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ユミルへの移住生活ー4 ミルシェアの覚醒とユミルへの逃亡

ミルシェアが…

「ミルシェアちゃんは何故私に牙を向けるのかな?」


悠然と椅子に腰を下ろしたままクーペはこちらに警戒を向けているミルシェアに問う。


「それは…貴方が…私の希望を…将くんを狙っているから…」


ミルシェアはその問いに息を絶え絶えにさせながら答えた。

早いな…もう毒が回ったか。


「ほう、こんな可愛い子を虜にする『将くん』とやらに是非会ってみたい物だ…」

「お前なんかに!将くんを汚させない‼︎」


ミルシェアは殆ど狂気の叫びをあげる。

しかしそれとは対象的にクーペは爽やかな笑顔を浮かべた。


「そんなに怒っては可愛い顔が台無しだよ」

「黙れ‼︎…かはっ」


ミルシェアの綺麗な口から紅い純血が吐き出される。


どうやらもうそろそろミルシェアちゃんも終わりか。


クーペがそう思い奥の部屋に向かおうと椅子から立ち上がる。


「ミルシェアちゃんは是非僕の奥方になって欲しかったんだがね…敵ならば致し方ない…さようなら。もう会う事はないだろう」


クーペは冷酷な目で昔懐かしむような口調でミルシェアに語りかける。


「ではね。ミルシェアちゃん」

「ええ、永遠に会う事はないでしょうね…貴方にはこの世界から退場してもらうから‼︎」


ミルシェアは立つのもやっとのような立ち姿で怒涛の気迫の叫びをあげる。


「まだ、そんな事を言っているのかい?往生際が悪いのは美しさにかけるよ」


クーペはそうミルシェアを宥める。

それがクーペの優しさだ。だが、それは戦場では死を招く。


「……武装(リュストゥング)‼︎集え、英雄の力よ‼︎」

「これは⁉︎」


ミルシェアから放たれる蒼白い閃光はクーペにある記憶を思い出させた。

本で読んだ事がある。最上位魔法の一つ‼︎

いや、だがただの最上位魔法ではない…これは…まさかー


「ミルシェアちゃんがね…初代勇者の純血を守り抜いた一族の末裔だとは…そしてこれはその一族だけが使用できるという秘術…武装(リュストゥング)か…英雄の装備を強制的に自らに装備するこの技…果たしてどこまで使いこなせるか…お手並み拝見といこうか」


クーペは自らの懐から杖を取り出した。

龍仙の杖。野生の魔物の内最強と言われるドラコーンの素材をふんだんに使用したこの杖ならばあの勇者の装備に匹敵するはずだ。だが、ミルシェアの魔法能力がまだ未知数のため勝敗はなんとも言えない。


ミルシェアも何か逡巡しているのか子供とは思えない神妙な表情を浮かべ、こちらを見据えている。

その手にはそれぞれ紅と蒼の双玉がはめ込まれた一対の双剣が握られており機動性は侮れないだろう。

そしてアーマーは機動性を重視してか全身には装備されてはいないがこれも初代勇者の装備、高い防御力を発揮するだろう。


相手に不足はない。いざ、尋常に勝負‼︎


眷属召喚(フォーアラードゥング)!」


クーペはホワイティシモナイトを召喚した。

ホワイティシモナイトはクーペが所持する眷属の中で一番機動性に優れている。

野生の魔物、例えばさっき話に出たドラコーンですらもまともに攻撃を当てる事も出来ないほどだ。

だが、火力が他の眷属より見劣りするのは否めない。


様子見として先ずは手数を増やす。

一対一のタイマンなら手数を増やす事が勝敗を分けると言っても過言ではない。

ここは眷属と一気に畳み掛ける!


眷属封印(ズィーゲル)


だが、ミルシェアがそう唱えるとホワイティシモナイトは消滅した。


「何⁉︎…くっ…だが…特位魔法をそれほど容易く使うのはいかがなものかと」

機動力強化(インテビジアング・シュネリッヒカイト)力強化(インテビジアング)即死付与(プラス・インスタントトート)ダメージ無効(ナイン・スチャーデン)ガード無効(ナイン・シルト)


ミルシェアはクーペの忠告を無視し、上位の強化魔法と特位の補助魔法を次々と自分に施した。

普通、それほどの魔法を発動すれば最早、MP切れで倒れている。だが、ミルシェアのそれは減っているという印象すら見受けられない。

だが、今がチャンス‼︎


強化解除(ナイン・インテビジアング)‼︎」

対魔法解除魔法(アンチ・ナイン)

MP吸収(マジックポイント・アブソープション)‼︎」

MP吸収(マジックポイント・アブソープション)強」

視覚奪取(ブラインド)‼︎」

全回復(リカバリー)五感奪取(サイファー)

回復(ポーション)…っく!」


クーペはここである事が分かった。


目の前にいる少女は次元が違う。

この国で最強の魔導師である私とさえも段違いの強さだ。

魔法を発動したら阻止され、逆に発動したものより上位の魔法を発動される。一方的すぎる。


ここでクーペは初めて絶望を知った。

最上位魔法を発動したものは敵に回してはいけないと今頃気付いたのだ。

そしてこれが魔王側についたら…考えるだけで悍ましい。

早く、陛下にお伝えせねば…私は生きてからねばならない。

これはまだ隠しておきたかったが…仕方がない‼︎


魔法消滅区域(ディサピアランス・ゾーン)‼︎」


クーペが周りには隠していた一つだけ発動できる最上位魔法を使用すると走り出した。家から急いで出ると、魔法が効果を発揮できる空間まで急ぐ。

背後から追っ手が来る様子はないがなにより、恐怖が彼を突き動かしていた。


そしてようやく魔法無効化区域を抜けると即座に転移魔法で王城まで向かった。










強過ぎる…どう収拾をつけるか…

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