第四話 存在の余白
『第二陣営に少女はいますか?』
表示された質問を見て、第二陣営の代表者は眉をひそめた。
「……何を聞いてるんだ?」
第一ゲームで脱落した少女のことは、全員が知っている。
第二陣営にいるはずがない。
そんなことを確認するために、わざわざ質問の機会を使うとは思えなかった。
「回答期限、残り二十秒」
機械音声が告げる。
代表者は考えるのをやめ、回答欄に向き直った。
「いいえ。第二陣営に少女はいません」
『回答を受理しました』
表示が切り替わる。
『回答を第一陣営代表者へ送信しました』
それきり、何も起こらなかった。
*
数分後、二つの扉が開いた。
第一陣営の代表者である白いシャツの男が、先に戻ってくる。
「こちらは協力を選ぶ」
続いて、第二陣営の代表者も部屋に戻った。
「俺たちも協力だ」
二人の選択が表示される。
『第一陣営――協力』
『第二陣営――協力』
『最終判定まで、三分』
「これで全員助かるんだよな?」
若い男が尋ねた。
「ルールどおりならな」
眼鏡の女性 ー PLAYER 10 ー が答える。
黒い服の男 ー PLAYER 11 ー は、二つの表示を交互に見ていた。
「質問の答えは、もう伝わったのか?」
彼が第二陣営の代表者に尋ねる。
「ああ。回答を送信したと表示された」
「質問した理由は聞いていないのか?」
「聞ける雰囲気じゃなかった。時間も短かったしな」
黒い服の男は、それ以上尋ねなかった。
俺は壁の表示に目を戻した。
質問の内容は奇妙だった。
少女が脱落したことは、第一陣営も知っているはずだ。
それでも、わざわざ確認した。
ただの確認だったのか。
それとも、回答そのものに意味があったのか。
今ある情報だけでは判断できない。
「あと二分です」
機械音声が告げる。
誰も話さなくなった。
*
残り十秒。
数字が一つずつ減っていく。
やがて、最後の数字が消えた。
『第二ゲーム――終了』
『両陣営の選択を確認』
『協力』
『脱落者――なし』
参加者たちの間に、安堵が広がった。
誰も脱落しなかった。
少なくとも、今回の結果はそれだけだった。
「行こう」
黒い服の男が、次の扉へ歩き出す。
ほかの参加者たちも続いた。
俺は最後に、壁を振り返った。
少女についての質問は、もう表示されていなかった。
回答も、記録も、残っていない。
俺は視線を戻し、みんなの後を追った。




