90話 バケモノ1
新聞部に偽情報を匿名で送り数日が経った。まぁ土日を挟んだからそこまで広がってないとは思うが……何故か視線が刺さっているのだが? 皆さんの嫌いな月曜日だからって可能性もあるけどこれは僕を見ているよな。夜夢のことではなく竜樹のことを流したのがまずったかな。まぁ佐藤の近くにいる女が尻尾を見せてくれたらいいか。
「咲人、話がある」
「えぇ~オレはこれから教室に向かわないといけないから無理」
「逃げれるとでも?」
生徒会のメンバーに囲まれたか。悪いような情報は流していないから包囲される筋合いはないんだよな。僕のことを包囲するってことはアレがやましいって認めているようなもんだぞ。まぁ別に僕は気にしないからいいんだけどね。
「脚が折れているだ。大人しくついて来い」
「断る。目立ちたくないんでね」
「またソレか。もう諦めろ」
それが嫌って分からないものかね。分かってもらわなくても構わないんだけども僕にできるだけ関わってほしくはないよねぇ。そんなことを考えるのは今は止そう。こいつら生徒会から逃げることを考えなくてはいけないからな。
おそらくは僕を捕まえれると思っているように見えるが、大きな間違いだね。例え足が折れていようとも逃げれる方法なんていくらでもあるんだよ。さてと……どこから逃げるべきかな?まさか円になってジリジリと迫ってくるのは予想してなかったよ。
「お前への対策はしっかりとしているんだよ」
「確かにこれなら逃げれないとでも思う?」
「全員一斉に押さえろ」
竜樹以外が一斉に僕へと向かってくるのはいいけど、訓練されていない連中でしょ? そんな奴らが僕を押さえれると思っているなら滑稽だよ。僕はこっちに来る生徒会メンバーに怪我をさせないように転がしたり腕を掴み他の奴にぶつけたりした。
そうすると簡単に制圧できた。訓練はしていないとは言っても護身術とかは習えるからこのくらいなら問題ないでしょ。それにあのゴリ先輩の下にいた連中だしね。立ち上がって来ないから少し不安ではあるけど大丈夫。
「・・・竜樹弱くない?」
「お前が強すぎるだけだ。そんなことよりコレは知っているな?」
「もちろんだ。もう数日は経ってないか?」
「あぁ今更ながら知ったよ」
「それで?」
「俺側につくのか」
はて、そんな記事にするようにしていたかな? 改ざんされた可能性があるな。僕が送ったのは竜樹と婚約者についてのほっこりエピソードを輪花に教えてもらって送った筈だ。それを改ざんできるとしたら僕の行動を近くで見張れる奴くらいなものだ。ただ気づかれずには無理だろう。
中身を入れ替えは出来ない筈だし封筒自体をすり替えるのもほぼ不可能に近い。そうなると……あの女しかいないだろ。またユウの近くにいる奴を詰めないといけないのか。中学の時にもあったことをまたしないといけないとなると少しこたえるな。
「咲人、どうなんだ?」
「半々だ」
「待て、まだ話はおわ___ぐはっ」
竜樹を思いっきり叩きつけてから教室へと向かった。はぁ僕は平穏な生活したいだけなんだからさ、何にも巻き込んでほしくないよ。ただ僕に降りかかってくる火種を叩き落としているだけだからやめたいよ。まぁ敵対する奴は全員つぶすからいっか。
―???視点―
今日も学校が終わり帰路につきながら考えます。流石に飽きてきましたねぇ。彼は確かに優しいですが私の好みではないのでここまでにしてほしいです。竜二様のご命令とはいえ、ここまでする必要はないと思いますが。竜二様はもしかして私が彼に惹かれるとでも思っているのでしょうか?
もしそうだとしたら外れですね。あくまで彼の近くから原たぬきと桜木雪菜、そしてあの男の動きを監視しているだけなのですから。あの男に一度感づかれたかと思ったときはヒヤリとしましたよ。メイド長にも気を付けるように言われましたが案外、簡単ですね。
あの時といい、今もあの男を過大評価し過ぎなのですよ。確かに私もあの時は一杯食わされましたが、今回は仕返しができました。これで竜二様やメイド長も評価を正すことでしょう。私は凄腕なのですからこんなのは朝飯前です。
「失礼、お嬢さん」
「誰ですか?」
「道を尋ねたくてね」
「・・・姿を見せないのはなぜです?」
「姿を見せたら逃げるじゃないか」
守友家の人間の可能性がありますが……特定なんてできるんですかね。私は今も変装している訳ですし分かるわけがないです。一番身近で私を怪しむ人なんて竜二様の実子くらいなものでしょう。ここは強気に出るべきかもしれませんね。
相手は一人だけみたいですし周辺を囲まれてもいないみたいですしね。気配をよむのは苦手ではありますが街の監視カメラをハッキングすればすぐに分かることですので、問題はありません。それに今日はメイド長も含めてあの男の対策を練る会ですので早くいかないと怒られます。
「逃げませんよ。ですから出てきてください」
「それなら安心だ」
「は?」
「オレとお話しようぜ」
私は反射的に逃げてしまいました。あの男は左足を骨折しているから逃げれると思ってしまったのです。竜二様やメイド長の評価が正しいものであれば私はここで潰されてしまうから逃げました。怪我している男に私の本気が負けるわけないと思いながら全力で逃げました。
そんな考えは甘かったとすぐに思い知りました。あの男は私の予想を簡単に覆してきました。本当にあの男は人間なのですか。
「逃げないって言ったじゃん」
「バケモノが…………」
「同じ人間だよ」
私はありえない速度を出した男に捕まってしまいました。この後どうなってしまうのでしょうか? 竜二様の発言を信じるとしたら人間に興味はないはずです。乱暴はされることはないってことですね。
「お前は竜二の所にいる奴だな? 変装していることはもうわかっているからな」
「えぇそうですが」
「あっさり認めるんだな」
「私にはこれがありますから」
「スタンガ___」
危なかったですね。押し倒されているだけでよかったです。さて集会所まで急ぎましょう。この男は放置でいいでしょう。人通りがない場所ですから発見には時間がかかるかもしれませんがね。




