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心がわかるDKとわからないJK  作者: 碌寺紫葛
第2章 体育祭前~合コン後

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第25話 観察される男子たち

心がわかるDKとわからないJK

第2章 体育祭前~合コン後

第25話 観察される男子たち

「ぶっちゃけ、誰狙い?」


 たしかこの子はみかみさんだったかな。女バスって言ってたはず。


「合コンのトイレ休憩で女子同士の相談。定番でしょ?」

「めっちゃいい!誰狙ってるのぉ?ウチはのぼるくん以外」


 のぼるくんって誰だ?自己紹介のときは苗字しか言ってない。坂下杏南をフルネームで知っている人がほとんどだから、「杏南」という名前が出てくることは不思議じゃない。でも会話中に「のぼるくん」なんていなかったような。


「そりゃ、元カレになるじゃん。分かってるよ、そんなこと」


 あ、空井のぼるくんなのか。本当に覚えてない。どうでもよかったしな。


「深守は誰狙い?言いだしっぺの法則で」

「えっとぉ、空井くん」

「マジ?」


 強気だな。別れたと報告されているとはいえ、元カノが目の前にいるんだぞ?


「顔いいもんねぇ。わかるぅ」

「他人ごとじゃん。元カレでしょ?」

「だって、顔がいいから付き合ったもん。のぼるくん、飽き性だから気をつけて」

「ま、でも、今日だけで付き合えるとは思ってないよ」


女子してるな。あれ?これ、あたしの番も来るよね?なんて答えよう。


「しょーじき、こう、ひかれる人はいないんだよな」

「強いて言うならぁ?」


 答えを出そうと唸っているのは石川さんだったかな。坂下ちゃんと同じ、男バスのマネージャーをやっている、はず。


「高倉くん?参加者の中だったら、顔が好みに近い」

「ああいうのがいいんだ?」

「強いて言えば。お調子者っぽいよね。年下感がどうも、ね?」

「ふーん。ね、壱華は?」


来た。自分の答えないの?


「えっと、あんま気になる人はいないかな」

「……ん?いちか?」

「はい。柏原壱華、です」

「あ!杏南が言ってたクラスメイトって、柏原さん?」


なんの話だぁ?


「そうだよ。言わなかったけ?」

「聞いてないよ。あれでしょ?『人のこころが分かる』って」


その話かぁぁぁ。


「あぁ。なんか言ってたね。部活始まってすぐ?誕プレ喜んでもらったって」


 そうだよな。この子なら部活でも嬉々として話してそうだ。しきりにあたしの名前を言って、すごいすごいって、目に浮かぶ。


「いや、ほんとに、あり得そうだなって可能性の話をしたら、当たっちゃって」

「てかそうじゃん!男子たちが誰狙いか、壱華なら分かるんじゃない?」


 3人の視線が集まる。やめてくれ。そんなこと考えながらあの場にいたわけじゃない。


「無茶ぶりしないでよ。あんま話したことない人ばっかだし」

「野沢くんは?同じクラスでしょ?」

「あー……。可愛い子が好きそうだよね」


偏見だ。ごめん、よく知らないけど、レッテル貼りました。


「杏南みたいな?」

「えぇ。ウチは、野沢くんより藤くんの方が気になるなぁ。あんま話したことないタイプだし、優しそうだしぃ」


藤くんよかったね。モテてるよ。


「でも藤くんって、自分は数合わせなんで~て雰囲気強いよね」


実際そう思っているんだろうな。


「顔は悪くないんだけど、つくり笑顔って感じで、どんな人か見えないんだよね」


 つくっている、ではなくて、あたしが様子を見ていることを意識してぎこちなくなっているんじゃないだろうか。それでもたかくらくんと話していると素が出ているとは思う。


「で、壱華は?」

「だからいないって」

「ちょっとはいるんじゃないの?」


しつこいな。


「あたしは、今日の中には、タイプの人がいない、かな」

「そうなんだ」

「どういう系がタイプ?」

「やさしい人?でも、藤くんだっけ。あの人は優しそうだけど、ほら、あんまり自分のこと話してないから、分からないなぁって」


 たぶん、これが安牌というやつだ。誰の敵でもないということを伝えなければ。


「へー」

「なに杏南。意外そうな返事だね」

「え?あーうん。壱華は、優しい人がいいんだぁって」

「やさしい人であることは、まあ、誰だってほしい条件じゃない?」


 安牌。普通。多数派の意見。これを意識しないと。


「そっかぁ。じゃあ、あとはふつーにカラオケしよっか。そうした方が、緊張しないでお話できるかもねぇ」

「なにも段取り決めてなかっただけでしょ」

「そうだけどさぁ。みんな緊張してるんだもん!もっと楽しんでよぉ」


楽しませることも、主催の仕事では?なんて場が冷めることは言わないでおこう。


「狙ってる人も共有できたし、戻ろうよ」

「そだね」


よし。井戸端会議は終わった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


もうずっと怖い。なにもかも怖い。


「なぁ、女子さ、絶対俺らのこと言ってるよな」

「だろうね。空井の一人勝ちに一票」

「わかる。野沢ってさ、誰か狙ってきたわけ?」


 わりと踏み込んだ話なのに。まあ、そういう土足でズカズカみたいなことができるのは、たかだから。それに尽きる。


「いや?空井に来いって言われて来た」

「テキトーすぎんだろ」

「人確保すんのが重要じゃん」


スマホの通知みたいけど、ここで会話に入っている体制を取らないと、絶対に絡まれる。


「空井と中学、ていうか小学校から一緒でさ、帰りの駅やら道が一緒なわけ。その道中で捕まった」

「で、来た甲斐はあったん?」

「うーん。柏原さんがこういう所に来るタイプなんだって知ったくらい」

「杏南がしつこく誘ったからだよ。なんか知らないけど、仲いいんだよね」


 そうなんだ。あんまり、仲が良い友達の印象がなかった。いや待って。柏原さんとそんな話をしたことないな。


「あぁ。一緒に昼食べてるイメージあるわ」

「えなに?だれも狙ってないわけ?」


これ、おれが話さなくても会話途切れないのでは?


「カノジョ欲しいとは思うけど、ここで見つけられるとは思えないな」

「空井は?」

「ん?んー、アピってくる子いないし、まあ、ここじゃなくてもいいんじゃね」

「よゆーだな」

「いつの間にかできるでしょ」


たか落ち着け。空井に掴みかかりそうだったから、野沢と一緒に止めた。


「ふたりとも放せ!やっぱこいつがフリーになって参加すんのは違うだろ!」

「たか!声に出すな!カラオケとはいえ、いつ女子帰ってくるかわかんないだろ」

「空井も挑発すんなよ」

「挑発?してないけど」


してなさそうだな。一応“視る”か?


  なんでそんな怒る必要があるわけ。オレがいたって変わんないよ。


「……空井は、カノジョ欲しいわけじゃないんだ?」

「うーん。いたら楽しいときあるけど、この子じゃなくていいなってなる時もある」

「モテる奴の言うことなんか」

「ちょっと黙ってろ」


 言い方が強くなっちゃったけど、たかが喋ってると話が進まない。


「じゃあなんで今日、合コンなんて開いたわけ?主催なんだから、どうとでもなったはずでしょ」

「藤って、たまに鋭いこと言うよな」

「おれへの感想はいいよ」

「単純。あんま喋ったことない女子と話せるかもなって。てか、杏南の方がそれ目的だったと思うけど」


カノジョの、いや、元カノの方が?でも、合コンってまだ2人が付き合っているときから計画されてたよな?


「お互い、次の人を考えてたんだよ。まあ、杏南が連れてきたのがバスケ部で知ってる人だったから、あんま喋ったことなかったいちかちゃんと話したかったんだけどね」

「仲よくないんだ?」

「うん。会ったのは数回だし、杏南から話を聞いてなんとなーく知ってるだけだったから」


 もしかして、柏原さんの候補に入るのか?“視る”べき?いや、この場に柏原さんいないと難しいかも。


「そんなかるーいノリ。そんなのでカノジョできんだよ」


 今、たかの神経は確実に逆撫でされた。野沢はわからない。


「テキトーでいいってことだよ。カノジョ欲しいなら、カノジョつくればいい」

「あぁ?」

「だから、好きな子を探すんじゃなくて、カノジョを見つければいいんだよ」

「……あ?」


キャパオーバーしてる。野沢もかな?


「オレはテキトーにしとくから、好きに狙えばいいよ」

「好きにって、空井の場合は、向こうから来るから何もしないだろ」

「さすが分かってますねぇ。野沢の邪魔も、高倉の邪魔もする気はないってことだよ」


未だにキャパオーバー中なのはたかだけだな。

 そんなたかを座らせて、自分も座ろうとしていたとき、ドアが開かれた。


「お待たせぇ。ねぇねぇ、ふつーに歌わない?カラオケなんだしぃ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「今日はおつかれー」

「じゃあね」

「電車だいじょうぶ?」

「走るわ、じゃ」


疲れた。ずっと怖かったな。

 まず、合コンに参加していて不自然に思われないようにふるまうこと。正解があるなんて思わないけど、変な印象を与えたくはなかった。まあ、体育祭とスポーツ大会で印象には残っているような気がする。

 あと、柏原さんの視線。前日にも連絡があったし、なんなら期末テスト前から知っていたことではあったけど、友達との会話を見たいって宣言されて会話することなんて今までなかったから、「見られている」という緊張か恐怖か曖昧な気持ちが続いていた。

ぼくに“視られた”人たちもそんな気持ちだったのかな。


「あれ、自転車どこ?」

「こっちだよ、深守さん」

「あ、ありがと。柏原さんも自転車?」

「うん」


 女子が自転車を駐輪場から出すまで待っておこう。人が多くなっても邪魔になるだけだし。


「かず、この後どうする?」

「え?」

「どっかに寄る?」

「……いや。あっちのコンビニに行きたくて」


 帰宅する道とは反対方向を指す。ぼくの帰宅方向というのは、だいたいたかの帰宅方向と同じになる。


「は?向こうにもあんじゃん」


 ぼくたちの帰宅方向を指さす。そうじゃないんだよ。


「あっちのコンビニでしか売ってないやつ、あるか見たくて」

「あぁ。あれ?水曜日発売とか言ってたやつ?」

「うん。終業式のときも見たんだけど、もう1回見ときたくて」

「ふーん。じゃ、俺は帰るわ。あることを祈っておくよ」


 こういう期間限定とか、店舗限定のものに興味ないからな。いつもあるやつを、自分が欲しいときに買える方が、たかはいいんだろうな。

よし、狙い通り。


「じゃあね」

「うん、じゃあ」

「あ」

「……おつかれさま」


 自転車をひいてカラオケ店の敷地から出ようとしている柏原さんと目があった。けどすぐに目をそらした。不自然にならない程度の挨拶だけして。


「あれ?柏原さんってこのあたりの中学?」

「いや」


 話し声が聞こえるけど、早く自分の自転車の鍵を開けないと。


「なあ、かず」

「なに」

「本当に、誰も狙ってなかった?」


 小声で喋ってくれているだけ、気を遣っている証拠だ。それにしたってズカズカ踏み荒らしてくる。


「いないって」

「ほんとか?」

「しつこい」

「だって、ずっと見てたじゃん」


誰を?


「スマホ見てたじゃん」

「……はい?」


そんなに見てたか?


「時間気にしてんのかなって思ってたけど、時計じゃなくて、通知みてたろ」

「……手持ち無沙汰ってやつ?」

「ふーん」


信じてなさそうだな。別に嘘ではないよ。何していいか分からなくて、画面をつけては消してという無意味な行動はした。でも、そんなに多くはなかったと思う。


「壱華ちゃん、追いかけなくていいの?」

「は!?」

「図星か?」


 ニヤリと笑った。はい、図星ですけど、認めちゃいけないんだよ、今は。


「なんで追いかける必要があるんですかね」

「今回の中じゃ、一番気がありそうなのは、壱華ちゃんだろ」

「別に、気があるとかそういうのじゃ」

「はい~、誤魔化すときの常套句ぅ」


やめて。そういうのじゃないのは本当だって。しかも、追いかける必要はないんだよな。


「早く帰れよ。おれコンビニ行くから!」

「はいはい。進展あったら教えろよ」

「教えたくない奴ナンバーワンはおまえだ!」


 たかが自転車にまだがり、地面を蹴って道路に出ようとする。早く帰ってくれ。


「じゃあな」

「はい、じゃあね」


 これで動ける。道端でスマホいじってもじゃまになっちゃうし、ちゃんとコンビニに行こう。たかが見てる可能性がある。

コンビニまでたどり着いて、中に入ったらスマホ見よう。そんな遠くないし。

 なるべく早くコンビニにたどり着き、中に入って目当てのコーナーに行く。その道中でスマホを開き、メッセージを確認する。

 まだ通知はない。向こうも自転車だったし、手が空くまで時間かかるだろうな。ちょっと待つ覚悟でいるか。


「おつかれさまです。話し合いは明日にしますか?っと」


 実は、コンビニで買いたいものがあるのも事実。柏原さんに用事があるのも事実。ほぼ嘘はついていない。嘘を言わないように、事実を構成する情報だけを言う。これは柏原さんの入れ知恵である。今日のために、疑われない言い訳を一緒に考えてくれた。

優しい人だよな。実際に喋ると気が強いし、怖いときあるけど。


「えっと、やっぱない?」


 甘いものはそこまで食べないけど、暑くなるとヨーグルト味が増えてくる。これは好きな味であることが多い。今探しているのはアイスなんだけど、なんか、スペースが1つ空いているのを見ると、売り切れって感じかな。運悪いな。あ、返信きた。


『お疲れ様。あんがい体力残ってる。そっちが大丈夫なら、話し合いは今日にする?』

『おれは大丈夫。どこで話す?』


 合コンより前、終業式よりも前に、柏原さんからメッセが飛んできた。

 合コンが終わったら話し合いをしよう。ぼくの会話に関することの報告と、それらによる推測、たかにこの秘密を明かしたいのかを判断する時間を設けよう、と。

ただ、合コンが終わってすぐに行うのか、お互い疲れているのなら別日にするのかは、当日の疲れ具合で決めようと、そこまで段取りを組んでいた。

疲れてはいるけど、柏原さんが大丈夫なら、なるべく早く話を聞いておきたい。


『海にしよう。先に行って、高校の人がいないか確かめてくる』


 慎重だ。夏休みなわけだし、生徒たちの行動範囲はよめないもんな。柏原さんが自転車を走らせた方向てきに、確認は柏原さんに任せたほうがいい。


『ありがとう。こっちも、アドバイス通りに動いているから、ちょっと時間もらうね』


 話し合いするなら、なんかおやつ持っていこうかな。シェアしやすいやつとか。


『急がなくていいよ』


 よし。返信来たし、なにか買っていこう。シェアしやすいもの、なんだろう。

……柏原さん、どうやって確認するんだ?海に行って、あれ?柏原さんって、顔覚えるの苦手だよな?自分でも散々言ってたし、今日も不安そうだったし。柏原さんが「知っている人はいない」と判断しても、実はいる可能性があるんじゃ……?まずくないか?

急いでいこう。あ、でも、何か買ってはいこう。えっと、じゃあ、適当に。


「これください!」

「1点ですねー」


 早く行こう。えっと、ここから海へ行くための最短ルートと、場所はあそこだよな。かばんも楽々おけるベンチのところ。


「ありやとーございましあー」


急ごう。買ったものはかばんに入れて、自転車の鍵あけて、行くぞ!

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