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ラスボスと空想好きのユア 2 Precious Bonds  作者: ReseraN
第1章 新たな脅威
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第14話「三人衆」

 フィトラグス、ティミレッジ、オプダットの三人は、無差別襲撃事件の犯人であるディファートに襲われ、大きなダメージを受けていた。


「よっわ。大したことなくて、だる……」


 黒マスクの青年は気だるく皮肉を言った。


「これがディンフルや超龍からフィーヴェを救った勇者か。聞いて呆れるぜ」


 尖った耳の青年はパーティを侮辱した後で、フィトラグスの後ろ髪を引っ張った。


「ぐっ……」

「お前、正義の国の王子らしいな? 正義の味方って割に、ディファートは救えてねぇじゃねーか!」

「そんな人に正義は名乗らないで欲しいよね~」

「そういうの、“偽善”って言うんだよ」


 文句を垂れる尖った耳の青年の次に、オレンジ髪の少年が楽しそうに言いながらやって来た。

 最後に黒マスクの青年がため息まじりに茶化した。


「ディファートは保護することになった……。今は理解者が少ないが、君たちも、必ず助けるから……」

「ウソつくな!」


 痛みに堪えながらフィトラグスが説明するが、尖った耳の青年は信じなかった。


「本当だよ……。今フィーヴェは人間とディファート、仲良くする世界になってんだ……」

「そんなの夢物語だね」


 倒れた体を起こしながらオプダットも説得を始めるが、黒マスクの青年は吐き捨てるように言った。


「辛い目に遭って来たんだろうけど……、こんなことしたら、逆効果だよ。そうでなくても……」

「弱いくせにうるさいよ!」


 続けてティミレッジも諭すが、少年が遮った。

 三人の説得をディファートたちは聞こうとしなかった。


 尖った耳の青年は持っていた剣の刃を、フィトラグスの首に当て始めた。


「フィット?!」


 オプダットとティミレッジが立とうとすると、あとの二人がその前に立ちふさがった。

 剣を向けた青年は楽しそうな表情を浮かべていた。


「フィーヴェ代表国家の王子を殺せば、世界はどう思うかなぁ?」

「ダメだ! 人間との争いが始まったのは、大昔にディファートが人間の王子を殺したからだ! 同じことをしたら、なおさら両者の溝が深まる!」


 ティミレッジは体を起こせず、声だけを張り上げた。

 それでも敵は剣を降ろそうとしなかった。


「溝なんて今さら埋められねぇだろ。それもこれもみんな、てめぇら人間のせいじゃねぇかよ!!」



「やめて下さいっ!!」



 尖った耳の青年が怒鳴ると、同じ声量でユアが叫んだ。

 彼女は全員の注目を浴びながら、フィトラグスたちの近くまで来た。


「ユアちゃん、帰ってなかったの……?」

「早く帰れ! ここは危ないぞ!」


 ティミレッジとオプダットの制止も聞かず、ユアはおそるおそる、尖った耳の青年を見つめた。

 青年は凝視して来る彼女へ訝しげに睨みつけた。


「何だよ……?」

「あ、あなたたち……クルエグム、レジメルス、アジュシーラだよね?!」


 ユアが敵の三人へ大声で尋ねると、彼らは驚きで目を見開いた。


「な、何で、オイラたちの名前、知ってるの……?」

「その攻略本に書いてあるから!」


 オレンジ色の天然パーマの少年・アジュシーラが目を丸くすると、ユアは彼が持つ攻略本を指さした。

 久しぶりにイマスト(ファイブ)で新たに出会うキャラ相手に興奮し始めたのだ。緊迫していた空気も読まないで……。


「コーリャクボン……?」

「“攻略”は“敵陣を攻め落とす”って意味だよ。それが本になってるってどういうこと……?」


 アジュシーラが手の中の攻略本に疑問を持つと、黒マスクの青年・レジメルスが「攻略」について説明した。

 だが、彼らは「攻略本」が何なのかはわからなかった。


「あなたたち、イマスト(ファイブ)のボツキャラでしょ?」


 地面に伏せているティミレッジとオプダットが「ボツキャラ……?」と声をそろえて聞いた。


「“ボツキャラ”って言うのは、作られたけど本編には登場出来なかったキャラだよ。本来ならこの三人はイマスト(ファイブ)に出る予定だったけど、中止になったんだ。でも攻略本には一人ずつの情報も載ってるし、何ならゲームカードの中にもデータは残ってるんだよ。だから、よっぽどのイマスト(ファイブ)ファンにはとっくに知られてるんだよね。私ももう三人の名前を覚えたし、どれが誰なのかも見てすぐに……」



 ドォン!!



 ユアが興奮して早口で解説するが、言い終える前に彼女の横の地面が突然爆発を起こした。


「ゴチャゴチャうるせぇんだよ」


 尖った耳の青年・クルエグムが爆発が起きた方へ向かって手を伸ばしていた。魔法を使ったようだ。

 彼は静かに言った後、フィトラグスを乱暴に離すと、ユアの真ん前に瞬間移動した。


 驚いたユアは後ずさりをするが、クルエグムがすぐに距離を詰め、彼女の胸ぐらをつかんだ。


「ユア!!」

「ユアちゃん!」


 立ち上がろうとするティミレッジとオプダットを、アジュシーラが魔法を掛けて動きを封じた。

 フィトラグスも体を起こそうとするが、レジメルスに足で背中を押さえつけられてしまった。


 クルエグムはユアの胸ぐらをつかんだまま、彼女の後ろにあった木に押し付けた。


「俺らのこと知れてそんなに嬉しいか? 楽しいのか?! 一人騒がしくして耳障りだし迷惑なんだよ! 情報手に入れて弱点探って、しまいには傷つけようとか思ってんだろ?! どこの誰かは知らねぇが、てめぇから殺してやるよ!」


 ユアは興奮がすっかり冷め、目の前のボツキャラに怯え始めた。


 これまで空想の世界ではこのような悪役に近付くことはなかった。むしろ、その作品のキャラたちが率先して守ってくれていた。

 しかし今、仲間たちは動きを封じられ、自身が未だかつてないピンチに襲われていた。


 こんなことは初めてだ。

 ユアは今度こそ死を悟り、全身がガタガタと震え始めた。


「今さら命乞いしたって無駄だ。俺を怒らせたてめぇが悪いんだからよ!」


 クルエグムはユアを掴む力を強めると、空いている方の手から青紫色の球体を出した。


「やめろぉーーーーー!!」


 フィトラグスの叫びが野原に響き渡った。



 その時、フィトラグスを押さえていたレジメルスと、ティミレッジとオプダットに魔法を掛けていたアジュシーラが急に倒れてしまった。


「どうした?!」


 突然の事態にクルエグムはユアを掴んだまま振り返った。

 すると、出していた魔法の球体が勝手に弾けてしまった。

 それに気を取られていると、今度は彼に紫色の光が直撃した。


「ぐはっ……!」


 クルエグムがその場で膝をつくと、ユアはようやく自由になれた。


 彼女だけでなく、フィトラグスらが安堵の表情を浮かべた。何故なら……。


「久方ぶりだな」


 紫色の長い髪に黒いマントを夜風になびかせながら、ディンフルが姿を現したからだ。

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― 新着の感想 ―
やっぱり最後に頼りになるのはディン様! 敵はDLC追加コンテンツかイマスト5外伝でも開発スタートしたのかな? と思ってたけど没キャラかあ
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