魔王家の動乱ー7 ビーン姉妹、動乱邂逅ー2
こんにちは、終焉の焔です。
久しぶりの更新です。
最近は『異世界転生したので厨二力とチーレムで戦乱の異世界を生き残る』の執筆が忙しかったので……
こちらは後回しになってしまっていました。
気になる方は是非是非そちらのほうも見ていただけたら嬉しく思います。
ハリーファはスルターンの言葉にただ呆然と立ち竦んでいた。
まさか、お姉様がリターナス様に着いた?
そんな事が……だが、自分のようにスルターンを抑える為に召還されただけかもしれない。
そうだ、そうに決まっている。まさかーーリターナス様の御考えを利用しようなどとは考えていないはずだ。そうだ、何を考える事があったのだ。そうに決まっているじゃないか。
信じ難い自体にハリーファはただ逡巡しかできなかった。
そして、事象を自分にとって都合のいい方へと考える事しかできない。
その事を俯瞰的に見ている自分を知っているというのに、その事を黙認する。
人間はーー魔族もーー絶対的絶望にはそのような術しか持たないのだ。
もし、ノーグルーサ様の勅令があるのならば、ハリーファは動かなければならない。
例え、それが姉を殺すような事でもーーノーグルーサの命は絶対なのだ。
何故ならノーグルーサの異能はーー
そのような絶望の柵に足を取られていたハリーファは後ろから迫る殺気に一歩反応が遅れてしまった。
「くっ!」
身を引いて避けようとするが何者かが振るった短剣の切っ先は頬に軽く傷をつける。
「淵獄煉焔」
威嚇用の炎の壁を張り体制を立て直す。
威嚇用(幻影)であるので攻撃力は皆無だ。だが、それを幻影と看破するものはこれまた皆無である。
消費魔力と魔力を練る時間を考えてもその場しのぎのこの術を使う他なかった。
が、それは仇となった。
焔の壁から黒いマントを羽織り目深にフードを被ったその何者かが飛び出してきたのだ。
ハリーファは咄嗟に杖を取り出しマントを羽織った刺客が振り上げた短刀と鍔迫り合う。
だが、純粋な魔導師であったハリーファに打ち勝つ膂力はなく押されるいっぽうであった。
腕がジンジンと痺れる。力を抜けば楽になれるのだろうか。
そう一瞬悪魔の囁きが聞こえたがハリーファは首を振ると、最後の力を振り絞る。
だが、それでも魔導師対刺客。
近接戦ではどちらが勝つかなど目に見えている。
ハリーファの抵抗虚しく杖を弾きとばされ刺客はそのまま短刀を振り上げた。
その時ーー
「戟牙憐舞」
廊下に凛々しい声が響き渡り、刹那、刺客に背後から大量の戟が矢の如く襲いかかる。
刺客は咄嗟に身を翻し、多数の戟を一度にいなしていくが咄嗟であった為か、体勢は悪く、戟の一本がハリーファと同じ様に頬に傷を作った。
その勢いでフードが捲れ、刺客の姿を露わになる。
その瞬間、ハリーファは息が止まりそうであった。
思考が停止し頭が真っ白になる。そして、思考が再び動き出すと酷い絶望に打ちひしがれる。
「なん……………で…………な……ん……………で……」
ハリーファから漏れる様に呟かれるその声はもはや言葉にはならなかった。
心を締め付けらるといった生半んかなそのではない。
捻り潰され、凌辱され、侮辱され、虚仮にされ、嘲笑され、まるで運命に笑われているかの様な果てしなく続く絶望。死んだほうがはるかにましと思える程のーー
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……ぁ…ぁ……」
城に響き渡る絶叫。声を枯らす程に叫ばれた悲壮。
だが、それは虚しく響くだけで何も生まない。
ハリーファはそのまま立っていることも出来なくなりその場に力なく膝をついた。
紅いのカーペットが更に赤く染まる。
それは涙であった。
少女が流す様な涙ではなくただ絶望に支配された者の涙ーー血の涙だった。
その様子を見る野次馬の様にひょっこりと出てきた月の明かりに照らされながら銀髪エルフの刺客の少女はーーザイード・ビーンは無表情にハリーファをまるで塵を見る様な目で見下していた。




