強面刑事と一番隊組長(2)
「遺体は死後十年以上経っているようですね。骨の状態から、男性で高齢者だとみられています。建物中央あたりに相当深く埋まっていたみたいですよ。だから匂いとかが漏れなくて、ご近所に気づかれなかったのかな?」
私が現在分かっている情報を伝えると、先生は爪のかすをふっと吹き飛ばして、思案げに動きを止めた。
「満島くんが犯人だったら、子供の頃の犯行になるわね」
「確かに」
満島は、私より一つ年上の二十八歳である。少なくとも、当時の法律では未成年の頃の犯行になるだろう。先生の言うように、彼が犯人だったらの話だが。
「子供ね。子供……」
唄うように呟く先生に、私は昨日八雲から聞いた話を、なるべく細かく伝えた。あの家には、八雲の祖母が住んでいたこと。そのお祖母さんは十五年前に亡くなっていること。お婆さんが住んでいたはずなのに、お爺さんの遺体が発見されてびっくりしたこともついでに話した。先生は私に向き直り、にやりと口元を歪める。
「雅ちゃんも随分神経が太くなったものね。一芝居打つなんて」
「先生に影響されたんですよ。いつもさらりと、平気で嘘をつくじゃないですか。真似したら案外上手くいきました」
「人聞きの悪いことを言わないでちょうだい。私のは方便よ」
それって嘘の一種じゃないのか? 私の飲み込んだ反論に気づかない先生は、ヒールのつま先で、床をコツコツと叩いた。つま先か指先でどこかを叩くのは、考え事をしているときの先生の癖だ。
「八雲さんのお祖母さんが、事件に関係していると思いますか?」
「五十代まで現役の、肉食系の魔性の女ね。絡んできたら面白いけど、そこに子供の満島くんを登場させるとなると、相当支離滅裂な話になるわね」
「確かに。死んだ男性が誰かも分からないですしね」
「情報が少ないのよ。まあそこまで聞き出した、雅ちゃんの飽くなき好奇心は見上げたものだけど」
その時、会話を遮るように電話が鳴った。半コールくらいの素早さで受話器を上げると、裁判所からの準備書面の催促の電話だった。がっかりしながら用件を伝えると、先生は渋々仕事に取りかかる。私も仕方なく、自席に着いた。が、ソワソワしてしまい仕事に身が入らない。
そのまま妙に上の空な空気が流れ、満島から電話が入ったのは、それから二時間半も経った十一時過ぎだった。「待ってました」と言わなかった私を褒めて欲しい。
午後一番で警察が訪ねて来るので、すぐに来て欲しいとのことだった。今日もすがすがしいほど先生の予定はがら空きだったので、アイコンタクトで先生の了承を取り、私はすぐに快諾した。




