ユミルへの移住生活ー5 ユミルへの逃亡とミルシェア昏睡
久しぶりの投稿です。
いつの間にかブックマが100を超えていて…もう感激です。
ここまでこの小学生並みの拙い文章を読み進めて頂いて有難う御座います。
ではでは、本編をどうぞ
ユミル郊外。
将が先日転移アウトした場所に再び蒼白い光が灯った。
暗闇の中の光は幻想的とさえ感じさせられる。
そこから一人の子供を抱えた少年が現れる。
「ミルシェア、大丈夫か?」
子供を抱えた少年ー将は心配そうに抱きかかえられた少女ーミルシェアを覗き込む。
息が上がり、発汗もあり、顔色もひどい。
とても大丈夫そうではない。
クーペに盛られたーー正確には盛り返されたー毒はよほど強力だったのだろう。
まだそれ程の時間は経過していないはずなのに症状は狂気になりミルシェアを襲っていた。
「ええ……大丈夫…ですよ」
ミルシェアはそう応えるが、一目で大丈夫でないと解るほどだ。
「いま医者へ連れてってやるから…」
「…や…です」
荒い息で掻き消えた声は将には届かない。
「ごめん、ミルシェア、なんて?」
「いやです」
今度ははっきりとそう聞こえた。
その声は嫌に明瞭で聞き間違えとも思えない。
だが、そんな言葉で止まる将ではない。
「なにバカなこと言ってんだ‼︎ミルシェアは死ぬかもしれないんだぞ‼︎」
「それでもいいです……だから……」
「っく!」
将はもう何も反論せずに走り出した。
腕の中でもがくミルシェアを抑えながら。ただただ、ひた走りに。
転けそうになりそうにも、全力で。
体力もなく、もはや鉄の味が口の中に広がってくるがそれさえも糧にひた走る。
いよいよ街灯が左右に展開し、舗装された道が出現する。
雨雲は月を覆い隠し、月光を地上に届かせまいと阻んでいる。
しかしその代わりに街灯の無機質な光が無情として将とミルシェアを迎えた。
「はあ…はあ…ミルシェア……もう…少しだ……」
「………」
先程から抵抗し無くなっていたミルシェアは力なく項垂れておりもう何も答えなかった。
「くそ!」
将は最後の力を振り絞った。
夜の街をジョギング程度の速度で疾走する。
彼にとってはこれが全力であった。感動的なシーンのはずなのに滑稽である。
ユミルの都市部は活気に溢れ将の行く手を阻むように乱雑としていた。
「くっそ…どいてくれ!……邪魔だ‼︎」
その中を濁流に立ち向かうが如く気迫で突き進んでいく。
街行く人々を圧倒的な攻撃力の差で突き飛ばしていく。
しかし、ご安心ください。
肉弾攻撃は運動音痴LEVEL99によって無効化されているので村人にダメージはありません。
ようやく雑踏を抜けると将は走り出した。
先程の長距離走行と雑踏により体力がだいぶ削られているがそんな事に構っている暇はなかった。
将は何度か血を吐き出していた。
ひどく咳き込み、将の命にすら危機が迫っている程だがそんな事に構っている暇はなかった。
ミルシェアを助けたい。その想いだけが将の身体を突き動かしていた。
角を曲がり、手前から三つ目の扉を叩く。
その腕には扉を破壊しそうな程の力が籠っている。
暫くしても扉は開かない。
それどころかこの扉の奥に人の気配すら感じれない。
「クッソ!」
扉を破壊する程の力で扉を殴る。
だがそれは虚しく響くだけでそれに対する呼応は人々が何か何かと駆けつけるだけで何もなかった。
将は冷静さを取り戻すと衆目からの軽蔑を感じ扉から離れた。
何のあてもなくフラフラと覚束ない足取りで歩き出した。
悲嘆がただ彼を支配する。
ミルシェアを救えなかったという悲嘆が。
そして哀しみが再び彼を支配した。
また一人になったという哀しみが。
「きゃ!」
いつの間にか眼前に迫っていた一人の影は短い悲鳴とともに倒れた。
「ああ、すまない…」
将はそれだけをいって立ち去ろうとした。
「勇者…さ…ま?」
その影ーーリーフィアは将に上目遣いでそう呟いた。




