魔王家の動乱ー6 ビーン姉妹、動乱邂逅ー1
ノーグルーサの指示を受けたハリーファは一旦自室に戻り服を着替えると真夜中の城内を散策していた。
任務は監視といわれているがスルターンの情報は何もない。
さきほど、城外の哨戒兵に聞いた噂ではこのような月明かりのない晩に魔薬調合室に姿をあらわすと言うのだが。だが、その情報を鵜呑みにして危険を被るわけにもいかない。
スルターンなら自分たちが動く事ぐらいは分かっているだろう。
そして、幾らか罠も仕掛けてあるだろう。どれが罠かもわからない状況でそんな都合よく転がってきた情報においそれと飛びつくわけにはいかない。まずは何か手がかりを探さなければ。
そう思い歩いていた時、背後に嫌な気配を感じた。
「おや、こんな夜分遅くにどうされましたかね?魔王三賢者が一人、神羅万象の超越 ハリーファ・ビーンさん。きひひひひ」
予想通りのその声にハリーファは振り向かずに皮肉っぽく返す。
「貴方こそ、姿を晒すなんて珍しいではありませんか牽強付会の玄人さん」
すると声の主ーースルターンは少し不満そうな口調で言った。
「その異名は愚禿は好きではないのですがね…まあ、いいです。貴方はノーグルーサ殿下の方につく事に決めたのですね、実に面白い。きひひひひ」
「なんの話でしょうか?インフェナ様が王座につく事になったというのに……ただ……もし仮にそうだとして、では貴方はどうされたのですか?」
「まずは様子見と言うところですかな。今動いて損をしてはもともこもないですからね、きひひひひ」
「そう、では私は忙しいからこれで」
そう足早に歩き出したハリーファ。
「あ、そうそう一つ言っておかなければいけない事がありました」
「まだなにか?」
足を止め冷たく返事をするハリーファに反してスルターンの声は不気味にそして不愉快な明るさを持っていた。
「貴方の姉ーー疾風迅雷の怒涛 ザイード・ビーンさんはリターナス殿下につく事にしたそうですよ」
「なんですって!?」
ハリーファが驚きで振り返るが、もうその時にはスルターンは影も形もなかった。
無機質な明かりがポツポツと照らしている延々と続く廊下に一人残されたハリーファはただ、スルターンの言葉を反芻する事しかできなかった。




