↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラスボスと空想好きのユア 2 Precious Bonds  作者: レセラン
第2章 ジュエルを求めて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/158

第35話「疑惑」

 夕方のインベクル初等学校。

 今日もフィトラグスが、ロアリィの送迎に来ていた。


「今日はいかがでしたか?」


 彼に聞かれるも、ロアリィは「え、えぇ……」と言葉を濁した。


 朝からエスクから指摘を受け、休み時間にはティーチェルからビティムのことで注意を受け、その後の理科では小さいながらも爆発を起こしてしまった。


 フィトラグスは今朝、ロアリィがビティムを皆の前で叱っている場面を見てしまった。

 彼女の沈んだ表情からして、「また何かやらかしたんだな」と想像するのは難しくなかった。



「ロアリィ先生!」


 怒鳴り声がしたので振り向くと、エスクがこちらを睨みつけていた。


「エスク君。どうかされたのですか?」


「俺が言ったこと、あいつらにチクったの?!」


 言いながらエスクは、歩み寄って来た。

 彼によると、休み時間にからかって来た児童二人に対してエスクが「この国にいて欲しくない」と言ったことを、ロアリィがわざわざ本人たちへ告げたらしい。


「俺、今日、男子二人から、からかわれたの、ロアリィ先生知ってるよね? 俺が“この国にいて欲しくない”って言ったことも! それを、本人たちに言っただろ?!」


「あ……言いました」


「昼休みに、言いがかりをつけられて大変だったんだよ! 何で言ったりしたんだよ?!」


「ほ、本人たちの、耳に入れた方がいいと思ったので……」


 ロアリィは、敵意をむき出しにするエスクに怯みながら答えた。

 彼女は善意のつもりだったらしい。


「何がいいんだよ?! “言いたいことがあるなら、直接言いに来い”って、俺が怒られたんだぞ! “あいつらに言って”って頼んでないよな?! 余計なことしないでくれよ!」


「そんな言い方をするんじゃない!」


 怒りをむき出しにするエスクを、フィトラグスがたしなめた。


「君も知っていると思うが、ロアリィ先生は実習二日目なんだ。失敗はあって当然だ。君が怒りたい気持ちもわかるが、大目に見てあげて欲しい」


「二日目だから失敗はある」という言葉でエスクは口を閉ざした。


「からかって来た子たちは、俺からティーチェル先生に言っておく。今日は大変だったな」


 フィトラグスが最後に優しく言うと、エスクは何も言わずに去って行った。


◇


 発言どおり、ティーチェルにエスクのことを伝えた後で、フィトラグスらは馬車に揺られて城へ帰って行った。

 昨日と同じくロアリィは頭を抱えていた。


「またやってしまいました……」


「ロアリィ様。次から独断ではなく、一度ティーチェル先生に相談してから決めた方がいいかと思います。子供が好きでも、世話をするのは別の話ですし、相手によっても対応の仕方は変わってきます。そうでなくても五年生は、難しい年頃に入るので……」


 フィトラグスがやんわりとアドバイスするも、ロアリィはショックが大きく、すぐには立ち直れなかった。


「エスク君、からかってきた子たちのことを悪く言っていたのです。それで“ストレスが溜まっているんだな”と思い、彼らを戒めるために、つい……」


「逆効果でしたね……。悪口を本人へ伝えるのは、大人でも関係悪化のリスクがあります。言った側と言われた側だけでなく、伝えた側まで批判される場合もあるので、気をつけた方がいいですよ」


 結局、ロアリィは今日も暗い気持ちのまま、夜を過ごしたのであった。

 そして、今日の二件を経て「話し合い」が、いかに大切なものかを理解するのであった。


◇


 翌日、インベクル初等学校前。

 今日は早くからフィトラグスが別件のため、ロアリィは一人で馬車に揺られていた。


 馬車から降りると、校門に中年ほどの男性の姿を見つけた。

 髪はボサボサ、無精ひげが生えており、ヨレヨレの服を着ていた。

 不思議に思ったロアリィが近づき、声を掛けた。


「学校に、何かご用ですか?」


 男性は驚いた目で彼女を見た。

 キレイでない見た目の自分に、若すぎる教師が話し掛けるとは思わなかったのだ。

 驚いた後で男性は、すぐに不愛想な顔へ戻った。


「ここに、エスクって名前の生徒は通っているか?」


「エスク君ですか? ええ、通っております。とても良い子ですよ」


 ロアリィはあっさりと、エスクについて答えてしまった。


「そいつ、どこに住んでるんだ? 俺、父親なんだ」


「お父様ですか?」


「ああ。エスクは妻と一緒に突然出て行って、行方がわからなくなっていた。でも最近、“インベクルで見かけた”って聞いたものでな」


 ロアリィは、エスクが母と共にインベクルへ越して来たことも、父親に暴力を振るわれていたことも知っていた。


「もしかして、二人に謝りに来られたのですか?」


 急に会いに来るぐらいなので、ロアリィはそう判断した。

 すると父親は、低いトーンをさらに落として言った。


「……ああ。二人には申し訳ないことをしたと思っている。じっくり話したいんだ」


「話し合いですね。かしこまりました。少々、お待ち下さい」


 父親の話を信じ込んだロアリィは、ティーチェルが作った生徒の資料を取り出し、エスクの現住所を男性に教えてしまった。

 昨日フィトラグスから「独断で動かないように」と注意されたと言うのに……。


◇


 インベクル王国前。

 門を出て橋を渡ると、いつもの草原に出た。


「今日も特訓だ!」


 昨日、裏面仕様のボスに打ち勝ったことから、ユアたちはすっかり自信を持ち、修行もやる気満々だった。

 ディンフルが手助けしたことは、誰も知らないままだった。

 今日は、ソールネムとチェリテットも付き合ってくれた。


「私らがいない間に、裏面仕様のボスまで倒すなんてすごいよ!」


「裏面がエクストラってことは、普段の戦いは表面ってことなのね」


 二人には、すでに昨日あったことを伝えていた。

 チェリテットは感動し、ソールネムは表と裏の仕様について感心していた。


「よし! はりきって行くぞー!」


 言葉どおりユアが張り切ると、腰に収めていたチアーズ・ワンドが突然、光を放ち始めた。


 ユアが取り出すと、チアーズ・ワンドの先端からビーム状の光が出た。

 しかも攻撃の時とは違い、穏やかな優しい光で、インベクル王国の奥へ伸びていた。

 何かの位置を教えてくれているように見えた。


「ひょっとして、ジュエルの場所を教えてくれているんじゃないかな?」


 ティミレッジの推測に、皆が驚きの声を上げた。


「何で今さら……? 三日目だけど、こんなの初めてだよ」


 ユアが疑問に思うと、ソールネムが解説した。


「おそらく、持ち主のあなたのレベルが上がったからよ。イポンダートさんが言っていたわ。“チアーズ・ワンドは持ち主に合わせて、能力が増えていく”って」


 ユアは目を輝かせてチアーズ・ワンドを見つめた。

 自分が強くなれば、使い道の幅も広がることに感激したのだ。


「ニヤニヤしてるけど、調子に乗ったら、またディンフルに何か言われるわよ」


 ソールネムの言葉でユアは我に返り、一行はチアーズ・ワンドの示す先へ急いだ。


◇


 たどり着いたのは、インベクル神殿。

 ここは、インベクル王国では神聖な場所と認知されている。

 一般の者でも入れるが、ほとんど祭りなどの時しか使われていなかった。


 他に客は来ていなかった。

 チアーズ・ワンドから出る光は、神殿の最奥部にある祭壇の上のガラスケースの中を指していた。

 よく見ると、ケースの中には赤く丸い宝石があった。


「あれだ!」



「何をしているのですか?!」


 一行の喜びをつんざくように、女性の怒鳴り声がした。

 振り向くと、ロアリィと彼女の生徒たちがいた。おそらく、社会科見学で来たのだろう。


「あ、あなたは?!」


 ソールネムが叫ぶ。

 ユアたちは、ロアリィの顔をすでに写真で知っていた。


 特に仲間たちは、フィトラグスの亡き婚約者・セスフィアの顔を知っていた。

 そのセスフィアと、目の前の女性が瓜二つだったため、言葉が出なかった。


 ロアリィは、祭壇の前にいたユアたちを、疑いの眼差しで見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。