ユミルへの移住生活ー3 クーペの自宅訪問とロリコンの覚醒
クーペは天をかける思いで将達の愛の巣へと向かっていた。
聞き込みの結果、自分が探している最上位魔法発動者はこの村を救った心優しい少年だという事が判明し、すっかり警戒を解いている。そしてなにより最上位魔法という最も貴重な魔法の研究材料というのが魔導師としての血をたぎらせ、警戒という物を気に留める事を忘れさせているのだろう。
聞き込みを何時間したのか、日はもうすっかり傾き、斜陽はなんの遮断物がないこの村をクーペもろとも焼いている。その緋く輝いた世界の中に一つのこじんまりとした家が見えてきた。
「ここに私が探し求めた者が…」
息を一つも荒立てずにクーペはそう呟いた。
ここが運動音痴LEVEL99との違いである。
クーペは何の気兼ねなくつかつかと至って普通な玄関に近付いた。
だが、突如としてその行く手を阻むようにクーペの足元に碧い魔法陣が煌めく。
ー設置型魔法か⁉︎
クーペがそう気付いたと同時にその口元は小さく動いた。
「魔力消失」
ー刹那、クーペを行かせまいと輝いていた光は雲散霧消した。
自分の命に迫る危険を排除し終わるとクーペは小さく安堵のため息を吐いた。
「危ないなぁ…まあ、野生の魔物対策の物だろう。結構魔力弱かったし…」
そう自分で納得するとさっさと扉をノックした。
暫しの沈黙の後、遠慮気味に扉が開かれる。
「…あ…あの…何か?…」
そのか細い声を発した少女は少しだけ開かれた扉から可愛らしく顔だけを覗かせていた。
そしてそのあどけない顔立ちはクーペにある大きな想いを抱かせた。
ーそれは。
「か…」
「…か?」
「かかかかか…可愛すぎる‼︎」
「何ですかです⁉︎」
クーペはその少女ーミルシェアに抱きつく勢いで近付いた。
完全に危ない人である。
「君…名前は?」
「ミ…ミルシェアです…」
ミルシェアは引いているのか怯えているのか一歩退り扉を閉めようとしている。
だが、クーペはそうはさせまいと渾身の力を扉かけている手に注ぐ。
「力強化。…そうかミルシェアちゃんかいい名前だね」
筋力強化魔法まで発動し圧倒的な力量差で大人気なく扉を開け放ったクーペはよくある口説き文句の切り口でミルシェアに迫った。そろそろ危ない人度がカンストしそうだ。
「私の名前はクーペ・ファウンド・ヴァイス。ヴァイス家の現当主だよ」
「ヴァイス家⁉︎」
「おや、こんな可愛いお嬢さんに存じてもらっているとは…光栄の極み」
ミルシェアの驚きにクーペは爽やかな微笑みを浮かべ恭しく一礼した。
「…そんなお役人さんが何のようですかです?」
「ここに、この村を救った『勇者』さんがいると聞いてね…お目通り願えないかな?」
ミルシェアが切り出しにくそうに言うとクーペは微笑みを崩すことなく答える。
ーその刹那、この世の物とは思えない殺気がクーペを貫いた。
だが、それは嘘のように消え失せると一転して笑顔になる。
「今は、いらっしゃらないので、リビングでお待ちになりますです?」
「ああ、そうしようかな」
ミルシェアとクーペはそう受け答えするとミルシェアはクーペを家に招き入れた。
そのまま、リビングに移動するとクーペはドッサリと椅子に腰を下ろす。
「お茶、用意しますねです」
「ああ、お願いしようかな」
ミルシェアがキッチンへと向かうのを見届けるとクーペは笑顔を崩し精神を研ぎ澄ました。
「詮索」
ミルシェアの他に奥の部屋に人型が一人。
それにこいつはとんでもない魔力だな…
「なんだ…いるじゃないか…」
ということは…
クーペは少しの間、冷徹な表情のまま逡巡した。
「お茶が入りましたです」
「ああ、ありがとう」
クーペは爽やかな笑顔を浮かべてそう礼を述べる。
「いえ、これぐらいは」
そうミルシェアがクーペの手前にティーカップを置く。
クーペはそれを手に取るとまず匂いを味わった。
「いい香りだね」
そう言ってクーペは一口飲む。それを見るとミルシェアも一口味わった。
そしてこれまでクーペに向けてきた笑顔の中で最高の物を見せた。
だが、その目は笑っていない。
「いえ、人の終末には安っぽい物だと思いますですよ」
「そうだね…こんな可愛い子の最期にこれほど安いのは失礼だよ…」
「っ⁉︎」
クーペの淡々とした語りにミルシェアは目を見開いて驚いた。




