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ラスボスと空想好きのユア 2 Precious Bonds  作者: ReseraN
第1章 新たな脅威
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第2話「それぞれの今」

 ユアは現在、女子寮「アクセプト寮」から近所にある弁当屋で働いていた。

 育った養護施設「グロウス学園」の職員補助が新しい人に代わったため、転職していた。

 来春の大学入学も目指していた。それまでにお金を貯め、勉強もコツコツと頑張っていた。


 ディンフルは邪龍や魔物が大量に猛威を振るっているので、国王からその退治を任されていた。

 ディファートそのものはフィーヴェで保護される対象となったが、理解者はまだ少なかった。

 邪龍と魔物退治は、自身とディファートの信頼回復のためでもあった。


 フィトラグスはディファートを受け入れる国作りの準備を進めていた。

 邪龍問題も視野に入れていたが、それは魔導士らやディンフルに任せていた。


 ティミレッジは世界中に蔓延(はびこ)る邪龍について、ソールネムら魔導士と共に研究していた。

 もちろん退治にも参加しており、国王に依頼された魔導士と共にディンフルに力を貸していた。


 オプダットは故郷でチェリテットと共に、ディファートが暮らせる集落作りを任されていた。

 だが、彼の言い間違いが多く、新たに出会ったディファート含めた者たちから「勉強からやり直した方がいい」という意見も少なくなかった……。


 このように、超龍と戦った一行はユアを含めて、それぞれ忙しく過ごしていた。



 ミラーレに行った翌週、ユアは再びディンフルと会う約束をした。

「しばらくは会えない」と言われたが、前日に彼から「久方ぶりにリアリティアを見たい」と急に誘いが来たのだ。


 待ち合わせはユアが住むアクセプト寮の前。

 わくわくしながら門の前で立っていると、リアリティアの青年・ディーンの姿になったディンフルが歩いてやって来た。


「待たせたな」


 これは彼のマントを使った変身魔法。

 リアリティアでは、イマスト(ファイブ)は知名度があり、魔王のままでは人々から注目を集めるからであった。


 やって来た彼をユアは喜んで迎えるが、同時に違和感を覚えた。


「歩いて来たの?」


 いつもディーンは魔法でユアの前に現れるが、今日は何故か道を歩いて来た。


「これには理由がある。来い!」


 ディーンは急に後ろを向いて呼びかけると、曲がり角の塀から赤茶色のウルフカット、紺色のショートヘアに丸眼鏡、そして色黒で金髪の出で立ちをした三人の青年がやって来た。


「どなた……?」


 ユアは目を丸くした。

 ディーンが連れて来るということは異世界の者に違いないが、彼らは初めて見る顔だった。

 呆然とするユアを見て、ディーンたちは一斉に笑い出した。


「本当にわからぬのか?!」


「わ、わかんないよ! 初めて会うもん!」


「初めてじゃないよ、ユアちゃん!」


 紺色ショートヘアで丸眼鏡の青年が、笑いながら言葉を発した。

 彼の声と呼び方に、ユアは聞き覚えがあった。


「も、もしかして、ティミー?!」


「あったりー!」


 言い当てられ、青年は嬉しそうに笑った。

「ということは……?」あとの二人を見ると、すぐに答えが出た。


「フィットとオープン?!」


「ご名答」とクールな赤茶色のウルフカット。

「正解!」と親指を立てて「いいね」の手をする色黒の肌をした金髪。

 言い終えてから「“ご名答”って何だ?」と質問すると、あとの四人がずっこけた。


 三人とも、ディンフルと同じようにリアリティアの青年へと姿を変えていた。

 ユアは驚きすぎたが、何とか声を絞り出した。


「な、な、何で……?」


「魔法のレベルを上げて、リアリティアへ来られるようになった話はしただろう? それと同じで、変身魔法も強化したのだ」


 ディンフルの変身能力は、以前は魔力を大幅に消耗するため一日に一度しか使えなかった。

「本当に努力家だな……」とユアは改めて彼の凄さを知り、脱帽するのであった。


「ディンフルさんから聞いたよ。こっちの世界じゃ、僕たちの知名度があるから普通に出歩けないって」


「だから、マントを借りて姿を変えたんだ!」


「かぶる時に抵抗はあったけどな……」


 変身したティミレッジとオプダットが言った後で、フィトラグスが気まずそうに言った。

 気になったユアが尋ねた。


「何で?」


「だって、魔王の使い古しを頭からかぶるんだぞ……」


 彼の不満に、ディーンがカチンと来た。


「定期的に洗っているがな……。文句があるなら、お前だけ元の姿のままでいいのだぞ。そして、リアリティア中から注目を浴びまくれ」


「それがイヤだから、お前のマント使ってやったんだが」


「“使ってやった”だと? 妙に、上から目線だな」


 敵対していた時ほどではないが、軽く険悪な空気に包まれる。

 ユアは、あとの二人へ耳打ちした。


「ど、どうしたの……? 仲良くなったんじゃなかったの?」


「意見の食い違いが多くて、元どおりになったんだよ……」


「で、でも、前みたいに剣を出すことは、なくなったぜ!」


 馬が合わないらしい二人。

 しかし、ディファートを守りたいという思いは両者共通なので、戦い合うことはなかった。

 それだけでもユアは安心した。


「それより、今日はどこへ行くんだ? ディンフルのオススメの店があるらしいが?」


「そうだ。それよりもだな……」


 フィトラグスに名前を呼ばれ、ディーンは苦虫を噛み潰したような顔で言った。


「この姿で本名はやめた方がいい。仮の名前を決めた方が後々、楽である」


「仮の名前?」


 目を丸くするオプダット。


「リアリティアは妙にややこしい。何かと名前を聞かれることがあるからな」


「噂には聞いてましたが、フィーヴェ特有のシステムがあるみたいですね?!」


「そういうのがあるなら、言っててくれよ。前の晩から考えて来るのに……」


 今から目を輝かすティミレッジと、対照的に文句を垂れるフィトラグス。


「まあまあ。今から考えよう! ディン様が本名をアレンジした“ディーン”だから……」


 ユアはディンフルの時のアレンジにヒントを得て、フィトラグスらへ提案した。


「ラルス、ティム、ダットってどう?」


「フィトラグス……最後の“ラグス”を変えたのか?」


「僕のは“ティミー”を縮めたの?」


「俺のは最後からそのまま取ったんだな? いいじゃねぇか!」


「僕も賛成!」


「これなら、バレなくて済むな!」


 三人全員、賛成だった。

 名前も決まったところで、ディーンは四人をある店へ連れて行った。



 やって来たのは、ユアとディーンオススメのラーメン屋。

 ここに来て、もう何度目かになるので大将とも顔なじみになっていた。


「おや? 今日は友達も一緒かい?」


「ああ。今日は、ボックス席を希望だ」


 ディーンの提案で、大将は空いていたボックス席に五人を通した。

 何度も通ううちにディーンは、店の構図がすっかり頭に入っていた。


「ここが例のラーメン屋さんですか?」


「そうだ。お前たちは食べたことがないだろう? 一度食べてみてくれ。やみつきになるぞ」


 得意げに話すディーンを見て、他の三人は絶句した。


「何だ……?」


 言葉を失う彼らに、ディーンが思わずムッとした。


「お前、食に対してニヤニヤする奴だったか……?」


「“ニヤニヤ”とは何だ?! 美味いから勧めているのだろう!」


 ラルス(フィトラグス)の言い方へディーンが怒鳴ると、横からティム(ティミレッジ)とダット(オプダット)が(いさ)めた。


「まあまあ! フィット……じゃなくて、ラルスは驚いたんですよ。ディーンさんが、何かをオススメするのは初めてなので……」


「そうそう! 俺らもビックリしたが、ディンフルが勧めるってことは相当美味いんだろ? 楽しみだぜ、その()()()()っての!」


「“ラーメン”だ! あと、名前も“ディーン”と呼べ!」


 テンションが上がり、つい大声になるダットへディーンがツッコんだ。

 ダットが言い間違う上に、うっかり本名を呼ぶという予感が的中し、ユアは冷や汗をかいた。


 せっかく楽しい時間を過ごすので、ゴタゴタが起きる前に早々とラーメンを注文した。

 店は混んでいなかったので、ラーメンはすぐに来た。


「もう良い匂いだぜ!」


 ダットは犬のように鼻をひくひくさせた。

 ラーメンと受け取ると、ラルス、ティム、ダットが麺を一口食べた。


「うっま!」


「美味しい!」


「うめ~!!」


 三人同時に感動の声を上げた。


 さらに、ティムがレンゲでスープをすくって飲んだ。

 出たのは、やはり褒め言葉だった。


「こんなスープ、飲んだことありません……!」


「そうだろう?!」


 ディーンも共感するとラーメンを一口食べ、「いつ食べても美味い……!」と頬を緩めた。


 四人の感動する姿をカウンターから見ていた大将は「俺のラーメン、みんなも気に入ってくれたのか……」と、嬉し涙を流すのであった。

 やり取りを見たユアは、店内にいるわずかな客から注目を浴び、恥ずかしくなった。


 そしてこの時、ディーンたちにあるものを勧めようと決心するのであった。

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― 新着の感想 ―
ReseraNさん、はわー(感動 ユアちゃんがもう大学生かね〜 こないだまで、こげんこつちーさか赤ちゃんやったばい おばーちゃんおったまげただー という心境です(笑
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