

「よし!早く飲め!」


負けた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「お、久しぶりー」

「もう終わった?」

「ちょうど今。部員がいるけど、気にせず見てって。かじわらー」


 出迎えてくれたのは八乙女さんだった。ここは普段使われていない教室っぽい。1年の教室棟にもある。玄関から遠い、奥の方の、使われていない教室。こっちにもあるんだ。


「扉はあけっぱでよろ。かじわらー?」

「前にいますけど」


 後ろから声がした。まだおれたちは八乙女さんがいた開けっ放しの扉を通っていない。


「いた。お客さんだよー」

「知ってる。見るのは自由なんじゃない?気にしないで」

「だってよ」

「……」


 どういう心持ちでいたらいいか分からない。たかの提案に負けたおれが悪いけど。


「せんぱーい。お客さんいれていいですかー?」

「いいよ~」

「どうぞー、写真部展覧会へ」

「しつれいしまーす」

「失礼します……」


 手で持っていたパンフレットに、グシャっと皺を増やしてしまった。


「あれ?写真だけ?」

「そう。名前とか題名はなし。数字は購入用。撮影者がランダムになるように展示されてるよ。季節感あるものは固めてるけどね」

「海のやつ探そうぜ」

「大声出すな」


規則正しく穴が開いた、音楽室の壁みたいなボードが教室の壁の、廊下側と黒板と反対側には並べられているみたいだし、教室を横に3分割できる間隔でボードが置かれている。


「……みんな、たくさん撮ってるんだね」

「写真部だからね。藤くんたちのおかげで3枚以上提出できたし」

「あれ?3枚だけじゃないの?」

「いざ展示したとき、枚数とか色見とかで調整できるように、余裕のある人は多めに提出したの。八乙女ちゃんのも活躍したよ」


 よかった。アシスタントした甲斐があったな。


「八乙女ちゃんと見て回って。あたしはこれ置いてくるから」


 後ろから声がしたときに、思わず振り返ってみたら柏原さんは小さいけど段ボール箱を両手で抱えていた。仕事をしていたんだ。


「重くない?」

「小さいし、中身も軽いから平気だよ」

「抱えっぱなしにさせたの悪いなって思って」

「ここと反対の扉の方に運ぶだけだから大丈夫。ゆっくり見ていって」


 柏原さんは今いる扉を通らずに、体育館側に歩いていった。もう1つの扉の方にはなにがあるんだろ。


「カレシだねー」

「その優しさを俺にも向けろよ」

「おまえが面白がってる間はない」

「へいへーい」


 おれと柏原さんが付き合っていると知った最初のころは分かりやすくからかってきた。最近は減ってるような気もしなくはない。


「解説することはないけど、一応説明ね。静かに、飲食禁止。気に入ったものは購入可能です。デジタルはないよ。これくらいのサイズで買っていってね」


 説明しながら、両手の親指と人差し指でサイズを示してくれた。あんまり印刷した写真というものは見たことがないけど、一般的な写真のサイズだと思う。


「俺たちが手伝ったやつどこ?」

「散らばってんだよね。まあ、夏っぽいスペースはあそこ。ご自由にご覧下さーい」

「どうもー」


 八乙女さんが説明を始めたくらいで、ちょっと視線が痛い。男子2人で来るのが珍しいのかもな。


「みつ、みつ、ちょいこっち」

「おけ。2人で見ててね」


 名前を呼ばれて行ってしまった。八乙女さんを呼んだ女子2人の靴紐が、おれたちと同じだったから1年生なんだろう。


「どっち?どっちが?」

「えっとね」


 小声で喋ろうとしてるみたいだけど、微妙に聞こえる。やっぱり目立ってる!


「外でやってあげて。お客さんに失礼でしょ」

「でも気になるよぉ。あとで紹介してくれたり?」

「別になにもないから」


 柏原さんにも話し声が届いていたのか、八乙女さんを含めた3人を収めてくれている。ごめんなさい!たかの提案に乗ったせいです!


「あった。これじゃね?」

「おまえはいいな」

「は?」

「なんでもない。ここが、夏っぽいスペース?」

「海の写真少ないな」


 写っているものは夏を思わせるものばかり。でも、鮮やかな緑とかコンクリートが多い気がする。それもあって、海とか砂浜を探すのは簡単だった。


「これじゃん。絶対そうじゃん」

「……よかった」

「よかった、な」


 肘で腕を突かれた。からかうな。


「1枚くらい買おっかな?」

「おまえは買っとけ」

「なんで」

「大声による業務妨害」

「横暴だな」


 からかってくるたかに対して、ちょっとした抵抗をしているだけ。まあ、1枚買ってみるのもいいかも。どれがいいかな。海以外の写真もきれいだし、他のは……あれ?


「体育祭もある」

「お?写ってんじゃね?」

「やめろよ」


 そう言われると恥ずかしくなってきた。もしかして展示されてたりする?でも、おれが写ってるなら、確定事項になったとしても事前に連絡をくれそうだけどな。


「ないな」

「よかった」

「生徒個人が写ってるものは、販売できないんじゃね?」

「そういうやつか」


 個人情報の取り扱いとか厳しそうだもんな。でも、本当によかった。おれの写真が飾られて販売されてたら、ここに近寄れない。


「これにしよ。番号覚えときゃいいのか?」

「購入用の数字って言ってたし、今日って販売もしてる?」

「聞いてみよーぜ。あ、決めた?」

「……うん。決めた」


 入り口として使った扉には特に何もなかった。窓側は机を並べて、そこにも写真が並べられてるけど、横に長いし、額縁に飾られている。もしかして、パノラマ?特殊なカメラを使えば180°とか360°の景色を撮れるって聞いたことがある。


「八乙女ちゃん。いい?」

「はいよー、なんのご用ですか」

「今日って買うことできんの?」

「できるよ!何番?」


 たかとおれで数字を言っていく。おれが数字を言ったら、八乙女さんの顔がニヤっとした気がする。


「こっちが高倉くんね。そっちが藤くん。1枚300円です」

「ほいよ」

「じゃあ、これで」

「はい。ちょうどお預かりしました。袋に入れるので少々お待ちください」


 手慣れてる。もう誰かが買ったりしたのかな。


「あれ?買ってくれたの?」

「柏原ちゃん、おつかれー」

「おつかれさま」

「わざわざ、購入ありがとうございます。何買ったの?」


 軽く頭を下げて、袋詰めをしているであろう八乙女さんに近づく。


「こっちが高倉くんで、そっちが藤くんだよ」

「……誘導してない?」

「してないよー」


 さっきはニヤ、程度だったのに、今はニヤニヤしてる。おれ、なにかした?


「はい、かじわら渡してきて」

「……」


 無言の抵抗をしているみたいだけど、八乙女さんはずっとニヤニヤしてる。


「はい、こちらが高倉くん。手伝ってくれたのに購入までありがと」

「いいよ。記念記念」

「百均とかにフォトフレームあるから、そういうので飾るのがおすすめかな。で、こっちが藤くん」

「ありがとう」

「で?二人とも何しにきたの?」


 見透かされてるな。ただ見に来たとは思ってくれないんだろうな。


「手伝ったから気になるじゃん」

「それはどうも。ここで話すのが無理だったら場所変えるけど」

「変える必要はないんじゃね?な、かず」

「うん、たぶん」


 中学どこって聞くだけだし、問題ないはず。


「あの、柏原さん」

「なに?」

「中学って、どこ?」


 柏原さんが驚いたように思えた。どうして、驚いてるんだろう。


「……急にどうしたの」

「ほら、今日あったらしいじゃん?話聞いてたら、そーいや中学どこか知らねってなって」


 端折ってはいるけど、大体事実。


「……えっと」

「かじわらは、私と同じとこだよ」


 柏原さんの肩に腕を回して、顔を近づけている。明らかに距離が近くて、それを許している関係性であることに間違いはない。でも、なぜかわからないけど、助け船だと思った。

 八乙女さんは、知ってるんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。