94話 オカマ店長の試練? 2
◇◇◇
[佐波マリン視点]
咲人ちゃんは相変わらず私が考えていることを読んで行動してくれるわね。まぁ私が分かりやすくしているのもあるんでしょうけどね。彼がお手洗いに行っている間にこの子に色々と聞かないといけないんだけど、従業員が足止めする時間を含めて約5分って考えて動いた方がいいわね。
第一印象は大人しい子だけど、今もそれは変わらないわ。会って数分だけだからでしょうけどもね。この子があの守友家の当主様や夜夢ちゃんに認められているのはびっくりだわ。見た目はまぁ可愛いけども中の中くらいで、そこまで人気はないでしょうね。少し試してあげましょう。
「雪菜ちゃん、諦めた方がいいわよ」
「嫌です。私はサキくんのことを諦めません」
「桜木雪菜、お前じゃ無理だ」
「それでも嫌です。私はサキくんのことを愛していますから」
この子、頑固なのね。まぁそれも予想通りだからなんとも思わないわよ。見た目が大人しそうでも頑固者なんていくらでもいたのよ。でも咲人ちゃんを愛しているって言ったのはご両親以外では貴女だけなのよね。私は夜夢にも同じことをしてけど、好きしか言ってなかったわ。
まぁその好きは狂気的なものだったけどもね。私的には夜夢ちゃんの方が彼を守れるって思っているから貴女では釣り合わないのよ。容姿、文武、権力において私個人の意見では夜夢ちゃんが圧倒的に上にいるのよ。昔から知り合いだったとしても勝ってこないわ。だから貴女は不合格ね。
「姐さんの言う通りに私は釣り合っていません」
「なら諦めるべきね」
「普通ならそうすべきだと思います」
何を言いたいのよ。私にはこの子が何を言いたいのかが分からないんだけど? 私は彼のためを思うなら引くべきだと思っているって言うことを直接言わないと分からないのかしら。貴女がどう思っていようと彼は夜夢ちゃんと結ばれるべきなのよ。
貴女は私の試練に不合格って認定されたのだからこれで終わりにして次に進まないと一生彼の影を追い続けることになるのに何故なのよ。何諦めないで進もうと思っているのよ。私に言われた者たちは諦めたのよ。
「本気で私はサキくんに……藤咲咲人くんを好きでいるんです」
「っ~だから何よ。私の選別には狂いがないのよ」
「そうかもしれないですが、そんなモノで諦められるような人を愛していません」
「・・・そうかもしれないけどね。貴女には勝ち目なんてないのよ」
「あります。キ」
「木?」
「キスいましたから」
そうなのね。キスをしたってなに? 彼にキスを出来たってどうやってしたわけ? 夜夢ちゃんでも出来なかったことをしたって、脈アリじゃないの!? もしかしてあの時、咲人ちゃんが顔を赤くしていた理由の子が雪菜ちゃんだったりするの?
だとしたら咲人ちゃんの瞳に光を灯してくれているのはこの子のおかげってことになるわね。あら、年は取りたくないわね。涙腺が脆くなってしまっていけないわね。ご両親の前だけしか光が灯ってなかった瞳に常に……ね。
「雪菜ちゃん、ありが、とうね」
「ど、ど、どうしたんですか」
「貴女が光をくれたのね」
「分からないですが、ハンカチをどうぞ」
「ありがとう。それとごめんなさいね」
「いえいえ、サキくんのことを思ってくれてるんですから」
彼女は「謝らないでください」とニッコリとした笑顔をそう言ってくれた。だから私は二人のことを応援すると決めたことを伝えた。これは私のケジメとして受け取ってほしいと雪菜ちゃんに言ったが困っていた。まぁ仕方ないとは思うけど、鞍替えよ。
◇◇◇
一体何があったんだよ。店員さんたちに引き留められ続けて30分は経っているんだが? 全くこれで雪菜さんに何かあったらただじゃおかねぇぞ。まぁ酷いことはされていないだろうとは思うけど、心配にはなるんだよな。
「遅くなりま……した?」
「あらもう少しゆっくりでよかったわよ」
「なんですか? 仲良くなりすぎでは?」
僕が戻って来たらものすごく仲良くなっていたのでびっくりだった。おそらくは合格したから距離が近くなったんだろうけど、近すぎじゃないか? 僕的にはもう少し離れていてほしいってのが希望なのだが、付き合ってないからそこまで言う権利はない。
はぁ、佐藤なら簡単に言ってのけるんだろうけど僕はあいにく分かっているタイプなので言わない。彼氏面なんてされるのは嫌な人だっているわけだし、そんなことをしたら気持ち悪いと思うだけだし嫌われたくはないからな。
「咲人ちゃん、何か用があったんじゃないの?」
「そういえば今度ここのキッチンを借りれませんか?」
「どうして」
「実はですね」
説明を一からした。店長殿は爆笑して転げまわっている。そこまで笑うことなのかねぇ。ついでにこれまであったことも言ったからなのかもしれないけど、笑いすぎだと思う。僕は何も悪いことはしていないしこれからもいい子でいるつもりだ。
「サキくん、私が聞いたことないこともあったんだけど」
「話していないからね」
「隣に座ってくれる?」
「無理でしょ。店長殿がいるわけだし」
「姐さん?」
「すぐに退きます。あと、仕事に戻るわね」
店長殿に逃げられてしまった。このパターンは僕は知っているぞぉ。雪菜さんに怒られるんだよね? もう怒られたことでまた怒られるのは嫌だな。僕よりも怒らないといけない人が大勢いると思うんだけども気のせいかな?
「・・・ん」
「太ももを叩いてどうしたの」
「あっぁ頭を……の、のせて」
それはダメだろうと思い拒否するが腕を引っ張られて頭を太ももにのせることになった。大人しく近くまで行ったのが失敗だったな。ご両親に何と言ったらいいのやら。娘さんの太ももに頭をのせましたって正直に言えば許されるのか?
「サキくんは凄く頑張っているんだよ」
「頭は撫でないでくださいよ」
はぁ膝枕されると頭を撫でられるって訳っているから嫌だったんだよ。手を動かして抵抗していたら手錠を掛けられた。しかも僕の両手と雪菜さんの左手が繋がった。動けないじゃないかよ。
「褒められることばかりじゃないかもだけど、私からご褒美……ね」
「一体何をくれるこ___」
唇に柔らかい感触があるし、雪菜さんの顔が近すぎるのは何故? 僕は確かに頑張ったがご褒美がキスってほどは頑張っていない。というか2回目じゃないのか!? 待ってくれよ。今回は事故じゃなくて雪菜さんからか。
「ぷはっ! サキくん、2回目だね」
いい笑顔をしていますね。責任取るしかねぇわコレ。




