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心がわかるDKとわからないJK  作者: 碌寺紫葛
第3章 夏休み~文化祭後

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第43話 白状した男子

心がわかるDKとわからないJK

第3章 夏休み~文化祭後

第43話 白状した男子

「……壱華ちゃんがカノジョになってくれたら、オレは嬉しいかな」


 ガサっ 足元に生えている草がこすれた音がした。その音を聞いて理解した。

おれは、立ち上がって、空井をにらみつけている。


「おい、かず」

「……そんなこと、柏原さんには絶対に言うな」

「怖いじゃん。カレシさん」

「ふざけんな」


 怒ってる。なにに?空井のふざけた態度に?

 怒ってる。だれに?柏原さんをトラブルに巻き込まないようにしたかったのに、行動が遅かった自分に。


「おいおい。藤は別れる気ないんだろ?だったらアピールみたいなことはしない」

「絶対にやるな。それと、その軽い口調で言うんじゃない」

「例えばの話だって。壱華ちゃんがフリーで、付き合ってくれるなら嬉しいなってだけ」

「それを言うなっていってんだよ!」

「かず、お前どうした」


 たかが、自転車から降りておれの肩を掴んでる。

おれもなんでここまで怒りがこみあげてくるのか分からない。でも、カノジョになってくれたら嬉しい?そんなこと、真剣に好きな人を探している柏原さんには言うべきじゃない。

 柏原さんは、おれを巻き込んでまで、自分のやりたいことを叶えようとしてる。

 軽口叩くような奴が、似合うわけないだろ。


「オレって、そんなに信用ならない?」

「信用されたかったら、ちゃんと自分は役に立てるって、証明すんだよ!」

「……証明したんだ?」

「っ」


 一歩だけ下がった。それと同時に肩を掴んでいた手が離れてくれた。


「なるほどね。役に立つヤツがタイプなんだ」

「だから、柏原さんを巻き込むなって!」

「やっぱ違うじゃん」


 ん?雰囲気が変わった?“視よう”。


  杏南は、壱華ちゃんの役に立つかどうかだな


「……もしかして、空井って」

「かず?」

「……坂下さんと、復縁したい?」

「はあ!?」


 さっきまでおれを止めるためにあげていた大声は、空井に向かって放たれた。


「……」

「え?マジ?」

「……復縁、とはちょっと違うかな」


  復縁か。してもいいけど、できないだろうな


「柏原さんに、嫉妬してる?」

「……」


 少し目を逸らされた。マジなんだ。


「え、待てよ。さっき、柏原ちゃんがカノジョになってくれたら嬉しいとか言ってたよな?」

「……」

「しつこく、かずと柏原ちゃんが付き合ってるか聞いてきたんだよな?」

「……」

「あの、自分から何もしなくても女子が隣にいるようなお前が、柏原ちゃんに嫉妬!?」


 後半はたかの愚痴が入ってる。でも、それにツッコミをいれる暇はない。


「嫉妬しているのを隠したくて、柏原さんに直接聞かなかった?」

「……嫉妬かどうかは分かんない」

「認めろよ」


 たかが厳しい。おかげで今は冷静になれてるからいいいんだけど。


「つまり、柏原さんをカノジョにしたいと思っておれに聞いてるわけじゃなくて、柏原さんから坂下さんのことを聞こうとして、ワンクッション置こうとしてる?」

「……金曜日までには、なんか、藤から聞き出せないかと、思って」

「何を?」

「……壱華ちゃんのタイプ」


本当に何を言っているか分からなかった。


「タイプを聞き出したかったのに、柏原ちゃんを狙っているわけじゃない?」


分からなかった所は、おれもたかも同じだった。


「……電車逃すから、今度でもいい?」


空井が切り札を切った。視てないけど、そう思った。


「ざんねーん」

「なにが?」

「お前の中学とその方向の電車はまだ30分ある。ここから駅まで歩いて10分もかからない。調べ済みだよ、バカ」

「たか、いつ調べたんだよ」

「かず待ってた校門前」


 電車に乗り遅れた、すなわち待ち時間が最低でも1時間延びる、というのがこの田舎の常識。ましてや家に帰りたいのに遅くなるなんて面倒だろう。想像でしかないけど。ちゃんと帰り時間を調べて、この探り合いのタイムリミットにしてたのか。


「自分しか知らないからって、適当に話切り上げたいときの言い訳にされるのは癪だったから、調べといた。お前がペラペラ中学がどこだの喋ったのが敗因だよ」


前言撤回2回目。たか、空井のこと、どう思ってんだよ。


「それじゃあ、20分?黙ってようか」

「いや、空井には喋る必要がある」

「……なんで」

「おれたちから信用されなきゃ、今度もない」


 空井は言った。「電車逃すから、今度でもいい?」

 つまり、今は見逃せ、また時間を合わせようと言った。このまま逃げてもいいはずなのに、まだおれから情報を欲しがっている。一度は逃げた事実を作ろうとした人は、まだ情報を欲しがっている。


「おぉ、やるぅ」

「たかこそ、参謀みたいなことしたかったんだろ」

「かっこいいだろ」


 こいつはラノベやらに毒されてる。


「で、空井に戻すけど、今度にする?今にする?」

「……時刻表はみた?」

「は?」

「特定した電車の1日の時刻表はみた?」


 たかに言ってる。おれは調べても、見てもないから、質問の相手は明らかだ。


「方向から電車特定して、今の時間から一番早いやつが検索で出てきただけ」

「ちゃんと、次の電車見なよ」

「はあ?時刻表だ?」


 たかが制服のポケットに入れていたスマホを取り出した。親指を動かして動かして、たまに止まって、動かして。


「次の電車1時間半かかるじゃん」

「この時間に帰ったら、こっちに住んでるカノジョと遊ぶ時間が短くなるでしょ?」

「……あ」


詰めが甘い。おれもそんな考えには至ってないから、同じレベルにいる。


「終電に乗ったことはないよ。その1本前とか。それだと、ギリギリで夕飯食べれるんだよねー」

「だ、だとしても、電車があるからすぐ帰らなきゃいけないっていう言い訳は通用しねえだろ!」

「うん。高倉に一泡吹かせたくて」


いい性格してんな。


「くそ!かず!こいつにぜってぇ吐かせるぞ!」

「……おれたちに、空井に払う金がなくてよかったな」

「どーいう意味だよ」

「公園だったら叫べるなってはなし」


 ギャアギャア大声を出しているたかを、店の中に入れたくない。あ、おれ今、冷静だ。


「気になることが多すぎるから、おれが一つ一つ聞く。いい?二人とも」


 不服そうなたかと、たかに泡を吹かせたことで満足したのか、いつもの顔になった空井も返事をした。


「まず、坂下さんとは、どうなりたいの?」

「直球だねー。まあ……復縁はしなくていい。それだけは分かってる」

「友達に戻りたい、みたいな?」

「そんなとこ」


 合コンをした頃に別れて、それ以降はあんまり遊んでいないってことか。元カノと遊ばないなんて、変だとは思わないけどな。


「夏休みの間に、なんかしなかった?」

「別に?ていうか、夏休み中は特に思わなかった。まあ、前もこういうのあったよなー、くらい」


 足音でわかった。たかが足元の草を力強く踏んでる。落ち着け、その草に罪はない。


「じゃあ、夏休み明けてから?」

「……たぶんそう」

「初めて、元カノに執着してる?」

「……そう」


たぶんが抜けた。どういう形か分からないし、今“視て”みる?


  執着。初めて。未練?かわいいけど、そういうのじゃない


すごく曖昧。単語が適当に並べられている感じ。本人も自分の気持ちを整理できてないんだな。途切れ途切れに出てくる言葉は本当にそう思っている言葉なんだろうな。


「ちなみに、今ってカノジョは?」

「先週別れた」


うわー。せめて誰かいてほしかった。


「交際期間20日。最短記録更新」

「ヘラヘラしてるからだよ、ざまぁ」

「茶々入れるなら、たかは早く帰って」

「空井が俺を口止めするまで待つ」


 たしか、たかっておれに「百面相するタイプ?」とか聞いてきたよな。たかの方が百面相してるよな?


「別れたのもあると思うんだよなー。別れられたのもそれじゃない?」

「え?その、先週別れた元カノに相談でもしたの?」

「ううん。女の勘ってこわいよね」

「……そうだね」


ちょっと分かってしまった。


「じゃあ次は、えっと、柏原さんに聞きたいことって?」

「タイプの詳細」


 ここははっきり言うんだな。ちゃんと自覚して、知りたいことなのかな。


「言っておくけど、おれもそんなに知らない」

「え?」

「……ガツガツしてないとことは、言われたことがある」

「俺も聞いた」


 なにせ、付き合った決め手を知りたがったたかが柏原さんに聞いたからな。


「その他はよく分かってない」

「でも、役に立つって証明したんでしょ?」

「それは……柏原さんにだけじゃない」

「藤の、個人的な、信用を得るために必要な要素?」

「……優位に立とうとするなよ。他人のカノジョに手を出そうとしてるのは空井だからな」


油断できない。胃がキリキリする。


「しないよ。壱華ちゃんがタイプについて明言?してないなら、藤のこと知るしかないでしょ」

「話を戻すぞ。タイプを知って、何がしたかった」

「藤がそうであれば何もしない。……オレがそうなれるなら、近づいてた」

「そういうのしないって自分で言っただろ!」


 タイプを知りたかったのは事実。柏原さんにカノジョになってほしいのは違う。でも柏原さんに近づこうとはしてた。落ち着け。一つずつ、確かめる。


「近づいて、なにしたかった」

「過去形にするなよ。まあ、たぶんしないけど」

「答えろ」

「……正確には、杏南の前で、壱華ちゃんに近づく予定だった」


ん?ここで坂下さんが出てくるのか。


「ははーん。わかった」

「え?分かるの?」

「柏原ちゃんのタイプになる、もしくはタイプの奴を近づけさせて、坂下ちゃんの反応を見たかったんだろ」

「そうなの?」

「……参謀向いてるんじゃない」


どうやら正解だったらしい。すごい。


「あともういっこ言うなら、坂下ちゃんが同性愛者か知りたかったんだろ」

「……あ、え!?」


そっか。だからだ。さっきからずっと「復縁はしなくていい」って言ってるのはこれだ。坂下さんが同性愛者だった場合、空井は恋愛対象から外れているから、復縁はできないって思ってるんだ!でも、同性愛者って、いきなりなるものじゃないよな?


「ちょっと違うな。たぶん、可能性あるならバイの方」

「あぁ、なんだっけ?両方が対象みたいな?」

「参謀向いてそうなのに、詰めが甘いのはいただけないな」


 もう1つ分かったのは、空井がたかをおもちゃだと思っていることだ。


「両方だったら諦める必要ねえじゃん」

「……調べただけだし、人によって違うみたいな記事しか出てこなかったんだけど、常に両方が対象である場合と、気分とかで変わる人もいるらしい。最近は女子の気分とか」

「調べたんだ?」

「オレも意外」


 実は、おれも少し調べたことがある。柏原さんから作戦の提案をされた最初の方は、男女問わずに全校生徒が対象だったから、同性愛ってどういう感じなんだろって。結局よく分からなかった。早々あるものでもないし、今の最有力候補は男子だから。

……あれ?おれって、坂下さんのこと“視た”ことあったっけ?


「まあ検索しても、人によりますだの、個人差だの、なにかゲットできたわけでもないから、だったら壱華ちゃんに近づいて、杏南の反応見たいなと思ったわけ」

「……近づくのはやめて。特に文化祭」

「ん?」

「へー、藤って意外と行動力あったりする?」

「どうだろ」


 初めて柏原さんに話しかけたときは、行動力があったと思うし、柏原さんにも似たようなことを言われた。でも、常にそうかと言われるとそうではないと思う。

 むしろ、巻き込まれて動かされてる方が多いと思う。


「わかった。ここで何も聞けなかったら明日にでも近づこうとしてたんだけど、止めておくよ」

「絶対にやるな」


 明日は金曜日。文化祭前日の準備として1日使える。でも、ここで何かトラブルとか、準備が間に合わないとかあったら当日に響く。それは避けたいと柏原さんからも言われている。それに、2組のお化け屋敷の方の準備を終わらせないと。


「すでに当番やら聞いといたんだよ。壱華ちゃん、写真部だよね?そっちの当番いつか知らない?近寄らないでおくから」

「それは……ん?誰から、当番を聞いたの」


 おれも、たかも、空井も2組。柏原さんは1組。1組の誰から当番を聞いたんだ?


「杏南」

「え?坂下さんのことを聞きたくて柏原さんと話したいのに、柏原さんのことを聞くために坂下さんに連絡したの?」

「……」

「いい性格してんな」


 この場において、たかとおれは同じ考えになることが多い。


「せめて野沢とかにしとけよ。あいつ1組だろ」

「メッセの上のほうにいたから、探しやすくて」

「かわいそうな野沢」


 空井と野沢は小学校から同じなんだっけ?合コンのときに話してたような気がする。


「……柏原さん、写真部の当番は午後1番だって。念のため、午後は近づかないで」

「はーい」

「あと、このことは柏原さんにも言うから」

「……はーい」


嫌とは言わせない。危険人物として連絡しておく。絶対に。

いよいよ、文化祭が始まります。

まずは前日準備から、高校生たちの行動をお楽しみください。

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